【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

文字の大きさ
64 / 173
婚姻編

ジャンル

しおりを挟む

「お嬢ちゃん、あんたも罪な女だねぇ。大物兄ちゃんと王子坊やじゃジャンルが違いすぎるだろうに……」

「ジャンル…………」

 三人がけの花柄ソファーの端と端に座ったリヒト様とユリウス様。
二人ともお互いの方を全く見ない。

 リヒト様はどかっと足を開いて座っていてめちゃくちゃ機嫌が悪そう。

 ユリウス様は足を組んで優雅に紅茶を飲んでる。

 アイラさんのお店の二階で、なんだかよく分からない四人で地獄のお茶会に参加させられている。

 きっかけは昨日から私がアイラさんのお店に来ている事をユリウス様が知り、仲を取り持ってほしいとアイラさんに懇願した事にある。

 ルース君に止められていたユリウス様を、王子様顔に弱いアイラさんがお店に入れてしまい、別れるにしてもちゃんとふっておやりと私と対面させた。

 報告がいったのか、めちゃくちゃ怒ったリヒト様がすぐに押しかけて来て地獄のステージの出来上がりだ。

「お嬢ちゃんの母親として言わせてもらう。この場で礼は無しだ。今だけは言いたい事をお言い。お嬢ちゃんもはっきり自分の気持ちを言う練習と思いなさいな」

「えぇ……」
もう何度もユリウス様にはちゃんとお断りの言葉を言っているはず。これ以上どうしろって言うのか。

「お嬢ちゃん、狼獣人っていうのはね、獣人一執着が強い。それはもうコテンパンにふってやらなきゃ諦められないんだよ」

「振られる前提で話しをしないで頂きたい」
ユリウス様が紅茶を飲みながら眉を顰めて抗議する。

「俺の女に手ぇ出すんじゃねーよ。ぶっ殺すぞ駄犬が」

 リヒト様いつもより口悪い。完全な不良竜。

「執着って……でも、もうお断りしたし……」

「お嬢ちゃん、王子坊やから見たらね、坊やへの意趣返しと大物兄ちゃんの圧力であんたがこの国に留まっている様に見えてるんだよ」

「!?何で!?」

「自分のやっちまった事は反省してるけどね、大物兄ちゃんだって同じじゃないかと感じてる。プラス、自分の方がいい男だと思ってる……とまぁそんなとこかね」

「えぇ、まあ……」 

「あ゛ぁ?ふざけんなよ犬が」

「何でこんなに突き抜けてジャンルの違う男たちを選んだのかねぇ神々は……」

 アイラさんは腕を組んで一人がけの花柄ソファーに座り、二人をじっと見てる。
私だけオロオロと立っていて落ち着かない。
座るとこないし、あの二人の間なんか地獄だ。

「あんたら二人ともよくお聞き。私の娘は人間だ。番の匂いなんて感じちゃいない。あんた達二人の重たい思いは置いといて、私の娘の気持ちをハッキリさせればいい」

 いったいなぜこんな事になっているのか。

 ユリウス様の飄々ひょうひょうとした態度と、リヒト様の不機嫌オーラが怖すぎる。

「お嬢ちゃん、ズバリあんたの男のタイプはどんななんだい」

「タイプ………………?」

「好きなタイプだよ。どんな人が好みなんだい」

 アイラさんまで意味わからんぐらい圧が強い。もうなんかどうとでもなれという気持ちになってきた。

「……………………誠実な人」

「ぶふぉっっ!!!」 あ、リヒト様紅茶吹いた。

「ん゛んっっ!!」 おぅ……ユリウス様も吹きそうなのこらえたな。

「……………………二人とも脛に傷持つ者同士かい……はぁ、じゃあお嬢ちゃん、あんたが嫌いなタイプはどんなだい」

 私は何を答えさせられているのか。
早くここから出てクロム君を抱きしめたい。

「………………浮気する人」

ガシャンッッ! ——ユリウス様がティーカップをおとした。

バリンッッ!! ——リヒト様はティーカップ壊した。

「……………………あんた達、実は二人とも似た者同士なんじゃないのかい…………?」    

「「……………………」」

 おおぅ、二人共黙ったな。

「お嬢ちゃん、他には無いのかい、好きな男のタイプは。この際だから全部吐いちまいな!」

 えぇ……取り調べ!?
リヒト様を見るとピクピク青筋がたっていてめっちゃ怖い。完全に魔王。

 はぁ、しょうがないなぁ。
一度しか言わないぞ!!!

「…………私の好きなタイプは!!!

私のお料理を美味しく食べてくれて!
約束をちゃんと覚えていてくれて!
テトに私を乗せてくれて!
軍服と着物が似合って!
実は子どもに優しくて!
私を片手で抱き上げてくれて!
守るって言ってくれて!
いっつも偉そうな七股男です!!!!!」

「!?!?!?~~~~~~!!!」
私の勢いとセリフにリヒト様は目を白黒させてる。

「だそうだよ?王子坊や。あんたもそろそろ執着はおやめ。わかっただろ、私の娘はそこの狭量な男が好きなのさ」

「……………………はぁ、よく分かった。もうここで終わりにする。私の負けだよ。つむぎ、私の番に少しでもなってくれた事、感謝する」

 ユリウス様はそう言って部屋を出て行った。
アイラさんも気を利かせたのかお店が心配だと言って階下に降りていき、残されたのは私とリヒト様だけ。

「リヒトさま?」

「う…………あ……」
あ、これ聞いてないやつだ。

「ユリウス様、今日も王子様みたいだったね」

「何だと!?こっちは本物の王子だぞ!!俺の方がいいだろ!!」 あ、帰ってきた。

「まだ、怒ってる?」

「——っ!違う!!嫉妬で狂った姿を、見られたくなくて……」

「迎えに来てくれてありがとう」

「お、おぅ……」

「リヒト様、離れに帰りたい。クロム君とご飯食べよ?」

「さ……先に母屋は……」

「…………………………好きなタイプにエロ竜は入ってない」

しおりを挟む
感想 1,228

あなたにおすすめの小説

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...