衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第09章 コンプリートからの道

第02話 下請け確保

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 大まかな案は伝えたが、既に出来上がってる連中だったので言ってる事は支離滅裂だし集中力は無いしで翌日に改めて話し合う事になった。当然の結果だったと思う。
 あんな状態で約束したって「覚えてない、知らん!」と言われれば終わりだからね。俺は知らん! とは言ってないよ。

 で、議題なんだけど、俺からの提案は『この集落の安全を護る』『特定の魔物を倒してほしい。そのための武具は提供する』『魔物から取ったもので作ってほしいものがある』『買い取りは俺の用意する行商が行なう。その時に欲しい物を行商にリクエストできる』という四つだ。

 『この集落を護る』
 これはヨウムに丸投げだな。

 『特定の魔物を倒してほしい』『作ってほしいものがある』
 これは、蜘蛛や蚕などの糸が獲れる魔物を獲ってほしいのだ。そして、その糸を使って衣服を作ってもらう。
 そのために武具は提供するし、生地を作る機械は、全自動的なやつを衛星に用意してもらう。
 魔物の追い込みもヨウムにお任せだ。居住区でもやってるから慣れたもんだと思う。こちらでは対象の魔物が違うだけだからヨウムならやってくれると思う。
 向こうは食材、こっちは素材。魔物の誘導や転送に安全のための結界はお手の物だろう。

 『売買は俺の用意する行商が行なう』
 これはあの人しかいない。大商人のバーンズさんだ。あっ! でもバーンズさんにはヨウムの転送の事は隠してたっけ。だったら魔族にやらせるか。移動は一瞬なんだし毎日来なくてもいいんだからできるだろ。偶になら俺が来てもいいしね。
 居住区で多めに食材を獲って、こっちで売ればいいんだ。こっちはこっちで生地や衣服の完成品を作って売ったお金で食材を買えばいいんだよね。
 居住区には服屋があるから業務提携してデザインをリクエストしたり、こっちから必要な物をリクエストして、それに応えるべく魔族が頑張る、と。

 うん、完璧なシナリオだ。

 タマちゃん監修の元、言えない部分を隠しつつも内容を提示したものを紙に書き出してもらってベンさんに渡した。
 この場にいるのはうちの側からは俺とクラマとマイアとユー。
 集落側は長のダンダールさんと自警団団長のカンバーさんとベンさんの三人。小さな集落なので、二人でも十分な所、俺の知り合いだという事でベンさんも同席していた。

 ベンさんが一通り目を通して、「ふむ、いい話だ。いや、良すぎて裏を疑ってしまうが……イージが儂らを騙すメリットはないな。それに、イージだしな」との感想付きで長と団長に提案用紙を回してくれた。

 最後の『イージだしな』というフレーズが気になるところだけど、今は長と団長の出す結論が先だ。ここはシリアスな場面だし、いい結論を貰うためにも下手なチャチャ入れは我慢しよう。

 提案用紙に目を通し終えた集落の要職の三人が黙り込む。それぞれに思うところがあり、思案してるようだ。
 ならば、こちらは三人の誰かが話し始めるのを待つしかないか。
 でも、ある程度は昨夜にも言ったんだけどね。酒のせいで皆覚えて無かったんだね。

 まず、口を開いたのはベンさんだ。その間は、誰も口を開かず、俺の申し出の内容をベンさんから出る質問の回答も踏まえて精査しているようだった。

「で? 儂らには有り難い申し出なんだが、イージにはメリットがあるのか? ただの奉仕というのが、儂らには一番信用ならんのだ。確かに、独占できるメリットはあるようだが、それを差し引いてもイージのメリットが少なすぎるように思える。こんな辺鄙な場所で、イージが儲けられる利益を出せるとも思えんし。利益以上に危険な森の中を行商が行き来するデメリットの方が大き過ぎるしな」

 なにをバカな事を。と、俺は思ってしまうが、ベンさんの言い分も尤もだ。
 ならば証拠を見せないとな。

 声を出さないでタマちゃんに言って見本を作ってもらう。
 現物を見ないと納得もしてくれないだろう。あとは狩り場なんだけど、ヨウムの能力の事をどうやって説明するか、だな。

「ベンさんの言い分は尤もだと思うけど、こっちにもちゃんと利益はあるんだ。それも大きな利益がね」
 と言って、タマちゃんに用意してもらった生地を二種類出した。
 おおおお!? と驚く三人。こっちの三人はあまり興味が無いようで、俺から催促して勝ち取った酒を飲んでいた。ユーはハンバーガーセットに夢中だ。飲み物はもちろんコーラでね。

