296 / 500
第一部「ハルコン少年期」
36 王立学校祭 その3_09
しおりを挟む
* *
いや、……でも、私が出ていってはダメだろ、……。
私の立場は、あくまでセイントーク流合気術の「始祖」ということであり、たとえ兄達のサークルにピンチがあっても、軽々と手を下してはならない立場だからね。
だから、キャスパー殿下のお申し出には、丁重にお断りをしないといけないかなぁと、ハルコンは思った。
「ハルコンッ! オマエは出るなっ! ボク達に任せておけっ!」
マルコム兄が叫びながら、特設の壇上にサークルメンバー数名を引き連れて駆け上った。
そして起き上がったイメルダのサークルメンバーと共に、10数名の競技者でそれぞれのポジションから緩やかに構えると、……。
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」」
ここで、雄たけびを上げて、決めのポーズを取った。
その次の瞬間!
「「「「「「「「「「ワアアアァァァーーッッ!」」」」」」」」」」
もう会場中、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
会場の観客達の多くは、急速に広まっているセイントーク流合気術の練習生達だ。
だから、イメルダのサークルの助太刀に入ったマルコム兄達を見て、期待を込めて大いに応援した。
「にっ、兄様っ!」
ハルコンは心配しつつも、固唾を飲んで兄達の活躍を願った。
すると、ハルコンの肩をポンと叩く者がいる。
振り返るとシルファー先輩とステラ殿下。先輩は不敵な笑みを浮かべ、殿下は少しだけ心配そうな表情を浮かべていらっしゃる。
「いいのよ、ハルコン。あなたは黙って見ていなさい!」
「えぇ、……。そのつもりなのですが、……」
確かに、シルファー先輩の仰ることは尤もだ。
でも、才能溢れるキャスパー殿下が、習得された「ワンフル」で兄達を軽くひとひねりしてしまうことは、容易に想像できた。
傍らのミラは、胸元を手で押さえつつ、マルコム兄達の方を心配そうに見つめていたのだが、……。
「ねぇ、……いいの、ハルコン?」
不安そうな表情を浮かべ、そう訊ねてきた。
「ここは、兄達に任せよう!」
「うん、……ワカった」
ミラはこくりと頷くと、目にグッと力を込めて兄達を見守った。
ミラもまた、セイントーク流合気術の有段者だ。ここは兄弟子であるマルコム兄達の心意気に期待して、しっかり見届けようと思ったようだ。
特設の壇上では、キャスパー殿下を囲むようにして、兄達とイメルダのサークルメンバーが構えている。
その構図は、白き長躯の若き犬狼を、少年達が何とかして取り押さえようとしている風にも見えた。
「キャスパー殿下っ! いざっ! 参りますっ!!」
ハルコンの合気術は防御が主体だが、18の攻撃の型もある。
その中には、対人ではなく対野獣を想定したものが3つある。その場合は一対一ではなく、多対一を想定しているのが基本だ。
キャスパー殿下が不敵そうに「かかってきな!」とばかりに手招きをすると、マルコム兄達は、仲間ウチでアイコンタクトをして頷き合う。
「「「「「「「「「「いざっ!!」」」」」」」」」」
そう叫ぶと、一斉に各所から飛びかかった。
いや、……でも、私が出ていってはダメだろ、……。
私の立場は、あくまでセイントーク流合気術の「始祖」ということであり、たとえ兄達のサークルにピンチがあっても、軽々と手を下してはならない立場だからね。
だから、キャスパー殿下のお申し出には、丁重にお断りをしないといけないかなぁと、ハルコンは思った。
「ハルコンッ! オマエは出るなっ! ボク達に任せておけっ!」
マルコム兄が叫びながら、特設の壇上にサークルメンバー数名を引き連れて駆け上った。
そして起き上がったイメルダのサークルメンバーと共に、10数名の競技者でそれぞれのポジションから緩やかに構えると、……。
「「「「「「「「「「ヤァーッ!」」」」」」」」」」」
ここで、雄たけびを上げて、決めのポーズを取った。
その次の瞬間!
「「「「「「「「「「ワアアアァァァーーッッ!」」」」」」」」」」
もう会場中、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
会場の観客達の多くは、急速に広まっているセイントーク流合気術の練習生達だ。
だから、イメルダのサークルの助太刀に入ったマルコム兄達を見て、期待を込めて大いに応援した。
「にっ、兄様っ!」
ハルコンは心配しつつも、固唾を飲んで兄達の活躍を願った。
すると、ハルコンの肩をポンと叩く者がいる。
振り返るとシルファー先輩とステラ殿下。先輩は不敵な笑みを浮かべ、殿下は少しだけ心配そうな表情を浮かべていらっしゃる。
「いいのよ、ハルコン。あなたは黙って見ていなさい!」
「えぇ、……。そのつもりなのですが、……」
確かに、シルファー先輩の仰ることは尤もだ。
でも、才能溢れるキャスパー殿下が、習得された「ワンフル」で兄達を軽くひとひねりしてしまうことは、容易に想像できた。
傍らのミラは、胸元を手で押さえつつ、マルコム兄達の方を心配そうに見つめていたのだが、……。
「ねぇ、……いいの、ハルコン?」
不安そうな表情を浮かべ、そう訊ねてきた。
「ここは、兄達に任せよう!」
「うん、……ワカった」
ミラはこくりと頷くと、目にグッと力を込めて兄達を見守った。
ミラもまた、セイントーク流合気術の有段者だ。ここは兄弟子であるマルコム兄達の心意気に期待して、しっかり見届けようと思ったようだ。
特設の壇上では、キャスパー殿下を囲むようにして、兄達とイメルダのサークルメンバーが構えている。
その構図は、白き長躯の若き犬狼を、少年達が何とかして取り押さえようとしている風にも見えた。
「キャスパー殿下っ! いざっ! 参りますっ!!」
ハルコンの合気術は防御が主体だが、18の攻撃の型もある。
その中には、対人ではなく対野獣を想定したものが3つある。その場合は一対一ではなく、多対一を想定しているのが基本だ。
キャスパー殿下が不敵そうに「かかってきな!」とばかりに手招きをすると、マルコム兄達は、仲間ウチでアイコンタクトをして頷き合う。
「「「「「「「「「「いざっ!!」」」」」」」」」」
そう叫ぶと、一斉に各所から飛びかかった。
87
あなたにおすすめの小説
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる