43 / 74
第五章
42
しおりを挟むあれからというもの、私による料理授業が始まった。
最初は卵もろくに割れなかったジュゼッペ様が今では一人でクッキー等の簡単なお菓子なら作れるようになった。
本人も成長は感じれているらしく、とても喜んでいた。
成長過程は割愛させてもらう。
これはジュゼッペ様には言っていないのだが、彼女は料理に関して磨けば光る原石だ。
簡単に言えば、才能があるということだがそんなレベルではないと思う。
初めて少しは見守るこっちも不安しかなかったのだが、クッキーを作り上げたときは見た目よし味よしの文句の付け所のない完成度だった。
将来が楽しみである。
そして、時は少し過ぎ────。
婚約者候補となってから5ヶ月が経った。ほとんど半年に近い。
未だにジュゼッペ様は婚約者候補としていてくれるのだが、相手である王子に興味がないのは一目瞭然だった。
今日はジュゼッペ様とお茶会をしている。
「アイシア様」
「はい」
「本当にありがとうございます。お陰様で料理の知識が少しずつ増えてきて…とても嬉しいです」
「そう言ってもらえて何よりですよ」
「ふふ。…さて本題にいきましょうか?」
ジュゼッペ様の何とも言えぬ笑み。
「いや…あの…早すぎでは」
「まぁ!早すぎも何も。今日はもうそれしか話すことがないのですから大丈夫ですわよ?」
「…はい」
「料理を教われるのはとてもありがたいことですわ。ですが、婚約者候補…いえ、婚約者という自覚をお持ちくださいませ。殿下との時間も大切にしなくては…」
「いやいやいや、まだ婚約者候補ですよ!」
「まだ?そんなわけありませんわ。私は肩書きのみ婚約者候補ですから。アイシア様こそ殿下の婚約者ということに今更何もおかしくはないでしょう?」
「そうですけど…」
「それに。私は今にでも婚約者候補という肩書きも捨ててしまって良いのですから」
そう。
ジュゼッペ様がまだ婚約者候補の肩書きを持っているのには何の利益も無い。本人が王子と結婚し王妃になりたいという願望も無いので、言ってしまえば彼女にとってそれは何の価値もない肩書きでしかない。
それなのに、捨てずにいてくれるのは主に2つの理由がある。
1つはギャルツ家に帰らずここで婚約者候補として暮らすことができるということ。
ギャルツ家にどうしても戻りたくないジュゼッペ様とどうするかを考えた結果の案でもある。
そのさらに先をどうするかは検討中だ。
そしてもう1つ。
これは完全に私のためだと思う。
私にこの婚約について考える時間をジュゼッペ様はくれた。おそらく、私がこの婚約を捨てた場合はジュゼッペ様がその場所に入るのだと思う。
ジュゼッペ様には少しの事情を話しているから、私の立場を良く理解してくれている。
事情といっても、婚約者にならずのんびりしたい、王妃は自分に向いてないなど私の心境を明かしているだけだ。今ではそこまで話せるような仲へと進展していた。
「まぁ、こんな雑な前置きもここまでにしておいて」
「自分で雑って言った…」
「本当の本題に入りましょう。ここ5ヶ月でアイシア様。貴女の気持ちはどう変わったのです?是非お聞かせくださいませ」
「…はい」
今日は私の気持ちをジュゼッペ様と少し整理しようと思っていた。
私の気持ちも変わってきてしまったみたい。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。
水鳥楓椛
恋愛
男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました
有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。
魔力が弱い私には、価値がないという現実。
泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。
そこで目覚めた彼は、私を見て言った。
「やっと見つけた。私の番よ」
彼の前でだけ、私の魔力は輝く。
奪われた尊厳、歪められた運命。
すべてを取り戻した先にあるのは……
【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。
buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ?
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる