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第三章
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しおりを挟む知らなかった。
自分にとっての何気ない行動が、彼にとっては大切なものだったなんて。
「……」
「私にとってお嬢様は常に光であり生きる意味でした。大袈裟などではなく、本当に」
「……私はそんなたいそれた人間じゃ」
「私にとってはどんな人間よりも価値のある唯一の存在です」
そういう言葉は嬉しい。
でも…言ってしまえばそれだけだ。
私にとっては正直、今も変わらず赤月は赤月だし。
もっといえば彼は王子になってもう赤月のように接しられないのだから距離は遠く感じる。
「お嬢様、お願いがございます」
「…?」
「お嬢様が、今世でのんびりしたいというのもわかります」
「…」
「なので…。少しだけ時間をいただけないでしょうか。お嬢様、貴女に私を新しい目で見ていだきたいのです」
「新しい目って……恋愛対象として
?」
「はい」
「…お願いって…今は貴方のほうが立場が上なのだから命ずれば良いのに」
「それだけは断固拒否にございます。私にとってお嬢様はお嬢様。私などが命ずるには値いたしません」
「何を言ってるの…それは前世でしょ。今は違う…立場は変わったの」
「…そうですね。立場が変わって嬉しいこともあります。お嬢様に恋をしても許される。ですが、一時も離れず傍にお仕えすることは叶わなくなりました。……立場が変われば人は変わる。前世でも今世そういう人間は見てきました。ですが、私はお嬢様の前では常に赤月としていたいのです」
「……」
「貴女ががくれたこの名前を大切にしたいのです。そうでなければ、私に今生きる価値はありませんから」
大袈裟と思っていた言葉は、何故か全て胸にすとんと落ちてくる。
納得しているわけでは決して無いのだが、どこかで受け入れたいと思っている自分がいる。
前世の当たり前は今世は通じないと思っていたから。
それを許してくれる人がここにいるのはどんなに落ち着くことか。
……私も、少しずつ赤月に向き合わなくてはならない。
「……時間ってどれくらい」
「そうですね。お嬢様が学園に入られるまでのうち1年間。私に時間をいただきたいです」
「1年…」
それが短いのか長いのか、私にはわからない。
「どうか、私をその間恋愛対象として見てください。私も私なりにお嬢様を振り向かせてみせますので」
でも。
彼が決めたことで、前世今世通して初めての願いだ。
それを抜きにしても、私も向き合う時間が欲しい。
新しく知った彼の一面含め、今世は今世として。
「…わかったわ」
「!…ありがとうございます……!!」
「…1年間、赤月……殿下の婚約者候補としています」
「…はい…よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
ここからまた、新しく始めよう。
この先どうするかも考えないと。
のんびりしたいという気持ちがなくなったわけではないし。
今でも王妃は嫌だ。
それでも。
赤月と向き合うことは必要なことなのだ。
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