衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第13章 トレイダー

第01話 帰還

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「帰って来てくれた……」

 ユーの下へ衛星に送ってもらったら、ユーが俺を見た途端、蹲って泣いてしまった。
 前回と同じく、また俺がいなくなると思ってたようだ。
 ゆっくりとユーに近寄り、慰めようとしたら、横からノワールが号泣して圧し掛かってきた。

 うぉい! それはアカンやつやん! 大ダメージを食らっちゃうって!

 電車に挽かれるが如く、猛ダッシュのノワールに弾かれると思った瞬間、ノワールの勢いに負けて仰向けに倒れた。
 ビビッて仰け反って倒れたお蔭で俺の命は救われた。ちょうどノワールの下に潜り込んだ形になってノワールの直撃から免れたのだ。
 それでもノワールの下にいる事には変わりない。そのままその巨体に圧し掛かられればもたない。他の天馬達より小振りなノワールだが、それでも一般の馬より倍近く大きいのだから。

「衛星ー!」

『Sir, yes, sir』

 衛星がノワールを浮かせ、俺から離してくれた。

「うおっ!? 衛星? だよな?」

 今まで野球のボールぐらいのサイズだった衛星達が、バスケットボールぐらいのサイズまで大きくなっている。
 たしか、トレーズ様のところへ転送される時に、衛星が大きくなったような気がしたけど、本当に大きくなっていたようだ。
 で、タマちゃんはというと、バランスボール(大)ぐらいまで大きくなっていた。

 これって、邪魔すぎない?
 衛星達って、壁を通り抜けたりは出来ないんだよ。誰にも見えないってだけで、そこに存在するんだよ。
 だからドアか窓が開いていないと部屋にも入れないし、こんなデカいのが部屋にいるだけで身動きできなくなっちゃうって。

 重要案件だけど、今はユーだ。未だに蹲って泣いてるユーを放っておけるはずがない。衛星の巨大化の件は後回しだ。
 立ってゆっくりユーの下に向かう。衛星に浮かされ傍で呆けていたノワールの鼻先を優しく撫でると、ノワールの目からもブワっと涙が溢れ出た。

「ユー? 約束通り帰って来たよ」
「……うん」
「これからは大手を振って【星の家】にも戻れるようになったみたいなんだ」
「……うん」
「ユー」
「……うん」
「【星の家】に戻ったら結婚式をあげよう」
「……」

 俯いていたユーがゆっくり顔を上げる。その瞳からは大粒の涙が止め処なく流れていた。
 震える唇で俺の名を呟いた。

「エイジ……」
「うん」
「エイジ……」
「うん」
「もう、何処にも行かない?」
「うん、行かないよ。だから結婚式をあげよう」
「! ……うん!」

 ユーは勢い良く立って、そのまま俺にダイブして来た。当然、俺は笑顔でユーを受け止めてあげる。今の俺のレベルは152。一度上がったっきり上がってないけど、凄い勢いでダイブして来る女の子を受け止めるだけのステータスはある。

 バキボキバキゴキバキグキ

 だが、勇者の抱擁には耐えられなかったようだ。

「……ユー、ちょっと……」
「……グスン…嬉しい」

 ……後で回復ポーションを飲めばいいか。今はこの痛みも嬉しいよ。もう少しこのままでいてあげよう。
 でも、今までもそうだったけど、衛星ってユーの攻撃? には反応しないのな。バージョンアップして大きくなったみたいだけど、そこは変わらないのね。

 一時間ほど抱擁が続き、解放されたらすぐにHP回復ポーションを飲んだ。結構ギリギリだったよ。HP100を切るまではステータス確認してたけど、それ以上は怖くて見れなかった。ゼロになるまでに解放されてよかったよ。

 それからはトレーズ様とのやりとりを説明し、二つの地域を行き来できるようになった事や、あまり手出しできない事、その内別の大陸に行く事などを説明した。
 別の大陸に行く説明の時には「嘘つき!」と言って拗ねられたが、今の内に別の大陸に行ける様にしておけば、後からユーも来れるようになるんじゃない? って言ったら、物凄くやる気を漲らせていたよ。
 もう船はあるしね、見た目は幽霊船だけど超高性能なやつが。
 あの船の操縦に関してはユーの念動で動いてたわけだし、念動ができなくても普通に動力積んでたしね。帆船風なのにね。
 最悪の場合でも人魚さん達に協力してもらえれば何とかなりそうだし、船での移動は問題ないと思う。

「まず試したい事があるんだけど、いいかな?」
「なに?」
「ノワールで山越えが出来るか試したいんだ。もう許可が降りたから出来るようになってるはずなんだけど。あと、水路も行き来できるようにしてくれるって言ってたから、それも後で確認したいな」
「うん、それいいと思う! 私も【星の家】に帰りたい!」

 【星の家】というより、隣に建ってる俺の家なんだろうけどね。でも、【星の家】の人達にも会いたいし、まずは山越えが出来るか確認したい。

『我が主よ。山とはレッテ山の事でしょうか』
「うん、そうだよ」
『我も今まで挑戦して来ましたが、一度として越える事は叶いませんでした。仕方なくトンネルを抜けてこちらまで来たのですが、山越えが出来るようになったというのですか?』
「うん、そう言われたんだけどね。実際、試すのは初めてだから分からないよ。でも、ダメならまたトンネルでもいいんじゃない?」
『御意、我は主とならば何処までもお供します。行き方にも拘りません』

 いつも以上に暑苦しい感じだな。でも、俺のどこがいいんだろうね。確か、衛星に天馬達の世話してねって言った事はあったけど、それぐらいからだよね。でも、世話って言っても餌ぐらいだよね……餌か! 餌が美味かったのか!? この暑苦しい感じの天馬に『餌が良かったから従順なのか?』とは聞けないよ。そこまで根性座ってないから。

「う、うん、ありがとう。今からでもノワールのスピードなら陽が暮れるまでに【星の家】まで行けるでしょ?」
『容易い事です。まだ陽が高い間に着いてみせましょう』

 別にそこまで急いでないけど、早い分にはいいか。でも、低く飛んでくれよ?

 そこからは速かった。一度、王都まで往復してもらった事があるけど、あの時より速いと思った。

「ちゃんと行けたね」
「そうだね、山越えできちゃったな。これからは向こうとも簡単に行き来できるようになるから、こっちと向こうの交流も増えて、色んなものが栄えて行くんだろうな」
「ほとんどエイジ絡みの案件だけどね」
「そんな事……いや、そうかもしれない」

 まずは【星の家】の院長先生に帰宅の報告をして、子供達とも軽く挨拶をし、久し振りの我が家に帰った。

「うわー! 久し振りだー! やっぱり我が家はいいなー!」
「久し振りって、この前帰って来てたじゃない! 私のいない間にー」

 モックンがトンネルを広げてくれたお蔭で、一度帰って来れたけど、あの時はすぐに戻ったしゆっくり我が家で寛ぐ気分でもなかったもんね。
 トレーズ様に見つからないかドキドキしてたもん。
 結局バレてたみたいだけど、ご褒美代わりに見逃してくれたから結果オーライだったんだけどね。
 ま、今は久し振りの我が家を堪能しよう! 少し拗ねてるユーを放置して宣言した。

「思いっきり張り切ってだらけるぞー!」
「張り切るの? ダラけるの?」

 ユーが一見まともな質問をしてくるけど、精一杯ダラけるという意味なのだ。答えはダラける一択だ。
 ズサーっと広い部屋の真ん中にヘッドスライディングを決め、そのまま仰向けになる。
 大の字になって手足を伸ばすと、呆れ顔のユーが顔を覗き込んで来る。

「それが思い切りダラける図? 私も混ざっていい?」
「おお! いいとも!」

 ユーが俺の左腕を枕にするように寄り添って来る。
 いつもならここからラブモードに突入するのだが、今はダラけると決めたのだ。まずは一寝入りして、それから大浴場に入って、飯を食って、また寝るのだ。そう、ダラけるのだ!


「エイジ…エイジ……エイジ! もう起きなよ!」
「ん……?」
「寝すぎ!」

 ユーに起こされると、部屋は真っ暗になっていた。
 部屋自体に明かりはある。衛星作の構造の分からない天井全体が光る灯りだ。有機EL? って感じの灯りなんだけど、声がスイッチになって光る仕組みになっている。
 という事は、ユーも寝てたんじゃないの?

「私は久し振りだったから、冒険者志望の子供達に稽古をつけてたの! ダラけ屋さんのエイジとは違うの!」

 ダラけ屋さんって……あ、俺が言ったっけ。
 でも、ちょっと寝すぎたかな。でも、なんで電気つけないの?
 と思ってたら、ひょいっとユーにお姫様抱っこされて外に連れて行かれた。

 お姫様抱っこって……恥かしいけど、結構いいものだね。

「はい、靴は予備を持ってるでしょ? みんなお待ちかねよ」

 運ばれたのは【星の家】だった。
 俺の家もそうだけど、ここも土足厳禁にしてある。
 この世界では馴染みのないシステムだけど、子供達…特に小さな子供達はすぐに靴を脱いじゃうから、いっその事全員が脱いじゃえという事で、こっちに来て少し経ってから土禁にしたようだ。町の中にあった孤児院の時には無かったシステムだった。

 そのまま食堂に連れて行かれると、皆が食事に手を付けずに待っていてくれた。小さい子も大人しく待っている。
 以外にもグズらずに待っているのを見ると、院長先生達の躾が行き届いてるんだなぁと感じてしまう。

「なんかお待たせしたみたいですみません」

 院長先生に頭を下げると「いいえ~」と優しく返って来る。
 すると成人まえの子達が続いて口々に話してくれる。

「エイジさん! 僕、もう少しで卒園なんですが、ここでケンさんとシェルさんのお手伝いとして残ります!」
「僕は冒険者になります!」
「私も同じパーティです!」
「僕もです!」
「私は先輩に誘われてて、合流したら別の町に行く予定です」
「僕は鍛冶師になるためにゼパイルさんのとこで修行をしていたのですが、エルダードワーフの里に行くつもりです! 先日広報係のコウホウさんと面接して来ました!」
「私は【星菓子】の面接に通りました!」
「僕はあと一年修行だって」
「あんたはまだ成人してないでしょ!」
「でも、僕は先輩より強いぞ!」
「私より弱いでしょ!」
「むぐぐ……」

 巣立って行く子達が報告してくれる。あと一年の子達まで近況を報告してくれる。
 ケンとシェルはまだ続いてたんだ……
 でも、嬉しいな。俺って慕われてないと思ってたけど、意外と慕われてたんだな。これも院長先生やシスターミニーのお蔭だろうな。
 子供達の報告にジーンとしてたら、年少組が我慢できなくなって文句を言い始めた。

「もう食べてもいいよね!」
「もうムリ! 我慢できない!」
「いつまでおあずけなのー!」
「すっごく美味しそうなのにー!」
「いつもよりご馳走!」
「早くー!」
「まだー!」

 そっか、俺待ちだったんだね。

「うん、お待たせ。院長先生、もういいですよね?」
「ええ、どうぞ」
「では、いただきます」

「「「いただきます!!」」」

 賑やかな食事が始まった。

 帰って来たんだなぁ。

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