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第八章
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しおりを挟むルディを探しに執務室へ向かった。今日も仕事をしている可能性は大きい。
その途中でガイさんに会った。
「アイシア様。ご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「殿下のこと、よろしくお願い致します」
「………はい」
ガイさんはかなり昔からルディのお世話をしてきたと聞いた。ルディの第二の親と言っても過言ではないだろう。
「殿下でしたら先程仕事を終え、庭園に行かれました」
「そうですか…ありがとうございます」
どうやら私達家族水入らずの時間を邪魔するのは申し訳ないと思ったようで、一人の時間を過ごそうとしていたみたいだった。それなら私は邪魔かと思ったが…。
「いえ、殿下は一人でいるよりアイシア様との時間を好まれますよ」
そう優しく教えてくれたので、それを信じてルディの元へ足を運んだ。
さすが王家の庭園。とても豪華だ。花々に囲まれる中心地には休息所のようなものがある。そこにルディはいた。
「……シア」
そう呟いたのが耳に入ったので応じた。
「何かようですか?ルディ」
「……え。シ、シ、シア!何故…?家族との時間は…?」
「しっかり過ごせたわ。…それで、ルディを呼びに来たの」
「……私を?」
「そう。……両親への挨拶、今なら楽かなと思って」
オルティアナ家の領地は王都からは少し離れている。簡単に行き来できる距離ではないから、多忙なルディが挨拶をするなら、王都に来ている今しかないと思った。
「…なるほど」
「まぁ……私も後で国王陛下と王妃様に挨拶をしに行くわ」
相手が相手なので緊張するが。
「……シア」
「…?」
手招きをされたのでルディの隣へ座る。
「…休みたいのなら今日でなくても良いけれど」
「休む…そうですね。シアこそ休まなくて大丈夫なのですか?昨日の今日なのに」
「うーん……あまり疲れてはいないからな」
怒涛の一日だと言うことは重々承知なのだが、体は軽い。
恐らく、拐われたり危機にさらされた事よりもルディと共に居れる未来を約束できたから安心しているからだと思う。
「私は平気よ」
「…あまり無理をしないで下さいね」
「それはルディにも言えることでしょう」
私達の執事とお嬢様という関係はほとんど消え去った。少し残っているとするのなら、お互いの口調や雰囲気だけだろう。
「……シア、目…」
そう言って、私の目元に触れた。昨日負った傷を悲しそうに見つめる。
「…あぁ。大丈夫よ」
「………」
見た目ほど痛くない。それに少しの傷だ。化粧で隠そうと思えば隠せる。
「…ルディ?」
「………」
その瞬間、ルディは私の左目元優しく唇を落とした。
「え、…え?」
「………」
思わぬ行動に動揺を抑えられないが、ルディはそのまま私に口づけをした。
「……んっ」
「シア…可愛い。もう一度───」
「ちょっと待っ…!」
「……」
私の言葉を遮り唇を塞ぐ。
余りにも甘く長い口づけに声が漏れてしまう。
「…ん、っん」
「…シア」
嬉しそうに熱を帯びた目で見つめてくるが、さすがにこれ以上は私が持たないので持てるだけの力で頑張って引き剥がした。
「ルディっ!ちょっと、これ以上は」
「…何故?婚約者なのだから」
私の話をまるで聞かないルディに私は動揺を隠せなかった。
「時と場所を考えて…!」
「……時と場所を考えれば良いのですね?」
「……!」
そう言うとルディは妖艶に微笑んだ。
「……い、いきなりどうしたの」
「いきなりも何も。最初にしてきたのはシアの方ですよ?」
「え…」
「これは昨日の分のお返しです」
最初?それって……。
「あ、あれは忘れて…」
「一生忘れませんよ。今まで我慢していた分どうしようかと考えましたが、シアの方から何度でも口づけをすると言ってくれてありがとうございます」
「ん?ちょっと待って何か違う」
「いえ?シアも私と同じ気持ちでしょう?」
いや、それは何に対してなのか。わざと伏せられた気がしてならない。
「………」
「まさか…違うのですか?」
「違わないけど…」
「それなら良かった」
「………ソウデスカ」
してやられた気がした。
「……私は恋愛初心者なのに」
「知っていますよ。だからこそ、シアに捨てられないように私はアプローチし続けますね。もう気にするものはないのですから」
「………」
昨日の様子から一変。
「前世含め、今までの想いを受け取ってください」
「……はぁぁ」
どうやらとんでもなく都合の良いように解釈されてしまったようだ…。
いや、私もルディと一緒にいる事を望んでいるから良いのだけれど。
「…お手柔らかに、お願いするわ。ルディ」
「喜んで、シア」
まぁ、策士な所もルディの魅力の一つだ。
「さて、行くか」
「お手をどうぞ。シア」
「……喜んで」
それでも、今もこれからも一緒にいれるのだ。それは嬉しい。
想い合える幸せを知れて良かった。
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