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第09章 コンプリートからの道
第03話 真の森の支配者
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食堂で待っていると、クラマ達が帰って来た。
食堂とは言っても、二テーブルしかない小さな食堂だ。集会所の半分にも満たないスペースしかない。
ここでは作るのが目的であって、食べるのは各自持ち帰って食べる事になっていた。なので、厨房はまぁまぁ大きいのだが、食べる空間は小さなものだった。
ここも改築予定に入れておこうか。
どうせなら、ここで食べた方が手間が省けるもんな。持ち帰りたい人だけ持ち帰って、ここで食べられるようにした方がいいよな。
ま、今はボロボロになって帰って来たベンさん達からの報告を受けよう。
「ベンさん、カンバーさん、お疲れ様でした。どうでしたか?」
「……もう森では負けねぇ」
「……ああ、そんな事は有り得ないな。今なら魔族にでも勝てそうだ」
何があったんだろう。ボロボロになった外見とは裏腹に、自信は付けてくれたみたいだね。クラマとマイアはスパルタなところはあるけど、ちゃんと結果は残してくれるからな。
それにしてもエルダードワーフ製の武具は大したもんだ。装備者がこれだけボロボロに見えるぐらい草臥れていても、汚れはあるが傷はついて無さそうだ。これならキチンと手入れをしてやれば、何十年が保てそうだよ。
「大変だったみたいですね。食事は用意してますが、全員入りきらないので、昨日の集会場に運びましょうか」
「飯か!! そりゃありがてぇ。おい! そんなとこに座り込んでねぇで、さっさと運ぶぞ!」
「そうだぞ、このまま眠りたいだろうが、食事を摂る事で力になるんだ。幸い、いつもより多くの料理がある、無理にでも食べるんだぞ」
屈強とは言えないが、それなりに精悍な男達がエルダードワーフの装備を装着しているが、皆これ以上動きたくないとばかりに寝転んでいた。
知らない人が見たら、ベンさんが倒したように見えなくも無い。
それでも、最後の力を振り絞り、全員で集会所を目指して歩き出した。その足取りは非常に重そうだ。
ただ魔物を倒すだけで、ここまで疲弊するものなのかな。
そんな不思議そうな視線で、料理担当の女性から、今日の試食用に作った料理の入った収納バッグを受け取るベンさんを見ていると、ベンさんから罵声を浴びせられた。
「イージんとこの嫁どもは容赦がねぇな! 儂もたいがい厳しく訓練しているつもりだが、あれにゃ敵わねぇぞ。何度死んだと思ったか」
「私も何度か走馬灯を経験しましたよ。自分のレベルが上がった事が実感できなかったら逃げ出してたでしょうね」
「違げぇねぇ」がっはっはっは。
走馬灯って…それって笑える話なの? ボロボロに疲れながらも晴れやかな笑い声を飛ばすベンさんとカンバーさん。
クラマ達の姿が見えないところをみると、もう集会所に行って飲んでるのかもしれない。
ネフィラーとシルクワームって魔物はベンさんなら余裕をもって倒せるって聞いてたんだけど、もしかして数が多かったとか? 一体、何があったんだろ。凄く聞きたくないんだけど。
ベンさんとカンバーさんが集会所へ向かうので、俺も後を追おうとしたら、料理担当の女性に引き止められた。
料理責任者の女性と、その後ろにも女性が三人いた。今日、何度か顔を合わせて見知った女性たちだ。
料理はこの四人で作っていて、責任者の女性が仕切っていたのだ。レシピは責任者にしか渡していない。
「本当にありがとうございました。こんな美味しい料理は今まで食べた事がありません。食材どころか貴重なレシピまで頂いてしまって、どうやってお返しすればいいのか分かりません」
「いえ、今後この集落で稼がせてもらいますので、その先行投資ですよ、気にしないでください。僕の管理している場所では皆がいつも食べてる料理ですから」
「こ、こんな美味しい料理を毎日ですか!?」
「はい、だから気にしないでください。今後もベンさん達が頑張ってくれたら収入も出るだろうし、食材は週に一度は入荷しますよ」
「わかりました! 彼らの成績が悪ければ食べさせないようにハッパをかけてやります!」
「いやいや、そんな事言わずに食べさせてあげてください。腹が減ったら力が出ないじゃないですか。逆効果ですよ?」
「いいえ、働かざるもの食うべからず、です! クアドラ卿様のお役に立てない者など飢えればいいのです!」
怖ぇ~、ベンさん達、この後たいへんかもな。で? クアドラ卿って誰の事?
