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第53話 収穫までの時間と、あの子の名前
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【マスターに問います。
稲の苗は、自分たちで植えますか?
それとも、生成して自動で植えますか?】
「あー……悩むけど。
もうここは、一気に片づけたいな」
【では、田んぼに向かい、“クレオ”で生成してください。
ただし、代掻き後は土壌を落ち着かせるため、
二日から三日ほど空けてから田植えをするのが一般的です】
「そっかぁ……
じゃあ、今日はもうやめておこうか」
【その判断が賢明です。本日はお疲れ様でした】
「というわけで、みんな今日はお疲れ様!
泥んこだらけだから、まとめて綺麗にするよー!
ロウキたちも頑張ってくれて汚れてるから、こっち来て!」
「はーーーいっ!」
代掻きという作業が終わり、
ようやく田植えができるんだなと思っていた矢先、
土壌を落ち着かせるために日を空ける必要があると、エマに教えられた。
そうなると、今日はここまで。一日頑張ってくれた皆を集め、まとめて綺麗にすることにした。
「“Purify Body《ピュリファイ・ボディ》”!」
「あるじさま、ありがとうございます!」
「ヨシヒロ様、ありがとうございます!
みんな、綺麗になりました!」
いつもの魔法で全員を一気に綺麗にしたあと、ひとまず休憩だと思い、その場に腰を下ろした。
今日だけで、ここまで本格的に農作業をするとは思っていなかったけど、
不思議と、すごく楽しかった。
俺一人では、絶対にできなかったことだ。今日手伝ってくれた皆には、感謝しかない。
「今日は、お昼ご飯も食べずに本当によく頑張ってくれてありがとう!
これからご飯の支度をしようと思うんだけど……
前みたいに、ここで食べようかな。」
「賛成ー! 主! またBBQってやつか?!」
「あるじさま! とても良い案だと思います!」
「BBQしたいですー!」
「おれ、おにく、じゅんびする!」
「よし! じゃあ準備するから、各自遊んでてもいいし、休んでてもいいぞ!
ミル、行こうー!」
「うん!」
今日は朝食を食べてから、ずっとこの湖で作業をしていた。
昼食抜きでここまで頑張ってくれたことに、心から感謝している。
だからこそ、みんなの大好きなBBQを、この場所で開こうと思った。
俺はミルと一緒に、準備のため一度家へ戻る。
あと2、3日もすれば、いよいよ田植えが始まる。
そう思うと、楽しみで仕方がなかった。
うまく収穫できたらいいな。
炊飯器の代わりになる土鍋も生成しておこう。
ご飯に合う海苔も欲しいなぁ。
そんなことを考えながら、
俺は一人、浮かれた気分でいた――
◇
三日後――
あれから三日が経ち、今日はついに田植えの日。
朝食を済ませて湖へ向かうと、
代掻きでかき混ぜられていた土の粒子は沈殿し、
聖水は透き通るように澄んで、きらきらと輝いていた。
スライムたちが完璧に均してくれたおかげで、
土の表面にはほとんど凹凸がなく、まるで鏡のように美しい。
「さて……
じゃあ、一気にやっちゃいますか!
……クレオ!」
――ポコッ
――ポコポコッ
「わっ……! すごい!
