転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮

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第二章

8

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別室に案内され、今は扉の前にいる。

「では、これにて失礼いたします」

「はい…」

ガイさんはそう言うと颯爽と来た道を戻っていった。

……これってあれだよね。
自分のタイミングで入れってことよね。
…なら一生入らなくてもいいかしら。

「はぁ…」

思わずため息が出る。
知らない人と…それも殿下なんて高位な方なんかと。

乾いたノックの音。

「失礼します」

「どうぞ」

中からはさっきの冷たい声。
入室の許可を得たので思い切って中に入る。


「……」


中には殿下が書類と無表情でにらめっこをしていた。
殿下の部屋というより応接室に近いような雰囲気だ。


「……お初にお目にかかります。オルティアナ公爵家令嬢、アイシアと申します」

淑女の礼をとる。
しかし、やはり殿下は興味がないのか見向きもしない。


「…どうぞ座って下さい」

書類を見たまま、ただ一言。
言葉通り、殿下の正面に座る。

「失礼いたします」


特に緊張はしていない。
心の中では早く終われと願うばかり。

座ったはいいもの、やはり沈黙が流れる。
申し訳ないが、私には殿下と話すことなどないし、そもそも意気投合できるような種類の話も無い。
なので、私から話かけるなどという選択肢は存在しない。


「……」

書類を見終わったのか、殿下は片付け出した。


「……オルティアナ公爵令嬢」

「…はい」

「何か自分のアピールポイントはありますか」


口を開いたと思ったら、まさかの面接が始まりましたよ。
第一次審査とは思ったけど…。


「…特にありません」

「……………では、特技などは」

「……特にありません」



気を遣ってくれたのかわからないけど、似たような質問をされた。
申し訳ないけど、そんなもの私にはない。
アピールポイントはだらだら生活することができるところ、なんて言えないし。


「…そうですか」


はい、そうです。
面接中も殿下は目を合わせず下を向いたまま。
その方がこちらもありがたい。

少しばかり喉が乾いたので用意されていたお茶を飲む。
私は、昔──前世からの癖で、飲むときは受け皿も持ってしまうのだ。
受け皿からコップを離さずに。
これは本当に小さい頃から続いてしまっていること。
とにかく自分の握力に自信がないし、バランス力も無いので両手で持つことをいつも心がけていた。
普通なら片手で持てるのだろうけど。
私はできない…。


…うん。さすがに王城の人が用意しただけあって凄く高級感がある。
でも…あんまりタイプじゃないかな。
リーシェがいれてくれたほうが美味しい。


「……え」


気のせいかな。
殿下から声が聞こえた気がするけど。
…おそらくくしゃみかあくびか咳払いとかだろう。
気にする必要はないか。


「……夢……か……?」


今度は何か言ってる。
……うん。殿下は疲れていらっしゃるのね。


「……。……オルティアナ公爵令嬢」

「…はい」

「……髪にゴミが」

「…あ……ありがとうございます」


そんなことを気にしていたのか。
見られていないと思ってたけど意外に見ていたみたい。
前髪を触る。
何か小さなものが舞う。


「あぁ……夢ではないのですね」


……?
何とおっしゃいました?


「もう……お会いすることなどできないと思っておりました」


えーっと……。
この部屋には私以外に誰かいるのかしら。
それとも…何か演技とかをしてるのかな。


「……顔をお上げください。オルティアナ公爵令嬢」

「え…?」


言われるままに顔を上げれば、どこか嬉しそうな殿下がいた。
……何かあった?



「!やはり…間違いではないのですね」

「えっ……と。……何がでございましょうか」

「あぁ。お会いでき感激です。もう私は今日にでも死んでしまうのではないのでしょうか」

「…?」

いや、あの。
突然何を言い出すのこの殿下は。
……きっと疲れているのね。そうに違いないわ。


「その困惑された顔も変わらず………なぜ私がこの国の王子に"転生"したのかようやくわかりました」

「え」

今、"転生"と言った?
気のせい……よね?


「いえ。気のせいではございません。"転生"と確かに言いました」


怖!
心を読まれてる…!?


「相変わらず思ったことが表情にでてしまうのですね」

「相変わらず……?」

「転生しようと…貴女は結局何も変わらない。今はそれがどれほど嬉しいか」

「はい?」

ちょっと、勝手に一人で世界を作らないでくれないですかね?
私何一つ理解してないのですが。


「あの……えっ?」

「まだ…余韻に浸っていたいところですが……仕方ありません」

「…えっ…と?」


殿下の死んだ表情はどこへ?
今目の前にいるのはキラキラオーラ全開の微笑む殿下なのですけど?


「やっと私の願いが叶う……」

「願い?」

「はい」

え、待って。
凄く凄く嫌な予感がする。
何一つ現状理解はしていないけど、本能が告げる。
────この男は危険だと。


「…………これで失礼します」

うん。逃げよう。
大丈夫。殿下は疲れているだけよ。
だから休む時間が必要なの。

そう言い聞かせて席を立った。
扉へ向かいたかったのだが、何故か殿下に腕を優しく掴まれる。
そして、引き止められたかと思うと、いきなり殿下がひざまずいた。


「……逃しませんよ。我が愛しきお嬢様」











────今なんて?

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