衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第09章 コンプリートからの道

第04話 集落統一して報告会

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 朝食を摂った後は、俺だけ別行動になった。
 クラマ、マイア、ユーは昨日の続きで訓練なのかイジメなのか分からない素材調達の指導を行なう。
 俺は、昨夜ダンダールさんから頼まれた、他集落の様子を見るために一人で出掛けた。
 ダンダールさんが付いてくると言ったが、紹介状だけ書いてもらって出来上がった工房での試作と指導をお願いした。
 ヨウムの能力を説明するのも面倒だったのだ。俺一人なら一瞬で移動できるからね。

 さて、他の集落では何をやってもらおう。無料奉仕は相手も気遣って警戒するからこの集落同様に商談として持ちかけた方がいいと思うんだ。
 でも、大体のものは居住区で作れてるし、生地もここでお願いしただろ? 武具はエルダードワーフに頼んでるし……後は……思いつかないな。
 無ければ同じ生地でもいいかな。この世界の服って生地がイマイチだからな。いいものは魔物素材だし、服屋にも生地を卸してやれば服屋が潰れる事もないだろうしね。生地を卸してる生産者っているのかな?
 でも、服なんて、安くて種類が多ければ何着も買うだろうし、よほど素材が悪くなければ潰れる店も無い…よね?

 ケーキ屋の時でもそうなんだけど、俺が出すものが原因で店が潰れたりするのって嫌なんだよな。
 だから、なるべく業種が被らないものにしたいんだよ。
 となると、後は娯楽関係? あっ! シャンプーとかリンスがいいな、石鹸とか。うん、それにしよう!
 風呂文化じゃないから需要は少ないかもしれないけど、洗髪するにしてもあった方がいいよな。

 まずはダンダールさんと懇意にしている集落に行き、交渉をした。紹介状があったから交渉はスムーズに終わり、この集落ではシャンプーとリンスと石鹸を作ってもらう事になった。
 次にダンダールさんの知り合いがいるという集落。ここもスムーズに交渉が終わり、集落の人数が十一人と少なかったので一つ目の集落に合流してもらう事になった。
 ここでも武具は出したが、使う事態は起こらないだろう。シャンプー、リンス、石鹸の材料は植物性だから闘わなくてもいい。材料になる植物栽培ならヨウムはお手の物だからね。
 もちろん、魔物や獣に襲われないように管理も任せてあるし、食材も渡して先行投資は万全だ。

 他の集落もヨウムに調べてもらって交渉して仕事を任せるか統合させるかして、八○以上あった集落を一○以下まで減らす事ができた。
 その大きな要因として半分ぐらいは悪者の棲み家だったから殲滅するだけでよかったから、逆に楽だった。
 三人に頼めばすぐに済んだから。教師役の片手間にやってくれたよ。生徒である住民は、その間自習をさせられてたよ。鬱憤晴らしにちょうどいいって言ってた。教師役は手加減をしないといけないからストレスが溜まるんだと。

 思ったより悪者が多かった。
 いるとしても盗賊ぐらいだろうと思ってたら、裏社会の暗殺ギルドのアジトや悪徳貴族の隠れ家なんてものもあって、クラマ達が掃討したあとを探索しただけで相当な見入りになったからね。
 悪い奴ほど潤うとは、よく言ったものだよ。

 残った集落にはそれぞれ生産職の役割を持たせた。
 靴であったり食物油であったりジャガイモであったり。ジャガイモは【星の家】でも作ってるけど、こっちでは片栗粉や水飴に加工してもらってる。
 食物油は今後揚げ物の需要が増えてもいいように生産を頼んだ。
 あとは、紙とか麺とか、やはり生産工程を隠したいものを頼んだ。中華麺なんてかん水を使うから、この世界には無い麺だしね。

 後は宝石や装飾品だな。王都にお土産を買いに行った時にも思ったんだけど、この世界のものってどれも代わり映えしないんだよ。だったら作ってもいいんじゃないかと思うんだよね。今までのデザインには手を出さずに、新しい分野のものを売ればいいんじゃないかと思うので、ピアスやアンクレットなどを出して行って売れれば儲け物って感じでいいんじゃないかな。
 目的は、集落の人達に仕事を与えて、恵んでもらってるという引け目を持たせないって事だからね。ついでに俺も儲けられたらいいぐらいのスタンスでいいんじゃない? 既にお金はタップリあるんだから。

 そして忘れてはいけないのが”紙”だ。
 この世界の紙は質が悪く普及率も低い。
 高品質なノート用紙から低品質の藁半紙や、俺は困ってないけど皆が望んでいるであろうトイレットペーパーまでを作る集落を多めに設定した。

