137 / 224
第07章 チームエイジ
第24話 バーンズさんにカミングアウト
しおりを挟む商談が終わった頃、クラマとマイアが戻ってきた。コウホウさんの姿は見えない。
エルダードワーフの里は秘匿されているから魔族やバーンズさんを連れて行く事はできないし、クラマとマイアも合流できた事だから、このまま戻ろうと思う。が、コウホウさんに話しておかないと次から困るんだけど、クラマとマイアの様子を見る限り、今日はもうコウホウさんに会えない気がする。
それでも一応確認の為に聞いたみた。
「コウホウさんは? ちょっと話がしたいんだけど」
「何やら用があると言っておったのぉ」
「はい、今日は手が離せないからリーダー殿によろしくと言ってましたわね」
絶対嘘なのは分かってるけど、火中の栗を拾いに行く気にはなれない。コウホウさん、冥福を祈っております。
秘密の道の合言葉を全員に教えて、街道に出ると、そのまま街道を横切り森に入った。
今日もバーンズさんがいるからヨウムに頼むのは夜になってからだな。
「しかし、魔族を奴隷とは、エイジも変わっとるのぉ」
「ええ、精霊や妖精の従者だけでは足りなかったのでしょうか」
クラマとマイアに魔族を紹介すると、いきなり煽られた。ちょっと嫌味も入ってるみたいだ。
「ちょっとした成り行きでね」
「魔族ですと!」
あ……バーンズさんには内緒だった。
「魔族はどこです! どこにいるのです! 早く逃げませんと!」
いや、ずっと一緒にいますけど……この際だ! カミングアウトしてしまおう!
「バーンズさん、落ち着いてください。説明しますから」
「いや、しかし、落ち着いてる場合ではありませんぞ!」
「魔族について説明しますから落ち着いてください」
何度か言い聞かせて、興奮するバーンズさんをやっと落ち着かせた。
「これは、本当は言いたくなかったんです。でも、これからも一緒にやって行くバーンズさんには話しておいた方がいいと思ってお話します」
「……わかりました。今回の幻のエルダードワーフとの交渉にも成功し、機密事項ばかりですが、まだあるのですな」
「はい。そうなんです」
「……分かりました。私も覚悟を決めましょう! なんなりとお話ください」
バーンズさんは決死の覚悟を決めた表情で俺に向き直り姿勢を正した。
「実は……」
「はい」
「実は、一緒に来た四人は魔族なんです」
「はい」
「え? 知ってました?」
「はい」
「なーんだ、そうならそうと言ってくださいよ」
「はい」
「あれ? ちょっとバーンズさん? どうしたんですか?」
「はい」
「なんか目の焦点が合ってませんよ」
「はい」
「ちゃんと聞いてます? はい、以外もしゃべってくださいよ」
「はい」
「だから、ちゃんと話してくださいって」
「はい」
「無駄じゃ、エイジ。その男は既に意識がないぞえ」
「え?」
クラマに言われ、バーンズさんをじっくり見ると、無表情で「はい」「はい」と繰り返してるだけだった。
目も開いてて返事もするから、さすがはバーンズさん、肝の据わった人だと思ってたが、違ったみたいだ。
マイアに気付けしてもらって、バーンズさんを無理やり起こしてもらった。
「大丈夫ですか?」
「……はい、嫌な夢を見ておりました」
「……そうですか」
「魔族が武器商人として私と働いているのです」
「……そうですか」
「いやあ~、おかしな夢でしたな」
「……バーンズさん」
「ん? なんですかな? エイジ様」
「それ…夢じゃないんです」
「ん?」
「この四人は魔族なんです」
俺の言葉と共に【変身】を解除する四人の魔族。
途端に肌の色が緑に変わって行く。
また気を失いそうになるバーンズさんをマイアが何とか繋ぎとめた。落ち着く香りが俺の所にも届いたからマイアの得意なスメルかパヒュームを使ったんだろう。