「クアドラ卿?」
「はい、『四連月勲章』を受勲されたとお伺いしました。それにより騎士爵も授爵されたとか。ダンダール様によると、『四連月勲章』はこの数百年受勲された者がいない勲章だそうです」
それで勲章から取ってクアドラ卿? いやいや、そんなの大袈裟すぎるから。二つ名にしても重荷にしかならないから。
「あの、お礼をくれると言うなら、その呼び名を辞めてもらえないかな。僕はただの冒険者だし、エイジという名があるんだ。イージと呼ばれる方が嬉しいし、もしエイジと言えるんなら、そう呼んでくれるのが一番嬉しいから」
後ろで控えている女性達と、よく見る呪文のような名前に練習が始まったので、その隙に集会所へと向かった。
もう飽き飽きしてるし、どうせ言えないんだから付き合いきれないって。
集会所に着くと、物凄く静かだった。まだ誰も来てないのかと思ったが、中に入ってみてそうではない事がわかった。
全員、話をするのも辛いぐらい疲れていたのだ。
疲れてないうちの三人は静かに酒を飲んでるし、男達で唯一元気なダンダールさんも一人チビチビ飲んでいた。帰って来た連中が疲れ果てて座っているのも辛そうなのに、黙々と食事を続ける様を見ながら涙ぐみダンダールさん。
料理はダンダールさんも食べているので、今までに食べた事がない、美味しい料理である事は分かっている。
にも関わらず、これだけ美味しい料理にも「美味い!」という感想すら言わずに黙々と食っている。
いつもは騒がしい連中がこれだけいるのに静かな食事風景。
それだけハードな狩りを頑張ってくれたんだと、愛息を見るような暖かい目線を送り、しみじみと、そしてチビチビと飲むダンダールさんだった。
食事を終えたものから順番に寝落ちする狩り担当の面々。
寝落ちした者が冷えないように魔物の毛皮を掛けてあげるダンダールさん。
うんうん、なんかこの集落の絆を感じるね。ちょっと感動しちゃったよ。
で? 俺が感動してる隣で、君らは何をしてんの?
飲むのはいいさ、君達も案内役で疲れたんだろうから。ユーも今日は飲んでんのね、別に構わないさ、同い年の俺だって飲むんだから。
でもね、ダンダールさんの目を盗んで、寝落ちした奴に落書きしちゃダメでしょ! あ~あ、ベンさんなんてリボンまで付けられちゃって。
その高いステータスの無駄使いは辞めた方がいいと思うよ。
まずはマイアの樹魔法だと思うけど、蔦を自在に動かして寝落ちした奴らの顔を自分達の方に向け、ちっちゃいクラマで近寄って顔に落書きしてるけど、スキルの無駄使いにしか見えないのは俺だけか?
ユーにしたって、マイアから小さな種をもらって指で弾いてるけど、俺にはハナクソを飛ばしてるようにしか見えないからね。ペシペシ顔に当たっても起きる気配は無いけど、可哀相で見てられないよ。
「ちょっとお前ら! ダメじゃないか!」
皆が起きないように小声で三人に注意した。
「此奴らめ、せっかく修行してやったというに、さっさと寝てしまいおったので罰を与えておるのじゃ」
「ええ、あの程度のレベリングで根をあげるとは……これでは明日からの修行が思いやられます」
なんだろ…珍しくこの二人がやる気を出してくれてるって事は分かるんだけど、二人がやる気になればなるほどここの人達が可哀相になって来るのは何故だろう。明日もやる予定なんだね、ご愁傷様です。
「私の時の『クラマ&マイア式レベリング教室』より全然温いのにね。ここの人達は気合が足りないよ」
いやいや、あなたは勇者ですから。一般人を同じと考えてはいけませんから。
クラマ&マイア式レベリング教室って、そんなのがあった事にビックリだけど、誰も入りたいとは思わないんじゃない? どうせ、超々スパルタなんじゃないの? ユーにはレベルアップ時の上昇補正があるとはいえ、レベルが一気に上がった時には驚いたもんね。相当ハードなレベリングしてるよね?
まぁ、地図巡りの日程もある程度の予定は想定してたけど、そんな予定はあって無いようなもんだからね。いつまでにやらないといけないって訳でもないし、クラマとマイアの気の済むまでやるといいよ。ここの人達が折れなければだけどね。
さて、こいつらをここにいつまでも置いておくわけには行かないね。更なるいたずらを仕出かしかねないからな。
昨日はここで雑魚寝だったけど、今日は沢山いるから小屋でも出して寝るか。
と、思って三人に声を掛けようとしたら、ダンダールさんから相談を受けた。
「イージ卿、もう寝られるのか?」
「そうですね、今日は外に小屋でも出して寝ようと思ってますので、そろそろ準備をしようかと」
準備と言っても収納バッグから出すだけだけどね。
「少し相談があるのだが、少し時間を取ってもらえんかの」
「はい、そういう事でしたら伺います」
初めての事ばかりだから相談にも応じないとな。
ユーに収納バッグを渡し、小屋を出して先に寝るように言って、クラマとマイアも連れて行ってもらった。
どうせ、相談に参加させても『エイジに任せればいいのじゃ』で終わりだからね。あいつらの言う事なんて分かってるんだよ。
「それで相談とは何でしょうか。利益配分についてですか? それとも、武具が足りませんでしたか? もしかして食材が足りなかったですか?」
ダンダールさんのような重鎮風の人に相談なんて言われたもんだから、何か不手際でもあったんじゃないかと焦ってしまって言い訳がましく色々と並べてしまった。
そんな焦った俺を落ち着かせるようにダンダールさんが優しく声を掛けてくれた。
「いやいや、不足など何もない、十分貰いすぎておる。何故ここまでしてくれるのかは、もう聞くまい。あまりしつこく聞いて臍を曲げられたら大損だからの。相談は別にある」
不足は無かったみたい。焦って損したよ。
「相談というのはの、この森の中には私達の集落以外にも幾つかの集落が存在しておるのだ。多少は交流のある集落もあるが、どこも生活は苦しいく魔物の危険に晒されている。皆、町では住めない過去を持つ者ばかりでな、その者達にもイージ卿の威光に肖れぬものかと。中には盗賊などの不埒者もおるが、止むに止まれぬ事情で住んでいる者もおる。そういう者だけでも何とかならんだろうか」
ふむ、他の集落の手助けもできないか、と。
できなくは無いんだけど、メリットも無いんだよな。他の集落もここに纏めて住んじゃダメなの?
「この集落の規模を大きくして吸収合併すればいいのではないですか?」
「それは愚案だな。規模を大きくすると目立ってしまう。皆、目立たつと不味い者ばかりだからな。小規模の集落を点在させる方がいいのだよ」
それって、ヨウムに頼めば解決できるんだけどなぁ。誰にもバレないようにすればいいんだろ? 居住区でやってるんだけど、ダンダールさん達には納得はできないかもな。
ここは面倒だけど、各集落毎に分けた方が納得してくれるだろうし、トラブルも少なくなるか。
「わかりました、他の集落の様子も見てみましょう。どこか優先的に訪問する集落はありますか?」
「おお、引き受けてくれるか、かたじけない。懇意にしている集落が一つと、知り合いがいる集落が一つある。その二つの集落は細々と隠れ住んでるだけの無害な集落だから目を掛けてやってほしい。他にも集落があるとは思うのだが、数や規模がどれぐらいあるのかは分からん。もし、悪人ではない集落を見つけたら保護してもらえんだろうか」
たくさんあるかもしれないのか。ヨウムに頼めばすぐにでも分かるか。マイアにも分かると思うけど、マイアはクラマとブートキャンプで楽しんでるからやってくれないだろうからね。
詳しい話は翌日に持ち越しにして、今日のところは休む事になった。
寝る前に、衛星に一つ頼んでおく。
食堂の増築と工房の建設だ。ついでに大風呂も頼んでおいた、翌朝には完成してるだろう。
しかし、面倒な事を頼まれちゃったな。多数の集落の管理か、そんな気は無かったんだけどな。こうやって面倒事が増えていくんだよなぁ。
これじゃ、【星の家】周辺だけじゃなくて、森全域が俺の支配域になっちゃうな。クラマとマイアがいてヨウムがいる時点で森では敵無しなんだけどね。
食堂とは言っても、二テーブルしかない小さな食堂だ。集会所の半分にも満たないスペースしかない。
ここでは作るのが目的であって、食べるのは各自持ち帰って食べる事になっていた。なので、厨房はまぁまぁ大きいのだが、食べる空間は小さなものだった。
ここも改築予定に入れておこうか。
どうせなら、ここで食べた方が手間が省けるもんな。持ち帰りたい人だけ持ち帰って、ここで食べられるようにした方がいいよな。
ま、今はボロボロになって帰って来たベンさん達からの報告を受けよう。
「ベンさん、カンバーさん、お疲れ様でした。どうでしたか?」
「……もう森では負けねぇ」
「……ああ、そんな事は有り得ないな。今なら魔族にでも勝てそうだ」
何があったんだろう。ボロボロになった外見とは裏腹に、自信は付けてくれたみたいだね。クラマとマイアはスパルタなところはあるけど、ちゃんと結果は残してくれるからな。
それにしてもエルダードワーフ製の武具は大したもんだ。装備者がこれだけボロボロに見えるぐらい草臥れていても、汚れはあるが傷はついて無さそうだ。これならキチンと手入れをしてやれば、何十年が保てそうだよ。
「大変だったみたいですね。食事は用意してますが、全員入りきらないので、昨日の集会場に運びましょうか」
「飯か!! そりゃありがてぇ。おい! そんなとこに座り込んでねぇで、さっさと運ぶぞ!」
「そうだぞ、このまま眠りたいだろうが、食事を摂る事で力になるんだ。幸い、いつもより多くの料理がある、無理にでも食べるんだぞ」
屈強とは言えないが、それなりに精悍な男達がエルダードワーフの装備を装着しているが、皆これ以上動きたくないとばかりに寝転んでいた。
知らない人が見たら、ベンさんが倒したように見えなくも無い。
それでも、最後の力を振り絞り、全員で集会所を目指して歩き出した。その足取りは非常に重そうだ。
ただ魔物を倒すだけで、ここまで疲弊するものなのかな。
そんな不思議そうな視線で、料理担当の女性から、今日の試食用に作った料理の入った収納バッグを受け取るベンさんを見ていると、ベンさんから罵声を浴びせられた。
「イージんとこの嫁どもは容赦がねぇな! 儂もたいがい厳しく訓練しているつもりだが、あれにゃ敵わねぇぞ。何度死んだと思ったか」
「私も何度か走馬灯を経験しましたよ。自分のレベルが上がった事が実感できなかったら逃げ出してたでしょうね」
「違げぇねぇ」がっはっはっは。
走馬灯って…それって笑える話なの? ボロボロに疲れながらも晴れやかな笑い声を飛ばすベンさんとカンバーさん。
クラマ達の姿が見えないところをみると、もう集会所に行って飲んでるのかもしれない。
ネフィラーとシルクワームって魔物はベンさんなら余裕をもって倒せるって聞いてたんだけど、もしかして数が多かったとか? 一体、何があったんだろ。凄く聞きたくないんだけど。
ベンさんとカンバーさんが集会所へ向かうので、俺も後を追おうとしたら、料理担当の女性に引き止められた。
料理責任者の女性と、その後ろにも女性が三人いた。今日、何度か顔を合わせて見知った女性たちだ。
料理はこの四人で作っていて、責任者の女性が仕切っていたのだ。レシピは責任者にしか渡していない。
「本当にありがとうございました。こんな美味しい料理は今まで食べた事がありません。食材どころか貴重なレシピまで頂いてしまって、どうやってお返しすればいいのか分かりません」
「いえ、今後この集落で稼がせてもらいますので、その先行投資ですよ、気にしないでください。僕の管理している場所では皆がいつも食べてる料理ですから」
「こ、こんな美味しい料理を毎日ですか!?」
「はい、だから気にしないでください。今後もベンさん達が頑張ってくれたら収入も出るだろうし、食材は週に一度は入荷しますよ」
「わかりました! 彼らの成績が悪ければ食べさせないようにハッパをかけてやります!」
「いやいや、そんな事言わずに食べさせてあげてください。腹が減ったら力が出ないじゃないですか。逆効果ですよ?」
「いいえ、働かざるもの食うべからず、です! クアドラ卿様のお役に立てない者など飢えればいいのです!」
怖ぇ~、ベンさん達、この後たいへんかもな。で? クアドラ卿って誰の事?
「クアドラ卿?」
「はい、『四連月勲章』を受勲されたとお伺いしました。それにより騎士爵も授爵されたとか。ダンダール様によると、『四連月勲章』はこの数百年受勲された者がいない勲章だそうです」
それで勲章から取ってクアドラ卿? いやいや、そんなの大袈裟すぎるから。二つ名にしても重荷にしかならないから。
「あの、お礼をくれると言うなら、その呼び名を辞めてもらえないかな。僕はただの冒険者だし、エイジという名があるんだ。イージと呼ばれる方が嬉しいし、もしエイジと言えるんなら、そう呼んでくれるのが一番嬉しいから」
後ろで控えている女性達と、よく見る呪文のような名前に練習が始まったので、その隙に集会所へと向かった。
もう飽き飽きしてるし、どうせ言えないんだから付き合いきれないって。
集会所に着くと、物凄く静かだった。まだ誰も来てないのかと思ったが、中に入ってみてそうではない事がわかった。
全員、話をするのも辛いぐらい疲れていたのだ。
疲れてないうちの三人は静かに酒を飲んでるし、男達で唯一元気なダンダールさんも一人チビチビ飲んでいた。帰って来た連中が疲れ果てて座っているのも辛そうなのに、黙々と食事を続ける様を見ながら涙ぐみダンダールさん。
料理はダンダールさんも食べているので、今までに食べた事がない、美味しい料理である事は分かっている。
にも関わらず、これだけ美味しい料理にも「美味い!」という感想すら言わずに黙々と食っている。
いつもは騒がしい連中がこれだけいるのに静かな食事風景。
それだけハードな狩りを頑張ってくれたんだと、愛息を見るような暖かい目線を送り、しみじみと、そしてチビチビと飲むダンダールさんだった。
食事を終えたものから順番に寝落ちする狩り担当の面々。
寝落ちした者が冷えないように魔物の毛皮を掛けてあげるダンダールさん。
うんうん、なんかこの集落の絆を感じるね。ちょっと感動しちゃったよ。
で? 俺が感動してる隣で、君らは何をしてんの?
飲むのはいいさ、君達も案内役で疲れたんだろうから。ユーも今日は飲んでんのね、別に構わないさ、同い年の俺だって飲むんだから。
でもね、ダンダールさんの目を盗んで、寝落ちした奴に落書きしちゃダメでしょ! あ~あ、ベンさんなんてリボンまで付けられちゃって。
その高いステータスの無駄使いは辞めた方がいいと思うよ。
まずはマイアの樹魔法だと思うけど、蔦を自在に動かして寝落ちした奴らの顔を自分達の方に向け、ちっちゃいクラマで近寄って顔に落書きしてるけど、スキルの無駄使いにしか見えないのは俺だけか?
ユーにしたって、マイアから小さな種をもらって指で弾いてるけど、俺にはハナクソを飛ばしてるようにしか見えないからね。ペシペシ顔に当たっても起きる気配は無いけど、可哀相で見てられないよ。
「ちょっとお前ら! ダメじゃないか!」
皆が起きないように小声で三人に注意した。
「此奴らめ、せっかく修行してやったというに、さっさと寝てしまいおったので罰を与えておるのじゃ」
「ええ、あの程度のレベリングで根をあげるとは……これでは明日からの修行が思いやられます」
なんだろ…珍しくこの二人がやる気を出してくれてるって事は分かるんだけど、二人がやる気になればなるほどここの人達が可哀相になって来るのは何故だろう。明日もやる予定なんだね、ご愁傷様です。
「私の時の『クラマ&マイア式レベリング教室』より全然温いのにね。ここの人達は気合が足りないよ」
いやいや、あなたは勇者ですから。一般人を同じと考えてはいけませんから。
クラマ&マイア式レベリング教室って、そんなのがあった事にビックリだけど、誰も入りたいとは思わないんじゃない? どうせ、超々スパルタなんじゃないの? ユーにはレベルアップ時の上昇補正があるとはいえ、レベルが一気に上がった時には驚いたもんね。相当ハードなレベリングしてるよね?
まぁ、地図巡りの日程もある程度の予定は想定してたけど、そんな予定はあって無いようなもんだからね。いつまでにやらないといけないって訳でもないし、クラマとマイアの気の済むまでやるといいよ。ここの人達が折れなければだけどね。
さて、こいつらをここにいつまでも置いておくわけには行かないね。更なるいたずらを仕出かしかねないからな。
昨日はここで雑魚寝だったけど、今日は沢山いるから小屋でも出して寝るか。
と、思って三人に声を掛けようとしたら、ダンダールさんから相談を受けた。
「イージ卿、もう寝られるのか?」
「そうですね、今日は外に小屋でも出して寝ようと思ってますので、そろそろ準備をしようかと」
準備と言っても収納バッグから出すだけだけどね。
「少し相談があるのだが、少し時間を取ってもらえんかの」
「はい、そういう事でしたら伺います」
初めての事ばかりだから相談にも応じないとな。
ユーに収納バッグを渡し、小屋を出して先に寝るように言って、クラマとマイアも連れて行ってもらった。
どうせ、相談に参加させても『エイジに任せればいいのじゃ』で終わりだからね。あいつらの言う事なんて分かってるんだよ。
「それで相談とは何でしょうか。利益配分についてですか? それとも、武具が足りませんでしたか? もしかして食材が足りなかったですか?」
ダンダールさんのような重鎮風の人に相談なんて言われたもんだから、何か不手際でもあったんじゃないかと焦ってしまって言い訳がましく色々と並べてしまった。
そんな焦った俺を落ち着かせるようにダンダールさんが優しく声を掛けてくれた。
「いやいや、不足など何もない、十分貰いすぎておる。何故ここまでしてくれるのかは、もう聞くまい。あまりしつこく聞いて臍を曲げられたら大損だからの。相談は別にある」
不足は無かったみたい。焦って損したよ。
「相談というのはの、この森の中には私達の集落以外にも幾つかの集落が存在しておるのだ。多少は交流のある集落もあるが、どこも生活は苦しいく魔物の危険に晒されている。皆、町では住めない過去を持つ者ばかりでな、その者達にもイージ卿の威光に肖れぬものかと。中には盗賊などの不埒者もおるが、止むに止まれぬ事情で住んでいる者もおる。そういう者だけでも何とかならんだろうか」
ふむ、他の集落の手助けもできないか、と。
できなくは無いんだけど、メリットも無いんだよな。他の集落もここに纏めて住んじゃダメなの?
「この集落の規模を大きくして吸収合併すればいいのではないですか?」
「それは愚案だな。規模を大きくすると目立ってしまう。皆、目立たつと不味い者ばかりだからな。小規模の集落を点在させる方がいいのだよ」
それって、ヨウムに頼めば解決できるんだけどなぁ。誰にもバレないようにすればいいんだろ? 居住区でやってるんだけど、ダンダールさん達には納得はできないかもな。
ここは面倒だけど、各集落毎に分けた方が納得してくれるだろうし、トラブルも少なくなるか。
「わかりました、他の集落の様子も見てみましょう。どこか優先的に訪問する集落はありますか?」
「おお、引き受けてくれるか、かたじけない。懇意にしている集落が一つと、知り合いがいる集落が一つある。その二つの集落は細々と隠れ住んでるだけの無害な集落だから目を掛けてやってほしい。他にも集落があるとは思うのだが、数や規模がどれぐらいあるのかは分からん。もし、悪人ではない集落を見つけたら保護してもらえんだろうか」
たくさんあるかもしれないのか。ヨウムに頼めばすぐにでも分かるか。マイアにも分かると思うけど、マイアはクラマとブートキャンプで楽しんでるからやってくれないだろうからね。
詳しい話は翌日に持ち越しにして、今日のところは休む事になった。
寝る前に、衛星に一つ頼んでおく。
食堂の増築と工房の建設だ。ついでに大風呂も頼んでおいた、翌朝には完成してるだろう。
しかし、面倒な事を頼まれちゃったな。多数の集落の管理か、そんな気は無かったんだけどな。こうやって面倒事が増えていくんだよなぁ。
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公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
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