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第3章 この世界が思ってた以上にやばかったんですけど
4:束の間の休息
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私たちは保養所から少し離れたところにある浴場に来ていた。レヴィトと二人で浴室へ。
石造りの重厚な空間に同じように石で湯船が作られている。湯船に満たされているのは、緑白色のお湯で、私は見たことのない色の中に恐る恐る足を入れた。
「どうですか? 気持ち良いでしょう?」先に浸かっていたレヴィトが頬を緩める。「ここは数百年前から愛されてきた浴場なんです」
石造りの浴室は悠久の時の経過を思わせるように、積み上げられた石のエッジが綻んでいたり、多くの人が触れて摩耗したせいでツルツルになっていたりする。
「すごく気持ち良い……」
戦い詰めだったせいで湯が身体に沁みる。
「聖女様、なんですよね?」
「私は何をしているというわけではありません。メストステラス聖教の教えに従っているだけですよ」
「どうして追われることに?」
返って来たのは、第七魔王が仕入れてきたのと大差のない内容だった。ただ、レヴィトの話し振りは、襲撃者たちを敵と認識していないように感じられる。お人よしだ。
「それで、私はファレルに助けられて一時的に聖都を離れることになったんです」
「ファレルさん……大丈夫ですか? ちょっと頼りないような気が……」
「ファレルは私のためを思って言葉や行動にしてくれます。彼は素晴らしい人なんです。ただ、彼は自分をそうは思っていないみたい」
「どうしてあの宿屋に? 襲撃者の仲間でいっぱいでしたよ」
「ファレルの提案なんです。彼らの中に入り込んでしまえば、追われることなく街の外を目指せる、と」
挙句、あっさりとバレてしまったわけか。
「藍綬たちはなぜメスタへ?」
自分がどんな経緯を辿って来たのか、色々なことがありすぎて見失いかけていた。
「ある人を追いかけてここまで」
「大切な人ね?」
何かを察したレヴィトが友人のように笑って肩を寄せてくる。そのせいで、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「私のことを助けたせいで、こんなことになってしまってごめんなさい」
「いえ、いいんです。どのみち手掛かりはありませんし」
「藍綬はエルランドの人?」
「エルランド?」
「クラウテルンとかシルディアとか……」
「私はこの世界の人間じゃないんです。ここは、その大切な人のいた世界なんです」
「どんな人?」
「青い髪に金色の瞳が特徴的で、素っ気ない振りをしているけど、私を助けてくれた」
レヴィトは何かを考えているようだった。
「聖女様はどうして私がエルランドの人だと?」
「藍綬がしていたネックレス、あれはエルランドの山で採れる幸福の花よ。今は竜がいて危険だけど、シルディアの辺りならまだ大丈夫だと聞いたから、もしかして、と思って」
シルディア……私の中にいるアーガイルと何か関係があるだろうか。そこを目指すのもいいかもしれない。
レヴィトと話し込んでしまい、いつしか私はのぼせてしまっていたようだ。
「大丈夫、藍綬? もう上がりましょう」
レヴィトがそう言ったのは憶えている。
***
「藍綬!」
私の目の前にレヴィトの顔がある。
私は浴場のラウンジにある長椅子に横になっていた。長椅子のそばでレヴィトとファレルが心配そうに私を見つめていた。私は気絶していたらしい。
「よかった……!」
「ええと、何があったの?」
「湯船の中で急に立ち上がって、自分の身体を見て『なんじゃこりゃ!』って言って、鼻血を出して倒れたのよ」
まさか湯治の効果でアーガイルが目覚めたのか?
石造りの重厚な空間に同じように石で湯船が作られている。湯船に満たされているのは、緑白色のお湯で、私は見たことのない色の中に恐る恐る足を入れた。
「どうですか? 気持ち良いでしょう?」先に浸かっていたレヴィトが頬を緩める。「ここは数百年前から愛されてきた浴場なんです」
石造りの浴室は悠久の時の経過を思わせるように、積み上げられた石のエッジが綻んでいたり、多くの人が触れて摩耗したせいでツルツルになっていたりする。
「すごく気持ち良い……」
戦い詰めだったせいで湯が身体に沁みる。
「聖女様、なんですよね?」
「私は何をしているというわけではありません。メストステラス聖教の教えに従っているだけですよ」
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返って来たのは、第七魔王が仕入れてきたのと大差のない内容だった。ただ、レヴィトの話し振りは、襲撃者たちを敵と認識していないように感じられる。お人よしだ。
「それで、私はファレルに助けられて一時的に聖都を離れることになったんです」
「ファレルさん……大丈夫ですか? ちょっと頼りないような気が……」
「ファレルは私のためを思って言葉や行動にしてくれます。彼は素晴らしい人なんです。ただ、彼は自分をそうは思っていないみたい」
「どうしてあの宿屋に? 襲撃者の仲間でいっぱいでしたよ」
「ファレルの提案なんです。彼らの中に入り込んでしまえば、追われることなく街の外を目指せる、と」
挙句、あっさりとバレてしまったわけか。
「藍綬たちはなぜメスタへ?」
自分がどんな経緯を辿って来たのか、色々なことがありすぎて見失いかけていた。
「ある人を追いかけてここまで」
「大切な人ね?」
何かを察したレヴィトが友人のように笑って肩を寄せてくる。そのせいで、私は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「私のことを助けたせいで、こんなことになってしまってごめんなさい」
「いえ、いいんです。どのみち手掛かりはありませんし」
「藍綬はエルランドの人?」
「エルランド?」
「クラウテルンとかシルディアとか……」
「私はこの世界の人間じゃないんです。ここは、その大切な人のいた世界なんです」
「どんな人?」
「青い髪に金色の瞳が特徴的で、素っ気ない振りをしているけど、私を助けてくれた」
レヴィトは何かを考えているようだった。
「聖女様はどうして私がエルランドの人だと?」
「藍綬がしていたネックレス、あれはエルランドの山で採れる幸福の花よ。今は竜がいて危険だけど、シルディアの辺りならまだ大丈夫だと聞いたから、もしかして、と思って」
シルディア……私の中にいるアーガイルと何か関係があるだろうか。そこを目指すのもいいかもしれない。
レヴィトと話し込んでしまい、いつしか私はのぼせてしまっていたようだ。
「大丈夫、藍綬? もう上がりましょう」
レヴィトがそう言ったのは憶えている。
***
「藍綬!」
私の目の前にレヴィトの顔がある。
私は浴場のラウンジにある長椅子に横になっていた。長椅子のそばでレヴィトとファレルが心配そうに私を見つめていた。私は気絶していたらしい。
「よかった……!」
「ええと、何があったの?」
「湯船の中で急に立ち上がって、自分の身体を見て『なんじゃこりゃ!』って言って、鼻血を出して倒れたのよ」
まさか湯治の効果でアーガイルが目覚めたのか?
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