 販路に関しては全てバーンズさんに任せよう。行商役はエルダードワーフの里にも行ってる魔族の二人でいいんじゃない? だって、これ以上秘密を広げたくないしね。

 頑張れビランデル! 負けるなヘリアレス! 森の集落の人達の未来はお前達に掛かってるんだから。

 そう、丸投げを心に誓い、集落の初期設定を終えた。今後は集落住民も、もう少し太る者も増えてくるだろう。
 交渉に関しては時間が掛かる集落が多かったため、一日に一ヶ所か二ヶ所しか回れなかったので、結構な時間を食ってしまった。
 そろそろ最後の地図に挑みたいところだ。
 時間が掛かったので、クラマ達による指導も、最低限納得できるところまでは終えたようだ。後は、彼らの精進次第だという事だった。


 キリもよかったので、俺達は【星の家】の隣にある自宅に戻り、関係者に集合をかけた。
 【星の家】にいる者にはそのまま声をかけ、ここにいない者にはヨウムと精霊が連絡に回ってくれた。
 皆が集まるまでに、自宅横に集会場を作ってもらった。集会場自体はそこそこ大きなものになったが、大きな一部屋で、簡易的なキッチンと後はトイレぐらいだったので、作る時間はたったの十分。
 家の構造だけじゃなく、衛星もレベルアップしてるのかもしれない。

 クラマ、マイア、ユーにキッカ、ケン、ヤスの初期の三人組。現在は三人バラバラで活動しているが、レベルも凄く上がっていて、今では三人共、それぞれの分野で頼られる存在になってるようだ。
 それから【星菓子】の十八人にも来てもらった。いつもいるのに影の薄い三人の男性陣も一緒だ。今回もやはり影が薄いようだ。
 あと、院長先生と鍛冶師のゼパイルさんにも来てもらっている。居住区からは責任者を任せているロジャーとロイド。仕方がなくだが魔族の四人も呼んでいる。ビランデル、ヘリアレス、ガレンダ、タレランの四人だ。
 プリームとシェルのロンド姉弟もいた。まだ帰ってなかったんだ、いつまでいるんだろ。
 俺の従者になっている三精霊の他にも五人の精霊が増えている。三精霊の後にマンドラゴラらの世話で増えた二人は知ってるけど、後の三人はいつからいるの? マイアは一緒にいたから召喚してないはずなんだけど……
 そう思って尋ねてみたら、妖精が進化したそうだ。
 畑に妖精が増えすぎて、何体かが融合して、更に何かの力が加わって進化したそうだ。

 何かの力って……犯人で思いつくのって衛星しかいないんだけど。
 今は犯人特定してる場合じゃないけど、あとで確認しておこう。これ以上増えられても、ねぇ。
 そのお陰か、生産量が三倍以上増えてると院長先生が報告してくれた。
 今までだって半端ない生産量で、余った分が収納バッグに入ってるのに……これはもうアレだ、魔王にでも売りつけてやろう。

 以上が今回集まってもらったメンバーだ。大商人のバーンズさんやエルダードワーフのコウホウさんは呼んでない。
 バーンズさんが来ると、商人都合の話が出そうだったので、こちらで決めた事を魔族にでも決定事項として報告してもらおうと思ったので呼んでない。コウホウさんには、今以上の事をしてもらう予定も無いので呼ぶ必要が無かったし、うちの手の者でも無いしね。

 さて、始めようか。

「お疲れ様です、では報告会という名の食事会&慰労会を始めます。まずは乾杯から始めましょう」

 俺の乾杯の音頭を皮切りに、一組ずつ前に出ての報告会が始まった。
 その場で立っての報告など許さない。俺だけが前で話す恥かしさを味わうなんて許せないって。
 そんな俺の思惑など誰も気付くはずもなく、順番に報告が為されていった。

 まずは院長先生から。
 また孤児が増えたそうだ。
 もう、【星の家】の部屋が飽和状態であるにも関わらず、一日足りとも飢える事無く暮らせている幸せを報告された。
 どこから連れて来てるのかは知らないけど、連れて来ている犯人は院長先生である事は間違いないだろう。
 結構、忙しいはずなんだけどね。いつ行っても院長室にいるし。
 でも、部屋数が足りないのなら建て増ししてあげておこうか。食べ物は余ってるんだしね。