土の中から、苗がポコポコ出てきたんですけど!」
【すべての苗が植え終わるまで、意識を集中させてください】
「オッケー!」
いつものように“クレオ”を唱えると、
土の中から一つ、また一つと稲の苗が姿を現した。
両手を広げ、意識を集中させていると、
五分も経たないうちに、田んぼ一面に苗が行き渡る。
――魔法って、本当にすごい。
……まあ、
「肝心な田植えで魔法かよ」って言われそうだけど。
うちで実際に田植えができそうなのなんて、
ミルとクロくらいだし、さすがにそれは大変すぎる。
――なんて、自分に言い訳しているあたりが、
俺のダメなところなんだろう。
それでも。
これで、うまく育てば――
念願のお米が食べられる。
そう思うと、胸が期待でいっぱいになっていた。
「主! これ、どれくらいで収穫できるんだ?」
「え? そうだなぁ。
俺の世界だと、4ヶ月から5ヶ月くらいかな……」
【マスターの言葉は正しいです。
通常であれば、非常に時間のかかる工程です。
しかし、この世界の環境と、マスターの力によって大幅に短縮されます。
田植えから5日ほど経った段階で、“中干し”と呼ばれる水抜きを行ってください。
田んぼの土を一度乾燥させ、稲の根をしっかり張らせるための工程です。
さらに、その5日後あたりには、黄金色の稲穂が見られるでしょう】
「――だってさ!」
「そっかぁ! じゃあ、それまではしっかり見張ってないとな!」
「あるじさま、僕たちがしっかり見張り役を務めますからね!」
「あはは。ありがとうな。
頼りにしてるよ、警備隊のお二人さん!」
クロに収穫までの期間を聞かれ、
反射的にエマに尋ねようとしたところ、
エマが気を利かせて、収穫までの流れを詳しく教えてくれた。
――2週間もしないうちに収穫できる。
そんな幸せな話があるだろうか。
思わず頬が緩んでいると、
「収穫までの間は、俺たちがしっかり見張るから!」
そう、自信満々に宣言したのは、クロとユキだった。
どうやらこの2人、
自分たちがこの地を護る“警備隊”という役職に就いているつもりらしい。
頼もしくて、それ以上に、何度見ても可愛らしい警備隊だなぁと、
俺は一人、感心していた。
「なあ、主。
そういえばさ、猫ちゃんには名前つけないのか?」
「え?あー……
飼い猫だったら普通は名前をつけてあげるんだけどさ。
俺が名前をつけると、従魔契約になっちゃうだろ?
あの子の意思も分からないし、
勝手に名前をつけるのはなぁって思ってたんだ。」
「確かに……
名前をつけると従魔契約になってしまいますから、悩みどころですね、あるじさま。」
「だろ? でも、いつまでも“猫ちゃん”って呼ぶのも、ちょっとなぁ」
微笑ましい警備隊の姿に癒されていると、
クロが近くにいた猫ちゃんを見ながら、不思議そうに首を傾げた。
俺自身、猫ちゃんには名前をつけてあげたいと思っていた。
けれど、どうしても従魔契約の問題が頭をよぎり、
どうするべきか悩んでいたところだった。
そんな俺たちに、クロは猫ちゃんを撫でながら、真剣な表情で訴えてくる。
「でもさ……
名前がないの、可哀想だよ。名前、つけてあげようよ!」
「それほど名をつけたいのなら、クロとユキで名づけてやればいい。
そうすれば、従魔契約にはならん。
もし今後、従魔契約を結ぶことになったとしても、
その時はヨシヒロが同じ名で上書きすればよい」
「え! 本当? いいのか?!」
「あるじさま、本当によろしいのでしょうか?」
名前をつけたいと訴えるクロに対し、
ロウキがそう提案すると、クロとユキは、キラキラと瞳を輝かせながら、
俺に許可を求めてくる。
「いいに決まってるだろ。
だって、あの猫ちゃんを見つけてくれたのは、二人なんだからさ」
「わぁ! じゃあ、ユキ、考えようぜ!」
「はい! クロ兄さん!」
俺がそう言うと、二人の瞳はさらに輝き、
猫ちゃんから少し離れて、どこかへと走っていってしまった。
きっと、名前が決まるまで散歩でもしながら考えるつもりなんだろう。
――まるで、
親が飼育を許可して、子供が名前をつけるみたいだ。
そんな構図に、思わず頬が緩む。
どんな名前をつけるんだろう。
女の子なら、ガーネットに続いて二人目だ。
きっと、可愛い名前になるに違いない。
「にゃああん?」
「猫ちゃん、これから君の名前を考えてくれるからね。
可愛い名前をつけてもらえるといいな。
チビちゃんたちも、そのうち名前つけてもらおうなー」
「んにゃああ!」
考え事をしていると、猫ちゃんが俺の足にすりすりと体を寄せてきた。
――ああ、猫カフェ万歳。
……なんて思ったのは、ここだけの秘密だ。
猫ちゃんの頭を優しく撫でながら、
「名前をつけてもらえるからね」と声をかけると、
なんとなく嬉しそうな表情に見えた。
自分の名前をもらえるって、特別なことだ。
それが、この子にも伝わっているのだろうか。
きっと、素敵な名前をもらえるはずだ。
そう思いながら、
クロとユキが戻ってくるのを待っていた――……
稲の苗は、自分たちで植えますか?
それとも、生成して自動で植えますか?】
「あー……悩むけど。
もうここは、一気に片づけたいな」
【では、田んぼに向かい、“クレオ”で生成してください。
ただし、代掻き後は土壌を落ち着かせるため、
二日から三日ほど空けてから田植えをするのが一般的です】
「そっかぁ……
じゃあ、今日はもうやめておこうか」
【その判断が賢明です。本日はお疲れ様でした】
「というわけで、みんな今日はお疲れ様!
泥んこだらけだから、まとめて綺麗にするよー!
ロウキたちも頑張ってくれて汚れてるから、こっち来て!」
「はーーーいっ!」
代掻きという作業が終わり、
ようやく田植えができるんだなと思っていた矢先、
土壌を落ち着かせるために日を空ける必要があると、エマに教えられた。
そうなると、今日はここまで。一日頑張ってくれた皆を集め、まとめて綺麗にすることにした。
「“Purify Body《ピュリファイ・ボディ》”!」
「あるじさま、ありがとうございます!」
「ヨシヒロ様、ありがとうございます!
みんな、綺麗になりました!」
いつもの魔法で全員を一気に綺麗にしたあと、ひとまず休憩だと思い、その場に腰を下ろした。
今日だけで、ここまで本格的に農作業をするとは思っていなかったけど、
不思議と、すごく楽しかった。
俺一人では、絶対にできなかったことだ。今日手伝ってくれた皆には、感謝しかない。
「今日は、お昼ご飯も食べずに本当によく頑張ってくれてありがとう!
これからご飯の支度をしようと思うんだけど……
前みたいに、ここで食べようかな。」
「賛成ー! 主! またBBQってやつか?!」
「あるじさま! とても良い案だと思います!」
「BBQしたいですー!」
「おれ、おにく、じゅんびする!」
「よし! じゃあ準備するから、各自遊んでてもいいし、休んでてもいいぞ!
ミル、行こうー!」
「うん!」
今日は朝食を食べてから、ずっとこの湖で作業をしていた。
昼食抜きでここまで頑張ってくれたことに、心から感謝している。
だからこそ、みんなの大好きなBBQを、この場所で開こうと思った。
俺はミルと一緒に、準備のため一度家へ戻る。
あと2、3日もすれば、いよいよ田植えが始まる。
そう思うと、楽しみで仕方がなかった。
うまく収穫できたらいいな。
炊飯器の代わりになる土鍋も生成しておこう。
ご飯に合う海苔も欲しいなぁ。
そんなことを考えながら、
俺は一人、浮かれた気分でいた――
◇
三日後――
あれから三日が経ち、今日はついに田植えの日。
朝食を済ませて湖へ向かうと、
代掻きでかき混ぜられていた土の粒子は沈殿し、
聖水は透き通るように澄んで、きらきらと輝いていた。
スライムたちが完璧に均してくれたおかげで、
土の表面にはほとんど凹凸がなく、まるで鏡のように美しい。
「さて……
じゃあ、一気にやっちゃいますか!
……クレオ!」
――ポコッ
――ポコポコッ
「わっ……! すごい!
土の中から、苗がポコポコ出てきたんですけど!」
【すべての苗が植え終わるまで、意識を集中させてください】
「オッケー!」
いつものように“クレオ”を唱えると、
土の中から一つ、また一つと稲の苗が姿を現した。
両手を広げ、意識を集中させていると、
五分も経たないうちに、田んぼ一面に苗が行き渡る。
――魔法って、本当にすごい。
……まあ、
「肝心な田植えで魔法かよ」って言われそうだけど。
うちで実際に田植えができそうなのなんて、
ミルとクロくらいだし、さすがにそれは大変すぎる。
――なんて、自分に言い訳しているあたりが、
俺のダメなところなんだろう。
それでも。
これで、うまく育てば――
念願のお米が食べられる。
そう思うと、胸が期待でいっぱいになっていた。
「主! これ、どれくらいで収穫できるんだ?」
「え? そうだなぁ。
俺の世界だと、4ヶ月から5ヶ月くらいかな……」
【マスターの言葉は正しいです。
通常であれば、非常に時間のかかる工程です。
しかし、この世界の環境と、マスターの力によって大幅に短縮されます。
田植えから5日ほど経った段階で、“中干し”と呼ばれる水抜きを行ってください。
田んぼの土を一度乾燥させ、稲の根をしっかり張らせるための工程です。
さらに、その5日後あたりには、黄金色の稲穂が見られるでしょう】
「――だってさ!」
「そっかぁ! じゃあ、それまではしっかり見張ってないとな!」
「あるじさま、僕たちがしっかり見張り役を務めますからね!」
「あはは。ありがとうな。
頼りにしてるよ、警備隊のお二人さん!」
クロに収穫までの期間を聞かれ、
反射的にエマに尋ねようとしたところ、
エマが気を利かせて、収穫までの流れを詳しく教えてくれた。
――2週間もしないうちに収穫できる。
そんな幸せな話があるだろうか。
思わず頬が緩んでいると、
「収穫までの間は、俺たちがしっかり見張るから!」
そう、自信満々に宣言したのは、クロとユキだった。
どうやらこの2人、
自分たちがこの地を護る“警備隊”という役職に就いているつもりらしい。
頼もしくて、それ以上に、何度見ても可愛らしい警備隊だなぁと、
俺は一人、感心していた。
「なあ、主。
そういえばさ、猫ちゃんには名前つけないのか?」
「え?あー……
飼い猫だったら普通は名前をつけてあげるんだけどさ。
俺が名前をつけると、従魔契約になっちゃうだろ?
あの子の意思も分からないし、
勝手に名前をつけるのはなぁって思ってたんだ。」
「確かに……
名前をつけると従魔契約になってしまいますから、悩みどころですね、あるじさま。」
「だろ? でも、いつまでも“猫ちゃん”って呼ぶのも、ちょっとなぁ」
微笑ましい警備隊の姿に癒されていると、
クロが近くにいた猫ちゃんを見ながら、不思議そうに首を傾げた。
俺自身、猫ちゃんには名前をつけてあげたいと思っていた。
けれど、どうしても従魔契約の問題が頭をよぎり、
どうするべきか悩んでいたところだった。
そんな俺たちに、クロは猫ちゃんを撫でながら、真剣な表情で訴えてくる。
「でもさ……
名前がないの、可哀想だよ。名前、つけてあげようよ!」
「それほど名をつけたいのなら、クロとユキで名づけてやればいい。
そうすれば、従魔契約にはならん。
もし今後、従魔契約を結ぶことになったとしても、
その時はヨシヒロが同じ名で上書きすればよい」
「え! 本当? いいのか?!」
「あるじさま、本当によろしいのでしょうか?」
名前をつけたいと訴えるクロに対し、
ロウキがそう提案すると、クロとユキは、キラキラと瞳を輝かせながら、
俺に許可を求めてくる。
「いいに決まってるだろ。
だって、あの猫ちゃんを見つけてくれたのは、二人なんだからさ」
「わぁ! じゃあ、ユキ、考えようぜ!」
「はい! クロ兄さん!」
俺がそう言うと、二人の瞳はさらに輝き、
猫ちゃんから少し離れて、どこかへと走っていってしまった。
きっと、名前が決まるまで散歩でもしながら考えるつもりなんだろう。
――まるで、
親が飼育を許可して、子供が名前をつけるみたいだ。
そんな構図に、思わず頬が緩む。
どんな名前をつけるんだろう。
女の子なら、ガーネットに続いて二人目だ。
きっと、可愛い名前になるに違いない。
「にゃああん?」
「猫ちゃん、これから君の名前を考えてくれるからね。
可愛い名前をつけてもらえるといいな。
チビちゃんたちも、そのうち名前つけてもらおうなー」
「んにゃああ!」
考え事をしていると、猫ちゃんが俺の足にすりすりと体を寄せてきた。
――ああ、猫カフェ万歳。
……なんて思ったのは、ここだけの秘密だ。
猫ちゃんの頭を優しく撫でながら、
「名前をつけてもらえるからね」と声をかけると、
なんとなく嬉しそうな表情に見えた。
自分の名前をもらえるって、特別なことだ。
それが、この子にも伝わっているのだろうか。
きっと、素敵な名前をもらえるはずだ。
そう思いながら、
クロとユキが戻ってくるのを待っていた――……
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