 三人が生地を確かめている間に、完成品も出した。
 シャツとズボンと上着。それからインナーの女性用下着を出して見せた。
 ズボンと上着は普段着でも着れる物だが、蜘蛛の魔物の糸から作られていて、耐斬性や衝撃耐性に優れている。
 インナーの肌着は蛾の魔物の幼生体が作る繭から作られており、手触りが最高に良い。しかも耐水性にも優れていて、型崩れも起こさない滑らかさを持っているから、いくら洗っても皺も付かない優れものだ。

「どうでしょう、それらの衣服に使われる生地までをこの集落で任せたいのですが。もちろん、それに掛かる初期投資はこちらが用意します。その代わり…」
「安く売れ。と、いう事かの」
 今後の流れを説明していると、長のダンダールさんが結論を言ってくれた。それは最終的な結論で、そこに至るまでの説明が抜けているのだが、その説明は後でいいかな。まずは、こちらの思惑を理解してくれているという事で話を進めよう。

「早々にご理解頂き助かります。結論は合ってますが、そこに至るまでには、この集落からも戦力と労働力を出して頂かなければなりませんが」
「ちょ、ちょっと待て! 現状で我が集落は食材調達のための戦力しか無いんだ。今でも不足しているのに、そんな戦力など……」
「落ち着けカンバー。それも踏まえてイージ卿には策があるのだろう。続きを聞かせてもらってもいいかな」

 俺の提案に渋るカンバーさんを嗜めたダンダールさん。
 流石にバカでは長は務まらないか。でも、それ以上に聡明な人みたいだな。なぜ、こんな集落にいるんだろう。
 その疑問にはベンさんが答えてくれた。

「がっはっはっは、不思議だろう、イージよ。このダンダールさんはな、元国王軍の作戦参謀だったんだ。派閥抗争に嫌気が差して軍を引退したんだが、その時に王国軍部の不正を全部押し付けられてよ。今じゃこのざまよ」
「こら、ベン! そんな事は言わんでも良い。あれは、完全なる私の油断だったのだよ。まさか、辞めて一年以上も経ってから、罪を擦り付けて来るとは思わんかったからの。だが、まぁ何とか上手く抜け出せて、今はここで楽しくやっとる。イージ卿が持ってきた美味い話で皆の苦しい生活が改善されれば言う事なしだがの」はーはっはっはっは
「二人とも、楽観的すぎるだろ! ここはもっと慎重に決定せねばならんところだろう!」

 あー、なんか見えたよ、この三人の構図。
 イケイケのベンさんに、智謀に長けているが全体像を大まかに見るダンダールさん。それを慎重派のカンバーさんが手綱を引いて抑えているって感じだな。
 楽しそうじゃないか、ベンさん。いい所に収まったんだね。
 なら、俺も全力で協力させてもらうよ。


「この集落でやってほしい事だけど、まずは狩り。狩り場はここから二キロ先の洞窟。そこにいる蜘蛛系のネフィラーと、蛾の幼生体のシルクワームの繭を確保してほしい」
 地図を出して狩り場の洞窟を示した。

「うーむ……こんな場所に洞窟などあったか?」
 ベンさんの言葉にギクッとしたが、それも当然。そんな場所に元々洞窟など無かったのだから。
 衛星に頼んで洞窟を作ってもらい、ヨウムに頼んでネフィラーとシルクワームを追い込んでもらったのだ。
 作成は衛星、管理はヨウム。無敵コンビに頼んで狩り場を作ってもらったのだ。ヨウムには他の魔物が入らないようにも頼んでいる。

「わ、わかりにくかったんだろうね。だから、分かりやすいように道を作っておいたから」
 道は既に衛生に言って、馬車一台分の道を作ってもらっている。もちろん管理はヨウムがしてくれる手筈になっている。

「狩りにはこの武具を使ってよ」
 そう言ってエルダードワーフ製の武具を二〇揃え出した。
 剣・槍・弓・斧の武器に、防具も一式を二〇組。足らなければ、追加できる事も伝えておく。

「それから、魔物を獲ってきたら、この機械で生地を作って欲しいいんだ」
 衛星に言って機械も出してもらった。
 一辺二メートルのサイコロ型の機械で、右の投入口から素材を入れると左側から生地が出てくるようにしてもらった。
 仕組みなど知らない、全て衛星任せなのだから。誰かが真似て作れるようなものでは無いと思う。