 次は【星菓子】から代表してローズさんとアンジェリカさんからの報告だ。
 売り上げは非常に順調で、【星菓子】名義の貯蓄も白金貨五〇枚を超えたのだとか。それなら自分達の給料を上げるとかボーナスを出すとかしてくれたらいいのに。と思ったが、それは俺の役割だね。でも、俺が言っても給料アップには賛成してくれないんだよなぁ。
 他には、いつ頃に支店を出す許可がもらえるのか、もっと泊まりに来て欲しいとか、他の料理も出したいとか言われた。

 なんで、そんなにやる気があるんだろ。少しはクラマ達にも分けてあげてほしいよ。
 支店は砂糖の価格が落ち着いたら出せるようになるだろうから、もう少しで出せると思うな。他の料理は、今ある食堂と被らなければいいんだけど、飯屋となるとそうも行かないよね。だから却下した。今のままでも十分に皆が満足に暮らせているんだから。

 次々に報告される内容をメモに取って行く。俺が裁決したりフォローしなければならない事が多いからだ。
 例えば【星の家】だって、ただ増築するだけなら自分達でもある程度できるだろうけど、今の物と同じ贅沢な造りにはならないだろうから、衛星製のもので建ててあげなければならない。差別が発生するかもしれないからね。
 院長先生に任せていれば、そうはならないだろうけど、そういう芽は無くしておきたいもんな。

 ロジャーとロイドからは居住区の報告がされた。
 生産は非常に順調で、こちらも消費分以上に生産量が多いので、売りたいと言って来た。スラムから移り住んでいる住民も乱すもの無く仕事に励んでいるそうだ。
 工場で聞き取りを行ない、食堂では会話を盗み聞くなどして住民の満足度も調査していると言う。
 その結果、住民の誰もが五年と言わず、何年でも住み続けたいと言っているんだそうだ。

 なに、その優秀さは! ロジャーとロイドってそんな事もやってるんだ! 丸投げって人を育てるんだね。
 でも、居住区産のもので売れるものは少ないんだよ。この世界には無く、俺の願望を作ってもらってるものが多いからね。少量なら希少価値を付けて出してもいいとは思うんだけど、大量には出せないよな。生産地も明かせないし、集落用ぐらいなら出してもいいかな。

 『煌星きらぼし冒険団』からも報告があると言って、ケンとヤスが出て来た。
 そういえば、そんなパーティ組んでたよな。俺がパーティリーダーだったよなぁ。って、まだあったんだ。クラマとマイアも入ってたっけ。

 そんな事を考えてたら、ケンとヤスの二人から爆弾発言が飛び出した。
 ヤスはプリームと、ケンはシェルと結婚を決めたと宣言したのだ。

 ちょ――――っと待とうか。

 あの頼りなかったヤスも、今ではAランク冒険者になってるんだ。結婚もアリでいいだろう。プリは凄んごく美人だからヤスには勿体無いとは思うけど、それは本人達の問題だからそれもいいだろう。
 だけど、シェルは男だよ!? ケン! お前もそれでいいのか?
 日本でも同性結婚は認められるようになったって聞いたような気がするけど、俺の中では百合はあってもBLは無しだからな!
 【星の家】の子供達への教育にも良くないし、新居は王都にでも行ってもらおうか。うん、支店の責任者だとか適当な理由を付けて放り出そう。

 ゼパイルさんからは特に無し。既に酒樽を隣に置いて飲んでる。【星の家】の子供達の武具は全てオーダーメイドで作ってくれてるみたいだし、それ以外の時間は鍛冶仕事に没頭してるみたいだ。ちゃんと仕事できるんだね。
 これも、自慢の魔剣を衛星が折った事で過去を吹っ切れたんだろうね。
 そう言えば、魔剣はまだ作ってないな。今は軽くて硬くて切れ味鋭い剣を極めてるみたいだから、それを終えてからかな。

 この辺の話はケンの宣言で呆けている俺に院長先生が話してくれた。俺が残念な報告を聞く事をヨシとしなかったんだろう、少しでもいい話をしたかったみたいだ。
 ホント院長先生には感謝だね。元孤児院の事なんか丸投げしてるのに、ゼパイルさんやロンド姉弟の事なんかも気にかけてくれてるし。【星の家】の増築関係は一番にやってあげよう。

 そして魔族達からも報告があった。
 ビランデル、ヘリアレスの二人からはエルダードワーフと大商人バーンズさんと居住区とフィッツバーグの四拠点の売買経過の報告だ。
 計算は全てバーンズさんにやってもらっているが、エルダードワーフの作る武具の鑑定はバーンズさんと一緒に一つ一つを査定して行くので、武具の目利きが非常に上がったと得意げだった。
 居住区からは領主様にも指定の香辛料を届けている。行く行くは商業ギルドで仕切るんだろうけど、現在は領主様に直接届けているようだ。絶対に魔族だとバレないでくれよ!

