天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

15 民が救われるのなら、それでいい_01

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 ハルコンの目から見て、父カイルズは、このファルコニアという中世ヨーロッパ風の異世界の貴族として、大変尊敬できる人物に映っていた。

 ノブレスオブリージュ。
 身分の高い者には、その能力と社会的地位に応じた義務と責任がある。
 そんな近世の道徳観を父親が体現しており、ハルコンはとても誇りに思っていた。

 何しろ、カイルズは隣領を含め、国民全体の生活水準を上げるべきだ。そう公言することをはばからない、大のお人好しなのだ。

 カイルズの治めているセイントーク領は、素晴らしいもので溢れている。
 安価で便利な製品、安価で美しい花々、安価で栄養価の高い甘くて美味しい菓子、豊富な食材等々が開発され、領民の手に渡っていく。

 そして、セイントーク領は自前の軍隊を持たないため、税金がとても安い。
 ちょっとしたトラブルの起こる度に、領軍を設置すべきだと声が上がるのだが、……。

 でも、カイルズの先代もカイルズも、それは政治で解決させると言って、二代に渡って頑なに拒んできた。

 まぁ、最近は女盗賊の協力の下、自警団と傭兵団が設置され、これまで仕事にあぶれ易く治安を乱しがちな獣人達を傘下にすることで、金銭面でも治安の面でも大幅な改善が齎されている。

 ハルコンは女盗賊に思念を同調させると、彼女の目を通して街の様子を窺った。
 すると、獣人達の犯罪は限りなくゼロに近づき、ヒューマンとほぼ同等になった。

 最近では、犬の獣人が主に街の警備を担当し、お揃いの制服を着て巡回しているようだ。

 様々な人種が住み易くなり、その評判を聞きつけて、人がより多く集まり、領都を中心に人口は拡大し続けている。
 人手が増えたことで新たな産業が興り、新製品が次々と生み出されていく。

 そして、その製品の多くが、大店の中年商人の手配の下、彼の販売網を通じて領の内外に広く分配されていくのだ。

「ハルコン様っ。今日はどうされましたか? 街の見物でらっしゃいますか?」

「はいっ。皆さん、元気でお変わりなく。いつも街は賑やかで活気がありますね!」

「お陰様でっ! カイルズ様にも、ぜひよろしくお伝えくださいっ!」

 ハルコンがミラと共に領都の街を散策すると、多くの領民達から笑顔で挨拶される。

「街の雰囲気がとてもいいねっ。私も住んでみたいかもっ!」

 ミラも嬉しそうに笑った。ハルコンも笑った。
 うん。とってもいいことだよね。皆ニコニコしているよ。

 一方で、ハルコンは抜かりなく思念を中年の商店主にも同調させていた。

 領内外の村々から各地の街々、果ては王都に至るまで、……。
 人々が楽しそうにセイントーク領産の商品を選んでいく様子を、中年の商店主の目を通して、ハルコンはじっと見つめていたのだ。
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