「あと、これも渡しておきます」
 収納バッグも三つ出した。狩猟用、生地用、食材用として渡した。食材用は空だが、行商が来たら中には食材を含めた必要なものが入っているから、空の収納バッグを行商に渡して交換するためのものだと説明した。

「あとは値段設定なんですが、これは協力者の商人に聞かないと分からないので後日でいいでしょうか」

「「「……」」」

「あれ?」
「無駄じゃエイジ。その者どもはさっきから呆けて聞いておらんのじゃ」
「ちょっと刺激が強すぎたかも」
「目を覚まさせましょうか」
 クラマとユーの指摘が入ったけど、マイアがリラックス効果のある花粉で部屋を満たせてくれた。

 さっきから返事が無いとは思ってたんだけど、途中から話に付いて来れなかったんだね。どこからなんだろ、武具を出したあたりから?

「あのー、大丈夫ですか?」
 マイアの花粉の効果があったのか、三人で顔を見合わせている。

「あのー……」
「イージー!! ななななんなのだこの武器は! 儂の目利きなど大した事はねぇが、これだけ凄ぇもんなら儂にだって分かるぞ!」
「こっちの防具もそうだ! 龍に噛まれても傷つかないのではないか!?」
「そ、その機械はどうなっておるのだ! なぜ、糸を入れれば生地が出てくるのだ!」
「収納バッグが三つ~? どれだけ入るか知らねぇが、専用なんて無駄に使いすぎだろ!」
「み、道を作ったと? 二キロの道を一晩でとは……」
「洞窟も知らなかったぞ。いつからあったのだ」

 堰を切ったように口々に叫ぶ三人。
 よかった、ちゃんと話は聞いてくれてたみたいだ。もう一回同じ説明をしなきゃいけないと思ってたけど、これだけ通じてれば十分だ。
 三人が少し落ち着くのを待って話を続けた。

「どうでしょう、質問は多々あると思いますが、一通りやってみましょうか」
 実際にやってみて、嫌なら断ってもらっても構わないと提案してみた。

「断る理由を思いつかんが、実地体験までしてくれるというならこちらも願ったりだ。是非ともお願いしたいの」
「そうですな、見知らぬものも多いですし、いきなりやるよりは遥かにいいでしょう」
「魔物の強さがどれぐらいかも知っておきてえ。これだけの装備を揃えられちゃ、後で出来ませんでしたなんて言えねぇからな」

 チュートリアルツアーには参加してもらえるみたいだね。もう商談成立のフラグは立ってるっぽいんだけど、値段交渉でゴネられても困るんで、もう一押ししておこうかな。

「その前に、当面の食材も用意しますね。ここでは野菜も不足がちでしょうから、料理担当の人がいればその人と話をしましょう。実地体験は時間が掛かりそうだから、料理担当の人との話を終えてから出発にしませんか? どうせなら戦える人全員で体験した方が一度で済むでしょ?」

 この案にも賛成してくれたので、三人で分かれて召集のために部屋を出て行った。
 待つこと暫し。まずは長のダンダールさんが戻って来た。料理担当の人達のようで、男性二人女性一人の三人を連れて来てくれた。

「イージ卿、待たせたの」
「いえ、問題ありません。その人達が料理担当の方ですね。それと、僕の事はイージと呼び捨てにしてください。確かに騎士爵は頂きましたが、照れくさいので。僕は冒険者ですし」
「そうは行きませんの。イージ卿こそ慣れなければなりませんぞ。この国で魔族と対峙できる者など、そう多くは無いのですからの。もっと誇るぐらいでちょうどいいのです」
「そ、そうですか……」

 さすがに卿と呼ばれる事には慣れてないので断りを入れたのだが、あっさりと断られるどころか、逆に慣れろと諌められてしまった。
 郷に入っては郷に従えとは言うが、この世界の仕来たりとは言え、そうそう慣れるものではない。だって、今後はこの集落の人達から『イージ卿』と呼ばれるんだろ? いやいや、恥かしすぎるから。
 勲章のついでにオマケのように付いて来た騎士爵なんだし、別に”卿”と呼ばなくたって、ねぇ。
 【星の家】を任せられるのも国家公認冒険者の肩書きがあるから、態々貴族にならなくてもいいのに。ホント無駄なものを貰ってしまったよ。

 あの時、断れる勇気があれば……
 無理か…無理だね。そんな勇気があれば、今までにももっと『NO』と言えてただろうからね。

 後から来るだろう、ベンさんとカンバーさんはクラマ達に任せ、俺はダンダールさんと料理担当さん達と共に、食堂に向かった。
 さっきは一緒に行動しようと提案したが、料理担当と狩り担当が一緒に行動する意味も無いので、狩り担当はクラマ達に任せたんだ。
 俺に魔物との戦いなんて教える事なんてできないし、三人は武闘派だから教えるのも上手だろうしね。
 クラマとマイアは今までにもキッカ達やユーを教え育てた実績もあるしね。【星菓子】の人達にも魔法での戦闘を教えてたっけ。
 俺が行く方が邪魔になりそうだしね。だって、俺が行くと魔物がいなくなるんだから。

 食堂に着くと、食材用の収納バッグを出してもらい、一週間分の食材を入れておいた。
 この集落は、集落と呼ぶのもおこがましいほどの人口がいるから、結構な量の食材がいるのだ。肉だけじゃなく、野菜や小麦粉や調味料も十分な量を入れてある。
 あと、居住区の食堂で作られているレシピも渡しておいた。
 これで当分は狩りと製造に掛かりきりになってくれるんじゃないかな。

 次に工房予定地に移動した。
 なぜか、料理担当の内、二人が一緒に付いて来る。
 あれ? って思ってるとダンダールさんが説明してくれた。

「料理責任者は、食堂に残った一人だ。この二人は製造と管理の責任者を任せる者だ」
 食堂には女性が残ったので、その女性が料理担当だとして、この男性二人が製造と管理を担当するようだ。
 やっぱりこの世界では識字率や算術では女性が劣るのだろうし、製造に関しても女性が上司だと上手く回らないのだろう。
 その点に関しては、うちの【星菓子】は優秀だね。初めはてんでダメだったけど、今では全員が読み書きと計算ができるもんな。計算に関してはレジスターに頼ってるところが多いけど、二桁の足し算ひき算は全員ができるようになったみたいだしね。

 集落の民家が建ってないはずれの地に、大きめの空き地があった。
 ここが工房予定地だそうだ。今はまだ仮のテントしか建ってない、ただの空き地だ。
 空き地では急いでテントを組まされたであろう、四人の男性が待っていた。この人達も製造係りの予定の人達だそうで、見るからに線が細く、戦闘向きでは無い事が分かった。
 せっかくなので、用意してもらったテントで一緒に研修してもらう事になった。

 研修と言っても、機械に蜘蛛の魔物から取り出した糸袋を入れて、出来上がった生地を取り出すだけ。
 衛星に頼んで、動力はこの世界の物らしく魔石を使うようにしてもらっている。
 その魔石の管理と、仕上がった数の管理と無いとは思うけど、傷物が無いかの点検だ。
 機械は二台、蜘蛛の糸袋用と幼生体の繭用だ。繭の方はそのまま入れると、魔石はそのまま機械の動力にされ、繭の中で蛹になってる幼生体もそのまま破棄される仕組みになってるようだ。
 作業自体は完全に機械任せで簡単なのだ。

 出来上がるまでの時間は一着分でたったの五分なので、数を管理する方や検品係の方が大変だと思う。でも、この作業なら力の無い女性や老人や子供でもできるから、集落総出で出来る作業だと思う。
 後は、建物だな。今晩にでも、人目が無くなった時に建てておこう。もちろん衛星に建ててもらうんだけどね。

 一通りの作業手順の研修を終えると、食堂に戻り、クラマ達の帰りを待つ事になった。
 その間に、レシピを元に作った料理の試食会も行なわれた。
 作られた料理がレシピ通りに作られているか確認をしてほしいと請われたからだ。

 老若男女に一番うけたのはハンバーグ。これは料理係達にも評判がよかった。
 美味しいだけじゃなく、肉をミンチにして合挽きにしても使えるので素材を無駄にしなくても済むから助かると好評だった。
 今回は包丁で細かく切った後に、更に包丁で叩いてミンチにしたらしいので、挽き肉器もプレゼントしておいた。
 ついでにケチャップベースにウスターソースを入れて煮込むハンバーグソースなんかも教えておいた。これはあまり料理をしない俺の数少ないレシピの一つだ。

 そんな、試作、試食会を行ないながら、クラマ達の帰りを待つのであった。
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