 領主様からは毎回決められた金銭で支払われ、バーンズさんからは酒類と料理が物々交換で渡され、それを居住区で料理と酒類を追加してエルダードワーフの里に持って行く。移動はヨウムに頼んで一瞬だから、楽な仕事だ。
 バーンズさんの所では鑑定の仕事はしているが、エルダードワーフは中も確かめずに収納バッグを交換するだけだし、居住区ではガレンダ、タレランの二人の魔族が用意してくれているのだから。
 ガレンダとタレランは居住区で事務処理の傍ら、エルダードワーフへの貢物を取り分けてくれている。ロジャーとロイドの事もしっかりと支えてくれてるみたいだし、ホント優秀だよなぁ。これで魔族じゃなければなぁ。
 
 うん、こうやって考えてみると、集落に行く仕事が増えても問題無さそうだ。一つの集落には週に一度行けばいいんだし、手が回らなかったら二週に一度でもいいだろ。
 バーンズさんに仕事が増えた事も、行商役のビランデルとヘリアレスに任せよう。俺が行くとまた仕事が増えそうだから。

 報告会の後は食事会&飲み会だ。
 皆、和気藹々と食事を済まし、最後に俺からの報告だ。

「ゴホン、あー、みなさんの頑張りに凄く感謝しています、ありがとうございます」
 挨拶の口頭で感謝を述べると、口々に感謝や否定の言葉が返って来た。

「エイジ様! 私達の方がお世話になりっぱなしですのに、お礼など言わないでくださいまし。もっともっとお役に立てるようになってみせます! ですから、もっと”女子寮”に泊まりに来てください」
「エイジさん、こちらの方がお世話になってますよ。あなたの優しさによって私達は救われたのですから」
「領主様! もう居住区は軌道に乗ったと言ってもいいと思います! そろそろ町に名前を付けてください!」

 声を出すのは【星菓子】の面々と院長先生、居住区のロジャーとロイドで、ゼパイルさんや魔族や精霊は黙っている。それぞれに黙ってる理由は違うみたいだけど、今は置いとこう。
 ケンとヤスは報告の後はいちゃついていて、こちらの事は眼中に無し。クラマ、マイア、ユーも酒や食事に集中していて、こっちの話なんて聞いちゃいない。ま、いつもの事だけどな。

 まだ報告の冒頭なのに、既にやり遂げた感があるんだけど……
 気を取り直して報告しないとな。
 ざわつくみんなに静かにしてもらって、報告を続けた。

「えっと、みんなの報告を聞く限り、順調そうで何よりです。急ぎは【星の家】の増築ぐらいかな? ケーキ屋の支店を出すのも、もう少し砂糖の価格が安価で落ち着いてからね。ケンとヤスは王都に行ってロンド家に挨拶してくるように。そのまま王都に居ついちゃってもいいからね、王都定住を推奨するよ。ビランデルとヘリアレスは後で話があるから帰らずに待っててね。で、本題なんだけど……」

 そこで一拍おき見回してみたが、不満顔の者もいるけど静かに聞いてくれている。ほとんどの者は何かの発表があるのではと勘繰ってる顔をしてる。
 期待よりは、『また何か面倒な事をするの~? こっちに振らないでよ~』っていう顔をしている。
 確かに面倒事かもしれないので、気にせず話を続けた。

「今、私用でクラマ達と行動してるんだけど、最後の山場を迎えてるんだ。それで、現在の確認をしてサポートが必要か確認したんだけど、大丈夫そうだね。でね、最後の関門をクリアすると何が起こるか分からないので、もしも俺がいなくなったとしても、これからは自分達の力だけでやっていってほしいんだ」

 予想と違う俺の言葉を別れと取ったのか、ドドドドドーっと怒りの形相で俺に向かって押し寄せてくる【星菓子】の女子一同。

 「エイジ様! 私達を見捨てられるのですか!」「もう戻って来ないのですか!」「まだ女が増えるのですか!」「我が侭は言いませんから、どこにも行かないでください!」「月一とは言いません! 年一でもいいから!」「絶対にどこにも行かせません!」「もうここに監禁しましょう!」「もっと売り上げを伸ばしますから!」「二四時間営業でも構いませんから!」「給料を下げても結構です。いえ、無償でも構いませんから捨てないでください!」「エイジ様!」「エイジ様!」「エイジ様!」……