百戦錬磨のバーンズさんでも魔族というキーワードは気絶ものだったようだ。しかも四人いるからね。
「落ち着いて聞いてください。この魔族の四人は、俺と契約していて絶対に人には危害を加えません。信じてください」
「……」
「この魔族の四人は味方です。俺達の味方なんです。信じてやってもらえませんか?」
「……」
「今回の件はバーンズさんも知っての通り、秘密が多すぎるのに腕の立って信頼できる仲間がいなかったのですが、この四人が自ら志願してくれたのです」
「……」
「ダメですか?」
「……エイジ様」
「はい!」
「契約とおっしゃいましたな。それはどんな契約なんでしょうか」
「はい、この四人は俺の奴隷として契約しています」
「! なんと! 魔族を奴隷ですと!」
「はい、この四人は先日王都で処刑された事になっています。変身で人の姿に変えていますが、バレれば俺もタダでは済まないでしょう。だけど、この四人は俺が処刑から助けた事を恩義に感じてくれて俺の奴隷になって協力してくれると約束してくれました。既に奴隷にもなっています」
少し嘘も入れてしまったが、大体あってると思う。これでダメならバーンズさんとはお別れになってしまうだろうな。なんで言っちゃったかなぁ。クラマが口を滑らせたから……でも、口止めはしてなかったもんな。そんなヒマ無かったし。
「奴隷…ですか……それは、また、なんとも、凄い。国家公認冒険者とはそこまで凄いのですな」
魔族を奴隷ですか。と項垂れ首を振るバーンズさん。
そして、顔を上げると決意を決めて答えてくれた。
「わかりました! ここまでお膳立てされたのでは、私に断る理由はございません。エルダードワーフの作る武具という夢のある商売にも携われるのです。ここは商人として引き下がるわけにも行きませんな。乗りかかった船です、私も協力させて頂きましょう」
「ありがとうございます、バーンズさん」
バーンズさんとガッチリ握手をして、今後の協力を誓い合った。
なぜか魔族の四人も泣いていた。声を押し殺して嗚咽する魔族の四人。
確かにお前達の事だけど、泣くほどの事じゃなかったと思うよ。ほら、クラマとマイアなんてシラ~っとしてるし。
その後、衛星に料理を出してもらって八人で夕食を摂った。
久し振りに俺の、というか衛星の料理を堪能したクラマとマイアが少々煩かったが、何事も無く食事を終え就寝。
今日の簡易小屋の割り振りは、俺とクラマとマイアで一つ。魔族四人で一つ。バーンズさんは一人で寝た。流石に魔族と分かったら一緒に寝るのは抵抗があったようだ。俺の方にはクラマとマイアが寄せ付けなかった。
「久し振りの添い寝じゃ、邪魔するでない」
「そうです、野暮ですわよ」
んー。俺も久し振りに野郎ばかりの状態から解放されるので、クラマとマイアの提案を受け入れた。
そして、夜のうちにヨウムに頼んで移動してもらい、ハイグラッドの町までバーンズさんを送って行った。
バーンズさんにエルダードワーフから受け取った剣と槍を全部渡し、販売に関しては全て任せる事にした。
俺達は、町に入らずそのまま森に入り、ヨウムの前に送ってもらった。
ヨウムを魔族に紹介し、今後移動するときは協力するようにも言っておいた。そして我が家に戻り、今後の予定を話し合った。
「これで、四人の仕事は分かってくれたと思う。それで、仕入れの方もできないかと思うんだけど、何かアテはない?」
「仕入れと言いますと、エルダードワーフに渡すものの事ですね」
「うん、そうなんだ。酒と素材と料理だね。酒と料理は、明日連れて行く居住区で何とかなるんじゃないかと思ってるんだけど、鉱物素材のアテが無いんだよね」
そうなんだ。酒は酒蔵も作ってるから、そこから出してやればいいと思ってる。料理も食材さえ渡せば居住区の料理係が協力してくれるんじゃないかな。
問題は鉱物素材。鉱山なんて知らないし、掘り方も知らないからね。
「さようですね…一つ思い当たる場所はございます」
「あー、あそこか。すぐに分かったぜ。でもよぉ、いいのか? あそこは魔王様の管轄地じゃなかったか?」
「「あっ!」」
ビランデルにヘリアレスが言った言葉で何かを思い出すガレンダとタレラン。
魔族四人ともが知っている場所があるようだ。しかも、そこには鉱物があるのだろう。
魔王様って……そういや、魔王退治に勇者が召還されてるんだよな。勇者VS魔王ってどうなってるんだろう。
プリかシェルに聞けば分かるかな? ユーはもうその枠から出てるから知らないだろうしな。
「魔王って、やっぱりいるんだね。当然強いんだろうね」
「もちろんです。魔王様の前では勇者でも赤子扱い。我々魔族の戦士が百人束になっても勝てないでしょう」
「だな。あの強さは反則だぜ。俺もあの強さに憧れて剣を始めたんだからな」
「私も同じです。魔王様は魔族の憧れです」
「力だけではありません。魔法も最強なのです」
強ぇーじゃん、魔王! そんなの勇者でもどうにもならないんじゃないの?
「そんなに強いんなら人間がなんで滅ぼされてないの? 魔王って戦争嫌い?」
「戦争は…どうなのでしょう。戦う事は好きなようですが、戦争が好きかと言われれば……」
「好きに決まっている! だから私は魔王様のためにフィッツバーグを拠点に戦争を起こそうとしていたのだ」
「そうだ! 私もそう思ったからこそ、ガレンダを手伝ったのだ」
「それは違うと思うぜ。魔王様はよ、戦う事が好きなんだ。弱い奴らが群れて来たってよ、魔王様が喜ぶわけねーぜ。魔王様は強い者と戦いたいだけだと思うぜ」
「し、しかし、氷の国ヒュートンでは大層お喜びになったと聞いてるぞ」
「あー、あれか。あれは俺も参加してたんだけどよ、氷の国ヒュートンが召還した勇者がえれー強くてよ、しかもあれだ、あそこにゃ氷龍がいただろ。勇者と戦って、氷龍と戦って、そりゃ嬉しそうに戦ってたぜ」
俺の問いにガレンダとタレランが答え、それをヘリアレスが全面的に否定してしまった。
勇者に氷龍って……そんな連戦で喜ぶ魔王? 魔王って戦闘狂なの?
「では、あれは! 西のシャーレンドはどうなのだ。あそことの戦争もお喜びになったと聞いてるぞ」
「シャーレンドには私が行った。あそこの勇者も強かったが、魔王様の前では敵では無かった。私達では敵わなかったが、魔王様にかかれば一分ともたなかったな。非常に気落ちされてたが、シャーレンドの西海岸沖にリヴァイアサンを見つけた時には誰よりも先に走って行かれた。それはそれは嬉々として走って行かれたよ」
「戦争が好きでは無い……」
「そんな……では、我々のやった事は……」
「そうだな、レギオン族はあまり戦場に出ないからうまく伝わってなかったんだな。あんまり先走った事をすると魔王様に一族を滅ぼされちまうぞ?」
やっぱり魔王ってバトルマニアなんだ。絶対に近付かないぞ! あ、俺はステータスだけ見ても、こいつらとドッコイだから見つかっても鼻で笑われる以下だろうな。たぶん、透明人間の如く無視されるだろうな。
「では! 強者を見つけるとお喜びになられるのだな!」
「ま、喜んでくれるだろうな。だが、俺達が束になっても勝てない人間なんていねーだろ」
「それもそうか…たしかにそうだな」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「「「エイジ様!」」」
「はい?」
え? なになに? 今なんで呼ばれたの?
そんな話よりさ、お前達のこれからの仕事の話をしようよ。ね?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる