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第06章 伝説の剣
第06話 挨拶回り
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ユーと別れて家に戻ったけど、気になって何も手につかなかった。元の世界の日本なんかだと、テレビを見たりスマホをいじったり音楽を聞いたりして気分転換するんだけど、ここには無いからね。ボーっと窓から外を眺めてたよ。
朝食前にメンバーに事情を説明し、それぞれどうするかを決めてもらった。
クラマとマイアは予想通り一緒に行くと言ってくれた。先行してユーと行くとは言わなかった、俺と行くんだって。
プリとシェルはユーの予想通り、【星の家】で帰ってくるのを待ってるそうだ。勇者と共にいたいと言って付いて来た割には、自分の欲望にあっさり負けたんだね。冒険者だからそんなものなのかもね。
ユーから話を聞く前には、もしかしたらプリとシェルのロンド姉弟は既に旅立ったのではないかと思ってたぐらいなんだけど、全然旅立とうと気配は無かったね。
ユーからの情報は合ってるんだろうな。プリはヤスと行動、シェルはちびっ子にゾッコン。ついでにケンとイチャラブみたいな感じだ。
なんかケンが可哀想だと思うのは俺だけなのかな。誰もケンの事には触れないんだよね。
シェルはこの二日間、ちびっ子達から離れる気配が無いようだ。作業や食事に風呂はもちろん、どうやら寝る時までベッタリらしい。
プリはヤスの事を気に入ったようで、キッカを差し置いてヤスと周辺見回りを行なってると聞いた。ケンはちびっ子にベッタリのシェルとラブラブ……いや、聞かなかった事にしておこう。
どの方向から見てもケンが不憫だ。ついでって感じもシェルの性別についてもね。
俺が関わらなかった二日間で色んなドラマがあったんだろうな。
「エイジ…おはよう…」
「おはよう、キッカ」
おや? 何か機嫌が悪そうだね。挨拶をしてくれるって事は、怒ってるわけでもないのかな?
あ、お土産だな。ちょうどいい、ここで全員に配ろう。
「王都のお土産。肉や野菜や果物はシスターミニーに渡すから、ペンダントなどのアクセサリー類を皆に配るね。はい、これはキッカに」
「え……ありがとう」
嬉しそうに少し頬を染め、渡されたペンダントを受け取るキッカ。
うん、機嫌は治ったかな? さっきまでより表情が明るくなったよ。やっぱりお土産が欲しかったんだな、大変だったけど王都まで行って来てよかったよ。お土産が無かったらずっと機嫌が悪かったかもな。
「もう紹介は終わってるんだよね?」
なんとなくさっきまではギスギスした空気を感じてたので確認のためにキッカに聞いてみた。
「え、ええ。一応……。ねぇ、エイジ? 次にどこかに遠征に行く時は、私も行ってもいいかな」
「え? あ、ああ、そうだね、キッカは初めから『煌星冒険団』の一員なんだし、もちろん構わないよ。前にも誘ったけど、キッカは残るって言ったから【星の家】の守りのために残ってるんだと思ってたよ。ちょうど、ユーの後を追って明日か明後日には出発する予定なんだけど、北の方に行く予定なんだ。キッカも行くかい?」
「ええ! もちろん!」
凄っごく食いついて来るけど何かあったの? 一緒にパーティ組むのが久し振りだから?
「う、うん、でも、領主様の所だとか商業ギルドなんかの用を終わらせるのに、今日中に終われば明日に出発する予定だけど、終わらなければ一日延びると思うんだ。ユーの事も心配だけど、たぶんアレを渡したから大丈夫だと思うし、俺達はノワールたち天馬で行くから一日二日程度の差ならすぐに追いつくと思うんだよね」
「…そのユーさんの事なんだけど、エイジの婚約者って本当なの?」
「えっ!」
婚約者? そんな話はしてないけど……あっ! どこかで落ち着いたら一緒に暮らそうって言われたっけ。あれが婚約宣言だとしたら、俺もOKしたからそうなるのか? 婚約指輪とか渡してないし、俺からは何も言ってないからそんな事何も考えてなかったけど、ユーはそういう気持ちだったんだ。
結婚なんて全然考えてなかったよ。
責任は取らないとって思ってたのに甘いよな、俺って。
次にユーに会ったらちゃんと言って返事をもらわないとね。
「その様子だと、本当みたいね。ま、いいわ。奥さんの座は一つじゃないから」
「ん? 何?」
考え事をしてて聞いてなかった。一人で納得してるみたいだし、ほじくり返して機嫌が悪くなるのも嫌だし、スルーという事で。
「それで、どことどこへ行くつもり?」
「うん、領主様の所と冒険者ギルドと商業ギルド、それに【星菓子】とドワーフのゼパイルさんの所かな。冒険者ギルドは一昨日行ったんだけど、お土産を渡してないからもう一度行って渡さないとね。秘書のランレイさんにはこの【星の家】の時にもお世話になってるし、他にもお世話になってる人は多いからね」
「そうね、私達は冒険者ギルドでは凄くよくしてもらってるものね。わかった、私も付いて行く。いいでしょ?」
「う、うん。もちろん」
どうしたの。今日のキッカはちょっと変じゃない? ヤスがプリと一緒に行動してるから一人だと寂しいとか? 俺も今日は一人だし、全然いいけどね。
朝食を終えるとすぐに出発した。
ノワールにキッカと二人乗りだ。
初めは他の天馬を用意したんだけど、天馬に乗るのは初めてだからと二人乗りを強要された。
ま、ノワールは他の二頭の天馬と比べて少し小さめだけど、普通の馬に比べると1.5倍はあるぐらい大きいから二人で乗っても問題ないし、二人乗りで行動する事になった。
なんか調子が狂うな。キッカってこんなだったっけ?
そんなキッカと一緒に、まずは冒険者ギルドへ。
犬耳アイファと馬耳ポーリンにはネックレスを渡して、秘書のランレイさんにもネックレスを渡そうと思って出したんだけど、ケーキを強請られケーキをホールで渡しておいた。ネックレスはいらないってさ。
確かに、この町でも売ってそうなアクセサリーだもんな。王都の土産って言われてもピンと来ないよね。
次は商業ギルドへ。
ちょうどセシールさんがいたので、お土産のアクセサリーを渡して、王都の商業ギルドでの出来事を話しておいた。
初めはもう帰ってきたのかと驚いてたセシールさんも、国家認定冒険者カードを見せたり、商業ギルドの副マスターの話をする事で信じてくれたみたい。
副マスターについては、そんなものだと言われた。王都に商業ギルドは地方の者は田舎者だと決め付けて、見下した応対をするんだと教えてくれた。
でも、行けって行ったのはセシールさんだよね? だったらなんでそんなとこに行くように言ったのかと思うんだけど。
口には出してないけど、そういう目でセシールさんを見たら、「地方の商人として必ず通らねばならない道ですから」と返された。
王都で商売するつもりもないから、好き好んで付き合うつもりもないし、一泡吹かせてやったってのもあるから俺としてはもう関わりたくないって思ってるんだよね。そういう面倒くさい背景があるんなら尚更だね。今後も王都には行く事があったとしても商業ギルドには寄り付かないようにしよ。
次に向かったのが領主様の城。ここで時間が掛かるだろうと予想してたんだけど、すんなり通されて昼までには出て来れた。
報告だけだからね。領主様にはお土産は渡してないけど、途中で現れたアイリスには渡しおいた。
そしたら、どこから現れたのか、アイリスの兄ちゃんのアンソニー様が出て来ると凄っごく睨んで来るし、横ではキッカも睨んでたし。
お前ら何か言えよな。睨んでるだけなら何で睨まれてるか分かんないんだよ。
アンソニー様には理由は聞けないからアイリスに聞いたけど「放っておいてください」しか言わないし、キッカに聞いても「別に」って言うし。だったら睨むなよって話だよ。
領主様からは、お披露目パーティをすると言われたけど、丁重にお断りさせてもらった。
だって、貴族しか来ないパーティの主役なんかしたら、敵しか作らないでしょ。味方の貴族がほしいとも思ってないけど、敵を自分から作る事は無いと思うんだよね。ネガティブ過ぎるって? それが俺なんだから仕方が無いじゃないか。
続いて行ったのは元孤児院。
【星菓子】に行ったんだけど満員で行列もできてたから寄らなかったんだよ。忙しくても俺が行くと全員の手が止まるだろ? お客さんにも迷惑だよね。だから元孤児院に行ったんだけど、話があるから夜に来て欲しいと頼まれた。
何か問題かって聞いたけど、今はリーダーもリーダー格もいないので全員が揃った時に話しますと真剣な眼差しで言われた。
タジタジになったけど、夜に再訪をすると返事をすると笑顔になってくれた。その様子を見ていたキッカがまたジト目で睨んでくるけど、睨むのは俺じゃなくて相手を睨めばいいのに。
最後にドワーフのゼパイルさんの所に寄った。
ゼパイルさんにはアクセサリーより酒がいいだろうね。前と同じく『龍王の杯』でいいでしょ。
凄く高い酒だって話だけど、衛星に作ってもらってるからタダだし、いいんじゃない?
ゼパイルさんの所は報告じゃなく相談だし、酒を盛って行った方が頼み事もしやすいしね。
ゼパイルさんは普通に家にいたよ。今日も仕事は無いのかな? 俺が心配する事じゃないけど、生活はできるの?
「すみませ~ん。ゼパイルさん、エイジです」
ゼパイルさんはすぐに出てきて、俺を引きずり込むように家の中に引っ張り込んだ。キッカは外に置いてけぼりだ。
「おい、エイジ。ちょっと金貸せ」
「え? どういう事ですか?」
「いいから貸せってんだよ」
「……いくらですか?」
「……銀貨九○枚だ」
銀貨九○枚ってまあまあな金額じゃないか。金貨二枚で一家が暮らせるって聞いてるから単純に円換算でニ○万円だとしたら、九万円だぞ? 俺なら持ってるからいいけど、普通はホイホイと貸す奴なんていないんじゃない?
ゼパイルさんって友達も少なそうだし、俺にも言うぐらいだから困ってるんだろうけど……あまりお金の貸し借りはしたくないよなぁ。ゼパイルさんとは長くいい関係でいたいし……
「……ゼパイルさんですから貸さない事もないですけど……あっ、それなら俺と取引しましょう」
「ああ? 取り引きだ? 普通は理由とか聞くんじゃねーのか」
「聞いてほしいんですか?」
「いや、言いたくねー」
「だったら、俺のお願いを聞いてくれたらお金を払います」
「それは仕事って事か?」
「そう取ってもらってもいいですよ。情報料として支払う用意があります。内容によっては高値で買い取らせて頂きますよ」
「んあ? そんな情報なんて儂は持っとらんが、情報が金になるなら何でも売ってやるぞ。おっと、但しドワーフ国の事以外だぞ」
前に来た時もドワーフの酒が門外不出だと言ってたぐらいだし、ドワーフ国は情報漏洩には煩いんだろうな。
「ええ、ドワーフ国については聞きません。でも、その前に連れも中に入れてもらっていいでしょうか」
キッカが外に置き去りになってるから、ゼパイルさんに言ってキッカも中に入れてもらった。
キッカを迎えに出ると、腕組をしたキッカがジト目で見てくるけど、俺のせいじゃないからね?
今日、何度目かのキッカのジト目に心の中で言い訳をした。
だって、言い訳をしたら、凄い勢いで文句を言われそうだから怖くて言い訳できないんだよ。
今日のキッカはいつもと雰囲気が違って怖いんだ。ちょっと言い訳したらパンチが飛んで来そうなぐらいのオーラを纏ってるんだもん。
今日のキッカのジト目の原因は全部俺のせいじゃないのに~、と心の中で叫びながら、ゼパイルさんの散らかった部屋で居場所を確保するために、ゴミ? を片付けるのであった。
朝食前にメンバーに事情を説明し、それぞれどうするかを決めてもらった。
クラマとマイアは予想通り一緒に行くと言ってくれた。先行してユーと行くとは言わなかった、俺と行くんだって。
プリとシェルはユーの予想通り、【星の家】で帰ってくるのを待ってるそうだ。勇者と共にいたいと言って付いて来た割には、自分の欲望にあっさり負けたんだね。冒険者だからそんなものなのかもね。
ユーから話を聞く前には、もしかしたらプリとシェルのロンド姉弟は既に旅立ったのではないかと思ってたぐらいなんだけど、全然旅立とうと気配は無かったね。
ユーからの情報は合ってるんだろうな。プリはヤスと行動、シェルはちびっ子にゾッコン。ついでにケンとイチャラブみたいな感じだ。
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どの方向から見てもケンが不憫だ。ついでって感じもシェルの性別についてもね。
俺が関わらなかった二日間で色んなドラマがあったんだろうな。
「エイジ…おはよう…」
「おはよう、キッカ」
おや? 何か機嫌が悪そうだね。挨拶をしてくれるって事は、怒ってるわけでもないのかな?
あ、お土産だな。ちょうどいい、ここで全員に配ろう。
「王都のお土産。肉や野菜や果物はシスターミニーに渡すから、ペンダントなどのアクセサリー類を皆に配るね。はい、これはキッカに」
「え……ありがとう」
嬉しそうに少し頬を染め、渡されたペンダントを受け取るキッカ。
うん、機嫌は治ったかな? さっきまでより表情が明るくなったよ。やっぱりお土産が欲しかったんだな、大変だったけど王都まで行って来てよかったよ。お土産が無かったらずっと機嫌が悪かったかもな。
「もう紹介は終わってるんだよね?」
なんとなくさっきまではギスギスした空気を感じてたので確認のためにキッカに聞いてみた。
「え、ええ。一応……。ねぇ、エイジ? 次にどこかに遠征に行く時は、私も行ってもいいかな」
「え? あ、ああ、そうだね、キッカは初めから『煌星冒険団』の一員なんだし、もちろん構わないよ。前にも誘ったけど、キッカは残るって言ったから【星の家】の守りのために残ってるんだと思ってたよ。ちょうど、ユーの後を追って明日か明後日には出発する予定なんだけど、北の方に行く予定なんだ。キッカも行くかい?」
「ええ! もちろん!」
凄っごく食いついて来るけど何かあったの? 一緒にパーティ組むのが久し振りだから?
「う、うん、でも、領主様の所だとか商業ギルドなんかの用を終わらせるのに、今日中に終われば明日に出発する予定だけど、終わらなければ一日延びると思うんだ。ユーの事も心配だけど、たぶんアレを渡したから大丈夫だと思うし、俺達はノワールたち天馬で行くから一日二日程度の差ならすぐに追いつくと思うんだよね」
「…そのユーさんの事なんだけど、エイジの婚約者って本当なの?」
「えっ!」
婚約者? そんな話はしてないけど……あっ! どこかで落ち着いたら一緒に暮らそうって言われたっけ。あれが婚約宣言だとしたら、俺もOKしたからそうなるのか? 婚約指輪とか渡してないし、俺からは何も言ってないからそんな事何も考えてなかったけど、ユーはそういう気持ちだったんだ。
結婚なんて全然考えてなかったよ。
責任は取らないとって思ってたのに甘いよな、俺って。
次にユーに会ったらちゃんと言って返事をもらわないとね。
「その様子だと、本当みたいね。ま、いいわ。奥さんの座は一つじゃないから」
「ん? 何?」
考え事をしてて聞いてなかった。一人で納得してるみたいだし、ほじくり返して機嫌が悪くなるのも嫌だし、スルーという事で。
「それで、どことどこへ行くつもり?」
「うん、領主様の所と冒険者ギルドと商業ギルド、それに【星菓子】とドワーフのゼパイルさんの所かな。冒険者ギルドは一昨日行ったんだけど、お土産を渡してないからもう一度行って渡さないとね。秘書のランレイさんにはこの【星の家】の時にもお世話になってるし、他にもお世話になってる人は多いからね」
「そうね、私達は冒険者ギルドでは凄くよくしてもらってるものね。わかった、私も付いて行く。いいでしょ?」
「う、うん。もちろん」
どうしたの。今日のキッカはちょっと変じゃない? ヤスがプリと一緒に行動してるから一人だと寂しいとか? 俺も今日は一人だし、全然いいけどね。
朝食を終えるとすぐに出発した。
ノワールにキッカと二人乗りだ。
初めは他の天馬を用意したんだけど、天馬に乗るのは初めてだからと二人乗りを強要された。
ま、ノワールは他の二頭の天馬と比べて少し小さめだけど、普通の馬に比べると1.5倍はあるぐらい大きいから二人で乗っても問題ないし、二人乗りで行動する事になった。
なんか調子が狂うな。キッカってこんなだったっけ?
そんなキッカと一緒に、まずは冒険者ギルドへ。
犬耳アイファと馬耳ポーリンにはネックレスを渡して、秘書のランレイさんにもネックレスを渡そうと思って出したんだけど、ケーキを強請られケーキをホールで渡しておいた。ネックレスはいらないってさ。
確かに、この町でも売ってそうなアクセサリーだもんな。王都の土産って言われてもピンと来ないよね。
次は商業ギルドへ。
ちょうどセシールさんがいたので、お土産のアクセサリーを渡して、王都の商業ギルドでの出来事を話しておいた。
初めはもう帰ってきたのかと驚いてたセシールさんも、国家認定冒険者カードを見せたり、商業ギルドの副マスターの話をする事で信じてくれたみたい。
副マスターについては、そんなものだと言われた。王都に商業ギルドは地方の者は田舎者だと決め付けて、見下した応対をするんだと教えてくれた。
でも、行けって行ったのはセシールさんだよね? だったらなんでそんなとこに行くように言ったのかと思うんだけど。
口には出してないけど、そういう目でセシールさんを見たら、「地方の商人として必ず通らねばならない道ですから」と返された。
王都で商売するつもりもないから、好き好んで付き合うつもりもないし、一泡吹かせてやったってのもあるから俺としてはもう関わりたくないって思ってるんだよね。そういう面倒くさい背景があるんなら尚更だね。今後も王都には行く事があったとしても商業ギルドには寄り付かないようにしよ。
次に向かったのが領主様の城。ここで時間が掛かるだろうと予想してたんだけど、すんなり通されて昼までには出て来れた。
報告だけだからね。領主様にはお土産は渡してないけど、途中で現れたアイリスには渡しおいた。
そしたら、どこから現れたのか、アイリスの兄ちゃんのアンソニー様が出て来ると凄っごく睨んで来るし、横ではキッカも睨んでたし。
お前ら何か言えよな。睨んでるだけなら何で睨まれてるか分かんないんだよ。
アンソニー様には理由は聞けないからアイリスに聞いたけど「放っておいてください」しか言わないし、キッカに聞いても「別に」って言うし。だったら睨むなよって話だよ。
領主様からは、お披露目パーティをすると言われたけど、丁重にお断りさせてもらった。
だって、貴族しか来ないパーティの主役なんかしたら、敵しか作らないでしょ。味方の貴族がほしいとも思ってないけど、敵を自分から作る事は無いと思うんだよね。ネガティブ過ぎるって? それが俺なんだから仕方が無いじゃないか。
続いて行ったのは元孤児院。
【星菓子】に行ったんだけど満員で行列もできてたから寄らなかったんだよ。忙しくても俺が行くと全員の手が止まるだろ? お客さんにも迷惑だよね。だから元孤児院に行ったんだけど、話があるから夜に来て欲しいと頼まれた。
何か問題かって聞いたけど、今はリーダーもリーダー格もいないので全員が揃った時に話しますと真剣な眼差しで言われた。
タジタジになったけど、夜に再訪をすると返事をすると笑顔になってくれた。その様子を見ていたキッカがまたジト目で睨んでくるけど、睨むのは俺じゃなくて相手を睨めばいいのに。
最後にドワーフのゼパイルさんの所に寄った。
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凄く高い酒だって話だけど、衛星に作ってもらってるからタダだし、いいんじゃない?
ゼパイルさんの所は報告じゃなく相談だし、酒を盛って行った方が頼み事もしやすいしね。
ゼパイルさんは普通に家にいたよ。今日も仕事は無いのかな? 俺が心配する事じゃないけど、生活はできるの?
「すみませ~ん。ゼパイルさん、エイジです」
ゼパイルさんはすぐに出てきて、俺を引きずり込むように家の中に引っ張り込んだ。キッカは外に置いてけぼりだ。
「おい、エイジ。ちょっと金貸せ」
「え? どういう事ですか?」
「いいから貸せってんだよ」
「……いくらですか?」
「……銀貨九○枚だ」
銀貨九○枚ってまあまあな金額じゃないか。金貨二枚で一家が暮らせるって聞いてるから単純に円換算でニ○万円だとしたら、九万円だぞ? 俺なら持ってるからいいけど、普通はホイホイと貸す奴なんていないんじゃない?
ゼパイルさんって友達も少なそうだし、俺にも言うぐらいだから困ってるんだろうけど……あまりお金の貸し借りはしたくないよなぁ。ゼパイルさんとは長くいい関係でいたいし……
「……ゼパイルさんですから貸さない事もないですけど……あっ、それなら俺と取引しましょう」
「ああ? 取り引きだ? 普通は理由とか聞くんじゃねーのか」
「聞いてほしいんですか?」
「いや、言いたくねー」
「だったら、俺のお願いを聞いてくれたらお金を払います」
「それは仕事って事か?」
「そう取ってもらってもいいですよ。情報料として支払う用意があります。内容によっては高値で買い取らせて頂きますよ」
「んあ? そんな情報なんて儂は持っとらんが、情報が金になるなら何でも売ってやるぞ。おっと、但しドワーフ国の事以外だぞ」
前に来た時もドワーフの酒が門外不出だと言ってたぐらいだし、ドワーフ国は情報漏洩には煩いんだろうな。
「ええ、ドワーフ国については聞きません。でも、その前に連れも中に入れてもらっていいでしょうか」
キッカが外に置き去りになってるから、ゼパイルさんに言ってキッカも中に入れてもらった。
キッカを迎えに出ると、腕組をしたキッカがジト目で見てくるけど、俺のせいじゃないからね?
今日、何度目かのキッカのジト目に心の中で言い訳をした。
だって、言い訳をしたら、凄い勢いで文句を言われそうだから怖くて言い訳できないんだよ。
今日のキッカはいつもと雰囲気が違って怖いんだ。ちょっと言い訳したらパンチが飛んで来そうなぐらいのオーラを纏ってるんだもん。
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