 他の人達が俺の言葉に反応する前にダッシュで詰め寄ってきた【星菓子】の女子達に囲まれて揉みくちゃにされた。ホント【星菓子】の女性陣って頭の回転が早いよな、一番に反応したもんな。なんでこれで奴隷になってたのか不思議だよ。
 皆、俺がどこかに行ってしまう事をヨシとしないみたいだ……嬉しいんだけどね、ちょっと過剰すぎない? それに、もう女は増えませんって。ちゃんと魔王の娘はペイして来ましたから。

「ちょちょっと待って、まだ話があるからちゃんと聞いて!」
 なんとか【星菓子】組を落ち着かせ、席に戻ってもらった。
 最後まで腕にしがみついてたのはリーダー格のローズさんとアンジェリカさん。
 二人とも顔がニヤついてるよ? なんか趣旨が変わってない? ぐへへへとか言ってるし、どさくさに紛れて何やってんだか。

「初めて聞く人もいると思うんだけど、俺には”衛星の加護”があります。決して”呪い”では無いので間違えないように」
 特にクラマとマイアは、と目で牽制した。

「その”衛星の加護”には今まで何度も助けてもらってて、皆もその恩恵に預かってるんだ。ここの【星の家】だったり森の安全だったり居住区だったりね。他にも不思議だなって思うものは衛星のお陰だと思ってくれていいよ。それでね、その衛星のためになる地図があって、今はそれを回収している所なんだけど、ようやく最後を迎えたんだ。でも、最後だからこそ何が起こるか分からないんで、もし俺が戻らなくても心配しないで今まで通りの生活を続けて欲しいんだ」

「そんなのダメです! 辞めてください! 今まで通りでいいではありませんか!」
 ローズさんの反対意見を皮切りに、否定的な言葉が多々飛んでくる。
 もう全員が辞めてくれと懇願してくる。
 そこの酒飲み四人組みは、もうちょっと興味を示してくれてもいいんじゃないかな。クラマ、マイア、ユー、ゼパイルさんの四人の事だよ。
 君達にしたら他人事なのかな。ちょっと寂しいけど、それぐらいの距離を取ってもらった方が俺も楽なんだけどね。他の人達はちょっと俺に構い過ぎじゃないかな?

「でも、これは俺の加護の問題なんで、やらないわけには行かないんだ。俺の使命なんだ。だから俺一人で行って来る。でも、今までにも何度も助けてもらってる加護だから、みんなも安心して待っててよ。もしかしたら時間が掛かるかもしれないけど、無事に戻って来る予定だから」
「何を言っておるのじゃ! |妾(わらわ)は付いて行くに決まっておるじゃろ」
「ええ、私も付いて行きますわよ」
「もちろん私もね!」

 クラマ、マイア、ユーが付いて来ると言うが、今回は無理だろうな。
 今回の地図巡りでも、近くまでは行けてもアイテムを取る時になると俺一人しか立ち会えないんだ。ペンダントの時もそうだったし、他の宝箱のあった場所でもそうだった。だから、最後になる今回は、付いて来たくても付いて来れないと思っている。最後かどうかも分かんないんだけどね、でも最後の予感はあるんだ。

『別れの挨拶は済みましたか?』

 タマちゃんから確認が来た。
 別にタマちゃんと相談なんかしてないけど、俺の予感は当たってたようだ。
 最後の地図、一枚だけ特別に綺麗な紙に書かれていて、しかも初めは衛星がハッキリと示さなかった地図。
 今まで考えてもみなかったけど、もしかしてこれをクリアすれば、元の世界、日本に帰れたりして。と、思わなくも無い。
 タマちゃんの言う”別れ”が、どの程度のものを言ってるのか分からないが、俺に関わった人達の今後の生活は安泰だと思うんだ。そういう意味では未練は無いんだけど、今までモテなかった俺が、これだけモテる世界には非常に未練がある。
 かと言って、今までこれだけお世話になってる衛星に纏わる地図をコンプリートしないという選択肢は俺には無い。ただ、”別れ”の内容が非常に気になる。

『タマちゃん、挨拶は済んだけど、別れってどれぐらいの……』

 別れの内容の濃さを聞く前に、強制転送させられてしまった。
 目の前に映る光景は、今までいた皆がいた部屋とは違い、真っ白な空間が広がるだけの世界だった。
 壁があるのかどうかもわからない、全てが真っ白な空間だ。
 衛星の力で連れて来られたとしか思えないけど、ここはどこなんだろう。
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