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第07章 チームエイジ
第17話 平和な行軍
しおりを挟むバーンズさんとの話し合いを終え、野営場所に戻ってくると、何やら野営陣地の一部が騒がしい。
どうやら戦闘が起こっている。
ここまで来る間に、襲撃は一度も無かったのだが、今夜のは魔物の襲撃があったようだ。
フィッツバーグ陣を囲むように王都陣が包囲して布陣している野営陣だが、王都陣の数箇所で戦闘が起こっている。
俺は衛星に姿を隠してもらって自分の小屋へと急いだ。
小屋に鍵は掛けていたが、誰かが尋ねて来ても留守だから心配をかけているかもしれない。どこに行ってたか聞かれるのも避けたいので急いで戻ったのだが、俺の小屋の入り口には数人の兵士が集まっていた。
小屋にある程度近づいた所で、姿が見えるようにしてもらい、ノワールに乗ったまま自分の小屋に近づいて行った。
小屋の前で集まっている兵士にすぐに見つかり、兵士たちは待つようにして俺の方に注目していた。
あちゃあ、完全にバレてるな。なんて言って誤魔化そう。散歩でいいかな? なんて考えてると兵士の一人が声を掛けてきた。
「ご無事でしたか。いらっしゃらないので心配しておりました。魔物が現れたので外出を控えて頂く様、連絡に来たのですが、散歩でもされてたのですか?」
家の前には四人の兵士がいて、その内の一人がそう語りかけてきた。
向こうが散歩だと思ってくれてるんなら、それに乗っておこう。
「はい、ご心配お掛けしました。ちょっと気晴らしに散歩のつもりが、騒がしくなったので様子を見ていました。魔物が現れたんですね」
「はい、もう今日の所は大人しくしていてください。この簡易小屋の周囲は我々で固めておきますのでご安心してお休みください」
「あ、はい。ありがとうございます」
疑われなかったのはよかったけど、警護までしてくれるの? 有難いんだけど、家の周りに人がいると思うと落ち着かないもんだね。
この小屋の名称って簡易小屋って呼ばれてるんだね、周りもほとんどこういうのを出してるし、野営ではメジャーなんだろうな。
でも、なんで今日に限って魔物が出たんだろう。魔物さえ出なければ、家から出てる事にも気付かれなかったのに。
翌日、行軍中に兵士がざわついてる。魔物の襲撃が内容みたいだ。
普段は私語などまったく聞こえてこない行軍なのだが、今日だけは違っていた。
さすが兵士だといつも感心していた、よく統率が取れているのか私語などせず黙々と行軍を続けるのだ。
だが、今日だけは違った、あちらこちらからざわめきが聞こえてくるのだ。
内容は全て昨夜の魔物の襲撃の件だ。
全員が襲撃の件を話題にしていて、ある時間を境に魔物が全く現れなくなったと言っているのだ。
しかも、それまで戦闘中だった兵士など、目の前から魔物が消えたとか話している。魔物と戦っていると、いきなり魔物の眉間に穴が開き、上から順に消えていったと言うのだ。
戦闘中だったと思われる者達が口を揃えて不思議な後継を語り合っていた。
不思議な事もあるもんだ。
魔物の眉間にいきなり穴が開いたとか、その魔物が目の前から跡形も残さず見る見る消えて行くとか、その後は魔物が現れなくなったとか……不思議だなぁ……
って、それ絶対衛星じゃん!
