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第52話 皆で労働する楽しさ
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伐採する範囲が決まると、ロウキとミルはすぐに伐採作業と、
切り倒した木々をまとめる作業を始めてくれた。
ありがたいことに、その側にはガーネットもいてくれて、
伐採後に無造作に置かれた木々を次々と飲み込み、
木材へと加工し、きちんと整理整頓までしてくれていた。
ここまで木材が増えてくると、保管場所があった方がいいなと思い、
「薪置き場みたいなものを作ればいいんじゃないか?」と考える。
邪魔にならない位置を選び、以前見たことのある薪置き場をイメージして生成することにした。
「……クレオ!」
「それが出来たら、オイラの出番だね!」
「さっきも頼んだばかりなのに、ごめんな?」
「大丈夫だよー!」
薪置き場が完成すると、すぐにシトリンがやってきて、強化と補強を施してくれた。
そのおかげで、かなり立派な薪置き場が完成し、
以前から放置していた加工済みの木材も、皆で手分けして運ぶことになった。
その時だった。
スライムたちが何を思ったのか一列に並び、まるでバケツリレーのように木材を運び始めたのだ。
その光景があまりにも可愛すぎて、思わず悶絶してしまう。
こういうの、なんだか野外活動みたいで楽しいな。
小学生の頃、キャンプ場でカレーやサラダを作って食べたことを思い出し、
懐かしい気持ちになりながら作業を続けた。
正直、魔法を使えば一瞬で終わる作業なのかもしれない。
それでも、たまには自分の手でやってみたかった。
農家の人たちが、どれほど大変な思いをしてお米を育て、俺たちに届けてくれていたのか。
そのありがたみを知っているからこそ、異世界でも魔法だけに頼らず、ちゃんと頑張りたかった。
そんな思いで作業を続けること数時間。
トラロープで囲われた範囲の伐採は無事に完了した。
皆が協力してくれることのありがたさを噛み締めつつ、次に何をすればいいのかを――
優秀なエマに聞くことにする。
【伝達します。
田んぼ作りの第一歩は、伐採した土地を平らにする整地作業を行います。
次に水を引くための水路を作り、水が漏れないよう周囲を畔で囲います。
最後に、水を入れて土を泥状にする代掻きを行えば、田植えの準備は完了です。】
「ああ、畔って、水が出ないようにする土手のことだよな?
なんとなく見たことある気がする。ありがとう、エマ!
じゃあ、まずはこの土地を平らにしないとな。」
説明を受けた俺は、鍬《くわ》を手に取り、凸凹した地面を少しずつ削り始めた。
だが、大小さまざまな石や木の根が邪魔をして、これは時間がかかりそうだと額の汗を拭う。
すると、それを見ていたミルが、根こそぎ引き抜いてくれたおかげで作業は一気に楽になった。
それでも時間がかかっていると判断したのか、
ロウキが痺れを切らし、自分の魔法で一反の範囲にある石や根を一掃してくれた。
「ヨシヒロよ……お前では遅い。我らがやる。
おい、スライムたち、全員集合だ」
「はーーーい!」
「よいか。今からこの凸凹した土地を平らにする。
全員巨大化して、徹底的に整地せよ。」
「分かったー!」
「……やっぱりロウキ、現場監督だよな」
覚悟していた通り、自分一人では今日中に終わらなかっただろう。
だが、ロウキの号令で集まったスライムたちは次々と巨大化し、整地作業を開始する。
ラピスをはじめとする約20匹のスライムたちが、ぷるぷると柔らかな体を波打たせながら地面に密着し、
凹凸を押し潰すように均していく姿は、可愛いだけでなく、その力強さに思わず感心してしまった。
彼らが通った後の地面は、まるで舗装された道路のように滑らかになっていた。
「ヨシヒロ様! ロウキ様! このくらいで大丈夫ですか?」
「うむ。皆、ご苦労だった。少し休んでおれ」
「はーーい!」
作業開始から一時間も経たないうちに、整地は完了。
田んぼになる予定の土地は、惚れ惚れするほど綺麗に整えられていた。
今日はここまででも十分じゃないか、と思ったけど、
まだ日が落ちるまで少し時間がある。
できるところまでやっておこうと、次の工程へ進むことにした。
【整地作業が完了しました。次は水路の確保です】
「水路か。湖から田んぼまで水を引けばいいんだよな?」
【はい。距離は約10mです。
深さ15~20cm、幅50cmほどで掘り進めるのが適切です】
「深さ20cm、幅50cmね……
じゃあ、まずは幅の指定からいくか。
横幅50cmの範囲に印を付けよ、Terramark《テラマーク》!」
――シュパッ!
「みんな! ロープが張られた範囲を掘っていくよ!
えーっと……物差し、物差し……クレオ!
はい、これは物差し。長さを測る道具で、ちょうど20cm。
これと同じ深さまで掘ってね!
そんで、土を運ぶネコがいるな……」
「……んにゃあ?」
「あ、猫ちゃんじゃないのよ。大丈夫、大丈夫。
うるさくしてごめんね……クレオ!」
――ゴトンッ。
「ミル! 水路を掘って出た土を、この一輪車に入れて田んぼの側まで運んでくれるか?
あとで使うみたいだから!」
「あるじ、わかった!」
指示を出し終えると、作業開始。
俺は鍬で掘り進め、ユキとクロが石や邪魔なものを取り除いてくれる。
ロウキは鋭い爪で土を掘削し、その動きはまるでショベルカーのようで、ちょっと可愛い。
スライムたちは掘り出した土を体に取り込み、田んぼの方へ運んでいく。
それを見て、もうネコいらないんじゃないか?なんて思いながら、
自発的に動いてくれる皆の姿に、改めて感謝の気持ちが湧いてきた。
もちろん、ミルも一輪車で負けじと土を運んでくれている。
協力して作業するって、本当に素晴らしい。
前世では、基本ワンオペだったからな。
その差は、天と地ほどもあった――
◇
作業開始から30分も経たないうちに、水路は完成した。
湖の側を数センチだけ残し、水が流れ出さない状態で作業を止める。
そこまでやり切った俺は、思わずドシンと地面に座り込んだ。
前世では、ここまでの肉体労働をしたことがない。
さすがに疲れたな……と思っていると、ミルが家の方へ駆け出していった。
十分ほどして戻ってきたミルの手には、
俺がいつも疲れた時に飲んでいるドリンクのボトルが握られていた。
「あるじ、つかれた。これ、のんで」
「ミルーーーー! 大好き! ありがとう!」
「おれも、あるじ、すき!」
まさか、わざわざ飲み物を取りに行ってくれるとは思わず、
胸がじんわりと温かくなる。
なんて優しい子なんだろう。世間に自慢したいくらいだ。
ボトルの蓋を開け、喉を鳴らして飲み干す。
冷たくて気持ちいい。
これなら、もう少し頑張れそうだ。
「次は畔か……
その前に、最後の10cmを掘って、水がちゃんと流れるか確認しないとな。」
そう言って湖の側を掘り進め、最後のひと掘り。
すると、水は勢いよく水路へと流れ込み、そのまま田んぼ予定地へと到達した。
よし、と頷いたところで、
俺は水を一旦せき止める必要があると判断し、
ガーネットに薪置き場の木材を水路幅に合わせて加工してほしいと頼んだ。
「任せて、ヨシヒロ様!」
「ありがとう、ガーネットー!」
「強度も足しておくねー!」
ガーネットにイメージを伝えてお願いすると、数秒で板が出来上がり、
すぐさまシトリンがその板を強化してくれた。
俺はその板を持って湖の側へ戻り、ぐっと力を込めて水路に差し込む。
すると、水はぴたりとせき止められた。
「二人とも、いい仕事してくれたな」
そう思いながら、次の工程へと進む。
「畔を作る……畔塗り、だっけ?」
【はい。現代の日本では機械で行う方法と、昔ながらの手作業がありますが、
時間短縮のため、今回は土魔法による生成をおすすめします】
「なるほど。じゃあ、どんな感じでやればいい?」
【土魔法で畔を即座に生成できます。
魔法名は “Terramur《テラミュール》” です】
「了解。じゃあ……いきますか」
次の作業は、田んぼの周囲に畔を作る工程だ。
手作業だとかなり時間がかかるらしく、エマは魔法の使用を勧めてくれた。
必要な魔法を教えてもらい、唱えようとしたその時、
ぴょこぴょこと跳ねながらラピスがやって来た。
田んぼの近くに集めていた土を見ながら、ラピスが尋ねる。
「ヨシヒロ様!
魔法を使うなら、さっき運んだ土はどうしましょうか?」
「あっ……本当だ。
田んぼの中に入れて、一緒に混ぜようか」
「分かりました! では、僕たちがやります!」
「ありがとう、ラピス!」
ミルやラピスたちが集めてくれた土の扱いを聞かれ、
うっかり忘れていたことに気づく。
田んぼの中に一緒に混ぜようかと伝えると、
ラピスたちはぴょんぴょん跳ねながら土の元へ向かい、すぐに移動作業を始めてくれた。
その様子を見届けてから、俺は田んぼの前に立ち、土魔法を唱える。
「では、改めまして――
畔を生成せよ……“Terramur《テラミュール》”!」
――ボコッ
――ボコボコッ
「おおっ! 土が盛り上がってきた!
すご……しかも湿ってる?
粘土みたいに固まる感じか。ちゃんとしてるなぁ!」
Terramurを唱えると、田んぼの縁から粘土状の土が次々と盛り上がり、
やがて高さ20センチほどの畔が形作られていった。
試しに触ってみても、ぽろぽろ崩れることはなく、しっかりとした硬さを保っている。
これを全部手作業でやるとしたら……
確かに、相当な時間がかかっていただろうな。
エマに感謝していると、土を田んぼに戻し終えたラピスたちも戻ってきた。
「終わりました! ヨシヒロ様!」
「みんな、ありがとうな!」
【お疲れ様です。次は 代掻き の工程に移ります。
泥に入っても構わない方は、田んぼの中へ入ってください。
水を張り、土を細かく砕いて平らにする作業です。
これにより、田植えがしやすくなり、稲の根がしっかり張ります】
「なるほど……
じゃあ、まずは水を入れようか!」
「はーい!」
エマの指示に従い、せき止めていた板を外す。
すると、太陽の光を浴びてきらきらと輝く聖水が、勢いよく田んぼへ流れ出した。
先に田んぼで待機していたスライムたちは、溺れないよう体を少し大きくし、
ぷるぷると震えながら土をほぐし始める。
……そんなことまでできるのか。
恐るべし、スライムの力。
ある程度水が入ったところで、再び水をせき止めた。
「みんな、ありがとう!
無理せずやってくれよー!」
「大丈夫だよー! ヨシヒロ様ー!」
「わぁ……綺麗だなぁ……」
声をかけると、ラピスをはじめ、シトリン、ガーネット、
ルドやムーンまでが「大丈夫だよ」と返してくれた。
すると、周囲のスライムたちも反応するように、
体の色をピカピカと点滅させ始める。
前にも見た光景だけど、やっぱり何度見ても綺麗だなぁ。
そんなスライムたちの働きによって、土は細かく砕かれ、水と混ざり合い、
まるで自然のミキサーのように、あっという間にどろどろの泥状になっていった。
【土が十分にほぐれました。
次に、田んぼの表面を平らにならします】
「みんな、よろしくな!」
「はーーーいっ!」
エマの指示を聞いたラピスたちは、今度は体を滑らせるように使いながら、
田んぼの中を丁寧に均していく。
スライムが、ここまで優秀だなんて――
一体どれだけの人が知っているんだろう。
俺のワガママにも付き合ってくれて、泥だらけになりながら、一生懸命働いてくれている。
そんな彼らを「初心者向けだから」と言って討伐するなんて、絶対にあってはならない。
そう強く思いながら、
俺はスライムたちの作業を、見守っていた――
切り倒した木々をまとめる作業を始めてくれた。
ありがたいことに、その側にはガーネットもいてくれて、
伐採後に無造作に置かれた木々を次々と飲み込み、
木材へと加工し、きちんと整理整頓までしてくれていた。
ここまで木材が増えてくると、保管場所があった方がいいなと思い、
「薪置き場みたいなものを作ればいいんじゃないか?」と考える。
邪魔にならない位置を選び、以前見たことのある薪置き場をイメージして生成することにした。
「……クレオ!」
「それが出来たら、オイラの出番だね!」
「さっきも頼んだばかりなのに、ごめんな?」
「大丈夫だよー!」
薪置き場が完成すると、すぐにシトリンがやってきて、強化と補強を施してくれた。
そのおかげで、かなり立派な薪置き場が完成し、
以前から放置していた加工済みの木材も、皆で手分けして運ぶことになった。
その時だった。
スライムたちが何を思ったのか一列に並び、まるでバケツリレーのように木材を運び始めたのだ。
その光景があまりにも可愛すぎて、思わず悶絶してしまう。
こういうの、なんだか野外活動みたいで楽しいな。
小学生の頃、キャンプ場でカレーやサラダを作って食べたことを思い出し、
懐かしい気持ちになりながら作業を続けた。
正直、魔法を使えば一瞬で終わる作業なのかもしれない。
それでも、たまには自分の手でやってみたかった。
農家の人たちが、どれほど大変な思いをしてお米を育て、俺たちに届けてくれていたのか。
そのありがたみを知っているからこそ、異世界でも魔法だけに頼らず、ちゃんと頑張りたかった。
そんな思いで作業を続けること数時間。
トラロープで囲われた範囲の伐採は無事に完了した。
皆が協力してくれることのありがたさを噛み締めつつ、次に何をすればいいのかを――
優秀なエマに聞くことにする。
【伝達します。
田んぼ作りの第一歩は、伐採した土地を平らにする整地作業を行います。
次に水を引くための水路を作り、水が漏れないよう周囲を畔で囲います。
最後に、水を入れて土を泥状にする代掻きを行えば、田植えの準備は完了です。】
「ああ、畔って、水が出ないようにする土手のことだよな?
なんとなく見たことある気がする。ありがとう、エマ!
じゃあ、まずはこの土地を平らにしないとな。」
説明を受けた俺は、鍬《くわ》を手に取り、凸凹した地面を少しずつ削り始めた。
だが、大小さまざまな石や木の根が邪魔をして、これは時間がかかりそうだと額の汗を拭う。
すると、それを見ていたミルが、根こそぎ引き抜いてくれたおかげで作業は一気に楽になった。
それでも時間がかかっていると判断したのか、
ロウキが痺れを切らし、自分の魔法で一反の範囲にある石や根を一掃してくれた。
「ヨシヒロよ……お前では遅い。我らがやる。
おい、スライムたち、全員集合だ」
「はーーーい!」
「よいか。今からこの凸凹した土地を平らにする。
全員巨大化して、徹底的に整地せよ。」
「分かったー!」
「……やっぱりロウキ、現場監督だよな」
覚悟していた通り、自分一人では今日中に終わらなかっただろう。
だが、ロウキの号令で集まったスライムたちは次々と巨大化し、整地作業を開始する。
ラピスをはじめとする約20匹のスライムたちが、ぷるぷると柔らかな体を波打たせながら地面に密着し、
凹凸を押し潰すように均していく姿は、可愛いだけでなく、その力強さに思わず感心してしまった。
彼らが通った後の地面は、まるで舗装された道路のように滑らかになっていた。
「ヨシヒロ様! ロウキ様! このくらいで大丈夫ですか?」
「うむ。皆、ご苦労だった。少し休んでおれ」
「はーーい!」
作業開始から一時間も経たないうちに、整地は完了。
田んぼになる予定の土地は、惚れ惚れするほど綺麗に整えられていた。
今日はここまででも十分じゃないか、と思ったけど、
まだ日が落ちるまで少し時間がある。
できるところまでやっておこうと、次の工程へ進むことにした。
【整地作業が完了しました。次は水路の確保です】
「水路か。湖から田んぼまで水を引けばいいんだよな?」
【はい。距離は約10mです。
深さ15~20cm、幅50cmほどで掘り進めるのが適切です】
「深さ20cm、幅50cmね……
じゃあ、まずは幅の指定からいくか。
横幅50cmの範囲に印を付けよ、Terramark《テラマーク》!」
――シュパッ!
「みんな! ロープが張られた範囲を掘っていくよ!
えーっと……物差し、物差し……クレオ!
はい、これは物差し。長さを測る道具で、ちょうど20cm。
これと同じ深さまで掘ってね!
そんで、土を運ぶネコがいるな……」
「……んにゃあ?」
「あ、猫ちゃんじゃないのよ。大丈夫、大丈夫。
うるさくしてごめんね……クレオ!」
――ゴトンッ。
「ミル! 水路を掘って出た土を、この一輪車に入れて田んぼの側まで運んでくれるか?
あとで使うみたいだから!」
「あるじ、わかった!」
指示を出し終えると、作業開始。
俺は鍬で掘り進め、ユキとクロが石や邪魔なものを取り除いてくれる。
ロウキは鋭い爪で土を掘削し、その動きはまるでショベルカーのようで、ちょっと可愛い。
スライムたちは掘り出した土を体に取り込み、田んぼの方へ運んでいく。
それを見て、もうネコいらないんじゃないか?なんて思いながら、
自発的に動いてくれる皆の姿に、改めて感謝の気持ちが湧いてきた。
もちろん、ミルも一輪車で負けじと土を運んでくれている。
協力して作業するって、本当に素晴らしい。
前世では、基本ワンオペだったからな。
その差は、天と地ほどもあった――
◇
作業開始から30分も経たないうちに、水路は完成した。
湖の側を数センチだけ残し、水が流れ出さない状態で作業を止める。
そこまでやり切った俺は、思わずドシンと地面に座り込んだ。
前世では、ここまでの肉体労働をしたことがない。
さすがに疲れたな……と思っていると、ミルが家の方へ駆け出していった。
十分ほどして戻ってきたミルの手には、
俺がいつも疲れた時に飲んでいるドリンクのボトルが握られていた。
「あるじ、つかれた。これ、のんで」
「ミルーーーー! 大好き! ありがとう!」
「おれも、あるじ、すき!」
まさか、わざわざ飲み物を取りに行ってくれるとは思わず、
胸がじんわりと温かくなる。
なんて優しい子なんだろう。世間に自慢したいくらいだ。
ボトルの蓋を開け、喉を鳴らして飲み干す。
冷たくて気持ちいい。
これなら、もう少し頑張れそうだ。
「次は畔か……
その前に、最後の10cmを掘って、水がちゃんと流れるか確認しないとな。」
そう言って湖の側を掘り進め、最後のひと掘り。
すると、水は勢いよく水路へと流れ込み、そのまま田んぼ予定地へと到達した。
よし、と頷いたところで、
俺は水を一旦せき止める必要があると判断し、
ガーネットに薪置き場の木材を水路幅に合わせて加工してほしいと頼んだ。
「任せて、ヨシヒロ様!」
「ありがとう、ガーネットー!」
「強度も足しておくねー!」
ガーネットにイメージを伝えてお願いすると、数秒で板が出来上がり、
すぐさまシトリンがその板を強化してくれた。
俺はその板を持って湖の側へ戻り、ぐっと力を込めて水路に差し込む。
すると、水はぴたりとせき止められた。
「二人とも、いい仕事してくれたな」
そう思いながら、次の工程へと進む。
「畔を作る……畔塗り、だっけ?」
【はい。現代の日本では機械で行う方法と、昔ながらの手作業がありますが、
時間短縮のため、今回は土魔法による生成をおすすめします】
「なるほど。じゃあ、どんな感じでやればいい?」
【土魔法で畔を即座に生成できます。
魔法名は “Terramur《テラミュール》” です】
「了解。じゃあ……いきますか」
次の作業は、田んぼの周囲に畔を作る工程だ。
手作業だとかなり時間がかかるらしく、エマは魔法の使用を勧めてくれた。
必要な魔法を教えてもらい、唱えようとしたその時、
ぴょこぴょこと跳ねながらラピスがやって来た。
田んぼの近くに集めていた土を見ながら、ラピスが尋ねる。
「ヨシヒロ様!
魔法を使うなら、さっき運んだ土はどうしましょうか?」
「あっ……本当だ。
田んぼの中に入れて、一緒に混ぜようか」
「分かりました! では、僕たちがやります!」
「ありがとう、ラピス!」
ミルやラピスたちが集めてくれた土の扱いを聞かれ、
うっかり忘れていたことに気づく。
田んぼの中に一緒に混ぜようかと伝えると、
ラピスたちはぴょんぴょん跳ねながら土の元へ向かい、すぐに移動作業を始めてくれた。
その様子を見届けてから、俺は田んぼの前に立ち、土魔法を唱える。
「では、改めまして――
畔を生成せよ……“Terramur《テラミュール》”!」
――ボコッ
――ボコボコッ
「おおっ! 土が盛り上がってきた!
すご……しかも湿ってる?
粘土みたいに固まる感じか。ちゃんとしてるなぁ!」
Terramurを唱えると、田んぼの縁から粘土状の土が次々と盛り上がり、
やがて高さ20センチほどの畔が形作られていった。
試しに触ってみても、ぽろぽろ崩れることはなく、しっかりとした硬さを保っている。
これを全部手作業でやるとしたら……
確かに、相当な時間がかかっていただろうな。
エマに感謝していると、土を田んぼに戻し終えたラピスたちも戻ってきた。
「終わりました! ヨシヒロ様!」
「みんな、ありがとうな!」
【お疲れ様です。次は 代掻き の工程に移ります。
泥に入っても構わない方は、田んぼの中へ入ってください。
水を張り、土を細かく砕いて平らにする作業です。
これにより、田植えがしやすくなり、稲の根がしっかり張ります】
「なるほど……
じゃあ、まずは水を入れようか!」
「はーい!」
エマの指示に従い、せき止めていた板を外す。
すると、太陽の光を浴びてきらきらと輝く聖水が、勢いよく田んぼへ流れ出した。
先に田んぼで待機していたスライムたちは、溺れないよう体を少し大きくし、
ぷるぷると震えながら土をほぐし始める。
……そんなことまでできるのか。
恐るべし、スライムの力。
ある程度水が入ったところで、再び水をせき止めた。
「みんな、ありがとう!
無理せずやってくれよー!」
「大丈夫だよー! ヨシヒロ様ー!」
「わぁ……綺麗だなぁ……」
声をかけると、ラピスをはじめ、シトリン、ガーネット、
ルドやムーンまでが「大丈夫だよ」と返してくれた。
すると、周囲のスライムたちも反応するように、
体の色をピカピカと点滅させ始める。
前にも見た光景だけど、やっぱり何度見ても綺麗だなぁ。
そんなスライムたちの働きによって、土は細かく砕かれ、水と混ざり合い、
まるで自然のミキサーのように、あっという間にどろどろの泥状になっていった。
【土が十分にほぐれました。
次に、田んぼの表面を平らにならします】
「みんな、よろしくな!」
「はーーーいっ!」
エマの指示を聞いたラピスたちは、今度は体を滑らせるように使いながら、
田んぼの中を丁寧に均していく。
スライムが、ここまで優秀だなんて――
一体どれだけの人が知っているんだろう。
俺のワガママにも付き合ってくれて、泥だらけになりながら、一生懸命働いてくれている。
そんな彼らを「初心者向けだから」と言って討伐するなんて、絶対にあってはならない。
そう強く思いながら、
俺はスライムたちの作業を、見守っていた――
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「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
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