天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

文字の大きさ
235 / 499
第一部「ハルコン少年期」

30 火薬_07

しおりを挟む
   *          *

「ねぇ~っ、ハルコン。この玉を筒に入れていけばいいんだよね?」

「うん。発射筒の設置は私がやるから、ミラは玉の配置をお願いね!」

「了解!」

 ミラはハルコンの指示の下、用意した球体を設置した各筒に次々と投入していく。

 今回、2人が取り扱っている球体は、いわゆる花火玉だ。
 サイズは3号玉。直径9センチで、想定打ち上げ高度は地球のモジュール換算で120メートルだ。

 先日の実験では、120メートルの高度で、直径60メートルの開花に成功している。
 王都の住民の大半が寝静まる真夜中に、ハルコンとミラはこっそりと花火の打ち上げを行っていたのだ。

 夜空に開花する花火を見て、ミラは「凄い、凄い、凄いっ!!」と大いに感激して、大興奮状態だった。

 おそらく、今夜の花火大会でも参加者達は同様に大騒ぎするのではないかなぁと、ハルコンは作業をしながら思った。

「ふふっ、これで、皆の度肝を抜いて見せようかな?」

「ハルコン、ふふっ、……ちょっと悪い顔してるよ!」

 お互いにクスクスと笑いを堪えながら、長年のコンビ故に、手際よく花火玉を各筒に準備していく。

 今回、ハルコンとミラは、事前に30個の花火玉を作って用意していた。
 まぁ、これが前世の晴子のいた現代日本なら、まさに法律違反となる。

 少なくとも、「煙火打揚従事者手帳」と「火薬類取扱保安責任者」というふたつの資格が必要で、向こうの世界では、どうしてもプロにお願いすることになる。

 でも、ここは異世界なんだ。
 そもそも「火薬」というモノ自体、これまで存在しない世界だったのだから、前世の知識と素養のあるハルコンがそれらの作業を行っても、何らお咎めないのだ。

「ハルコン、……準備完了だよ!」

「OK! ありがとう。点火はミラに任せるよ!」

「やたっ! 嬉しいっ!」

 すかさず喜ぶミラ。
 どうやら先日の実験で、打ち上げ花火の美しさに魅入られてしまったミラは、この花火を取り扱うという作業そのものに、大いに興味を示していた。

 仮に、……もしかしたらさ。
 近い将来、「花火師」という職業がこちらの世界でも始まったら、その第一号がミラになったりするのかなぁと、ハルコンは思った。

 ふと気が付くと、会場の学生達の多くが、こちらの様子を窺っていた。

 本日最大のサプライズを、2人だけでこっそり準備していたつもりだったが、勘のいい参加者達がこちらの作業に気付いたのかもしれないね。

 そんな具合に多くの視線が注がれる中、ミラは得意そうに導火線に点火する。

 ホンの数秒後、小さな導火線の炎が設置した筒に到達するや否や、「シュポッ!」という音と共に、花火玉が上空120メートルまで飛翔する。

 その直後、「ドーン!」と、心臓に響くような重低音を打ち鳴らした。
 会場にいる参加者全員が口を開けて夜空を見上げる中、次々と大輪の花が咲き乱れていった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...