マジか…。戦闘中に目の前で勝手に倒される魔物達、しかも解体は高速すぎて分からなくても消えていく様は、消えて行くように見えただろう。
ホラーだな。そりゃいつも静かに行軍する兵士達も騒ぐわな。
それで、その後は魔物が出なかったんだろ? 今はタマちゃんが俺の周囲一キロにいる魔物を強制排除してるからな。もっと範囲を狭くしてくれって言ったら逆に広げやがったんで、もう言わないようにしているんだ。
お陰で相変わらず魔物を見ない。衛星が発動する前に池の畔で見たっきりだ。
あの時は衝撃的だったのに、もうほとんど記憶に残ってない。
まだ一年経ってないと思うけど、色々ありすぎて魔物の記憶なんて思い出せないよ。
昨夜までは俺がずっといたから行軍中も含めて魔物は現れなかったんだな。それがバーンズさんの所に行くため俺が抜けたので魔物が現れて慌てていたんだな。魔物の襲撃に備えてたとはいえ、一週間も襲撃が無ければ警戒も緩んでたんだろう。それは精鋭であっても同じだったって事だな。
うん、俺は関係ない。事にしておいてくれ。
行軍中の俺は行軍のほぼ中心に位置している。
王都から来た六○名の内、先導隊としてニ○名、後衛の殿にニ○名、残りニ○名が分散して周囲を警戒している。中央にはフィッツバーグ領軍が固まっていて、その中央に俺も領主様も周りを囲まれるように行軍している。
暇だから鑑定してみたら、王都の兵士はステータス平均が一○○○に対して、フィッツバーグ領兵はステータス平均が五○○にも満たない。
ステータス平均一○○○だったらキッカと同じぐらいだな。魔族にも勝てそうだ。そういえば目が赤くなったら魔族のステータスが数倍跳ね上がったようだけど、あれって何だったのかな。今までの魔族は初めか気を失ってからしか鑑定してないから、赤目の時って鑑定してないんだよな。何か秘密がありそうだけど、原則として関わりたくないってのがあるからそういう機会も無いだろう。うん、絶対に無い。フラグでも無い。
暇だし誰が一番強いのか鑑定して暇潰しをしていた。
王都部隊の隊長さんが、LV133 HP:1523 MP:1247 ATC:1603 DFC:1613 SPD:1238 で最強だった。
でも、俺の方がちょっと上だ。でも俺は戦った経験もないし、隊長さんは剣技の熟練度が高かったり、技も凄そうだし、剣も魔法剣を持ってそうなので、総合的に向こうの方が上だろうね。ユーには全然及ばないけどキッカよりは強いな。
という事は、冒険者Aランク以上勇者以下…か。
自分で言ってて意味分かんないけど、ただの暇潰しだからいいのだ。
『主殿』
『ん? なにノワール。遅くて退屈だろうけど我慢してよ』
『主殿を背に乗せておるのに暇などはありません。彼奴が話をしたいと』
『ん? だれ?』
『魔族の無口な方です』
『ふ~ん、俺には無いから無視だね』
『御意!』
いいね、ノワールは。俺が言うと絶対聞いてくれるもんね。
今更魔族と何を話すってんだよ。命乞いなら尋問の担当者にすればいいんだよ。俺には関係ないから。
この護送にだってジュレ公爵と領主様からの依頼で仕方なく来てるんだ。他の仕事なんてする気は無いんだよ。
「冒険者殿、少しお願いがあって声をお掛けしました」
今度は領軍の兵士がやって来た。堅苦しいのは兵士だから仕方ないか。
「はい、なんでしょう」
「魔族の担当だとお伺いしましたが、魔族の診察もできますか」
診察? 病気か? しかも魔族担当って…一応そういう触れ込みだったか。
「まぁ、簡単な診察ぐらいならできますが」
鑑定で分かる程度だけどね。HPやMPの減り具合は分かるよ。
「片方がグッタリしてまして、診て頂きたいのです。誰も魔族には近寄りたがらないものですから」
魔眼で精神操作される事は無いとは伝えてるけど、それでも嫌なんだろうな。
「分かりました、行きます」
兵士に同行して魔族の下へ。
魔族はグルグル巻きの状態は変わってない。鉄格子の檻の中に入れられていて、その檻は幌付きの馬車に積まれていた。幌のカーテンを開けるとすぐに中の様子が窺えた。
二人共大人しいな。
どっちの具合が悪いのか聞いてみた。
あっちです、と指差す兵士。近づきたくはないが、役目だから一時間に一度、中の様子は確認している。
「ずっと転がり回っていたのですが、少し前から動かなくなってしまったのです」
「食事は?」
「はっ、もちろん毎食出しています。そっちの奴は残はしますが、毎食必ず食べます。こっちの奴は食べていません。最初に食べた時に、すぐに吐いてしまって、それから食べようと努力はしてるみたいですが、受け付けないようです」
グルグル巻きで手が使えないから、かぶりつきになるから、残すのは食べにくいからかも。アホっぽい奴の方は頑張って食べようとしたんだな。それでも吐くとか受け付けないとか……
あ……あいつ。まだ鼻に詰めたままだった。
かれこれ一週間詰めっぱなしか。その前も五日間放置だったし、もしかして死んじゃった? 十日以上も食べてないんだったら死んじゃったんじゃない?
「悪い事したな、でも死んじゃったものは仕方が無い。その辺に捨てておけば魔物が処理してくれるんじゃない?」
「フゴフゴ―――――――!! (死んでね―――!!)」
あ、生きてた。まだ元気そうじゃん。
ま、よく頑張った。その鼻に詰めてるものだけは取ってやるよ。
『タマちゃん、あの鼻に詰めたやつ、取ってあげて。あと消臭もしてあげてもいいかな。ついでに胃に優しい食べ物も出してあげて』
『Sir, yes, sir』
「うおーっ! 臭くねー! うおぉぉぉぉ!」
全然元気じゃないか。魔族ってこんなにタフなの?
「煩い、また詰めるぞ」
「! ……」
匂いが無くなって騒いでたが、『また詰めるぞ』の一言で大人しくなった。
「もう大丈夫だと思うので、後はよろしく」
領兵に後を頼み、その場を去ろうとすると、もう一人の方の魔族が声を掛けてきた。
「交渉がしたい」
「無理」
それだけ言い、さっさとその場を離れた。
俺もこういう見切りが上手くなったよね。ズルズルいたら面倒事が起こる可能性100%だ。間違いない。
今はこの魔族の件さえ無ければ、他は大体順調なんだ。態々こいつらと交渉して得るものもない、損しかない。
俺の判断は正解だったと思う。
その日の夜、リーダー会議に呼び出された。
毎晩やってたそうなんだけど、俺は呼ばれていなかった。それが今日に限って呼ばれたのだ。
議題はその日の報告と今後の対策だけなので、今まで俺が呼ばれる事は無かったのに、なぜか今日は呼び出された。
いつも通りなのだろうと思うけど、今日の成果を各リーダーが報告している。
王都側の隊長と殿を任されている副長が、今日の成果は無しと報告していた。それは当然だ、魔物に遭遇しないのだから。その分、行軍予定は、この一週間で想定してたより一日分以上多く進んでいた。魔物との戦闘が無いのだから、止まる事が無いのでタイムロスも無いのだから。
領軍側の隊長が魔族についても異常なしと報告。今日、俺が魔族の治療を施したと付け加えられていた。
恥ずかしいから言わなくていいのに、と思うけど、何がしかの成果を報告をすると点数を稼げるんだろう。どの世界も同じだね。
すると王国側も負けじと昨夜の魔物との戦闘について報告を始めた。
討伐数は六。後は、戦闘中に消滅。被害は継承者多数も死者、重傷者共に無し。
んー……凄いのか凄くないのか良くわからん数字だ。
衛星が来るまでに六体倒したんだね。俺が帰って来てから魔物は消えてしまったから討伐数は多くない気はするけど、皆大した怪我が無くて良かったじゃん。
明日の予定として、行軍の順番は変更無しと伝えられた。
最後に、予定では王都側から迂回ルートで回っている部隊と合流できるかもしれないと報告もあった。
もっと暇になりそうだな。また鑑定でもして暇潰ししようかな。
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