天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司

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第一部「ハルコン少年期」

37 研究所の長い一日_08

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 そういえば、……あの頃から私の研究室は、トラブルに見舞われ続けていたのかなぁ。
 ハルコンは、当時の晴子の研究環境で、いくつもあった不審な出来事を思い出す。

 例えば、火元ではない会議室での失火とか、……。
 厳重に保管しているはずの試薬が、何故か必要な時に限って別の場所に移動していたりとか、……。

 研究の成果報告に海外に移動する際の飛行機の予約が、何者かによって勝手にキャンセルされていたりとか、……。 
 そんなトラブルが連日のように続いた後で、満を持して、いわゆるVIPの2人が晴子達の許に訪ねてくる。
 
 訪れた大物は2名。この国の感染症研究最前線の教授の案内で、大国アルメリアのとある大富豪が現れたのだ。

 すると、学内はもう、……てんやわんやの大騒ぎになってしまった。

 晴子の所属する大学の研究室は、いわゆる一線級の研究が行える環境にあるとは、とても言えなかった。

 晴子の主任教授は、元々は国立機関の出で、新進気鋭の研究者と評されていた。
 だが、所属する研究グループの中で意見が対立し、政治的に主導権を奪われて以降、閑職に追いやられていた。

 そして流れ着いた先が、晴子の在籍する私立の総合大学、……その一端である薬理学部だった。

「とりあえず、……会って話だけでもしてみるとしようか」

 主任教授が、学長や学部長達が右往左往するのを見るに見かねて、そう話しかけてきた。

「えぇ、……。私は構いませんが」

 晴子としても、普段世話になっている主任教授には義理がある。さすがに断るワケにはいかなかった。

 主任教授と共に、新校舎の最上階にある来客用のラウンジルームに向かった。
 晴子達のいる研究棟は、昭和30年代に建てられた旧校舎で、ところどころ雨漏れもするお粗末さだったのだが、……。

 新校舎に入り、高速エレベーターで最上階まで昇っていく途中、主任教授が終始無言でいたため、晴子も大人しくガラスの先に見える新都心のビル群を、黙って見つめていた。

 エレベーターが最上階に到着すると、四囲を背の高いガラスが張られ、23区から都内全域を一望することができた。

 へぇー、すごい見晴らしの良さだなぁと晴子は思った。
 そしてホールに意識を向けると、程よい調光と室温と適度な湿度が感じられた。

 廊下はパイルの長い高級絨毯が敷き詰められ、壁紙も布クロスの一級品が張られている。
 調度品の絵画や壺も、名のある者の手によって作られたことが想像でき、一見してこの場が上級の階層向けに設えられていることが窺えた。

「私達の研究棟と、雲泥の差ですね?」

 晴子が思わず軽口を述べると、主任教授はニコリとただお笑いになるだけだった。
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