65 / 173
婚姻編
ケイラヒルの泉群1
私とクレアちゃんとレアットちゃんの三人が乗るケイラヒルの泉へ進む馬車が滑る様に街道を走って行く。
アイラさんはお店、ルルリエさんは王宮医師のお仕事で来られなかったので、今回は私達三人での日帰り旅行となった。
「ふぁああ、こんな豪華な馬車のったのはじめてぇええ!」
「うん、ふかふか。ってゆーか護衛が豪華すぎて他の女子に殺されそう……」
いつものふかふか馬車で私の作ったクッキーを食べながら三人でおしゃべりする。
クロム君は私の膝でおにぎりを食べていて大人しい。
私達の馬車はリツさんが御者をしてくれていて、その前後左右を囲む様に天馬に乗ったリヒト様と幹部達。
二時間ほどかかるらしく、私の体調を考慮して移転ゲートは一回だけとルルリエさんから言われたので、帰りだけ使って、行きは時間をかけて現地まで行く事になっている。
「これね、アイラさんからの餞別なの!うちのお店の商品でカルネクアから仕入れてるんだよ!」
クレアちゃんが取り出してくれたのは色違いでお揃いのエンパイヤタイプのキャミソールワンピースで、胸下で切り替えてリボンがついていてすごく可愛い。
薄いピンクと、白と、薄い水色
髪の色に合う様に、栗色の髪のクレアちゃんはピンクのワンピース、水色の髪のレアットちゃんは白、私が水色のワンピースを選んだ。
「着物だと水に入るの大変でしょ?カルネクアのドレスなら楽ちん!最近街で流行ってるの!最初はちょっと抵抗があったんだけど、街の人達を見てたら慣れちゃった!着てみたいとおもってたの!!」
クレアちゃんがカーテンを閉めて着替えだしたので、私達もキャアキャア言いながら楽しく着替えた。洋装は楽ちんだ!やった!
リヒト様、びっくりするなこれ。エルダゾルクの貴族の女の子はみんな天女風の着物だから、おこるかな?
肩の象徴華のピンク色と水色のワンピースが似合って嬉しい。
おしゃべりして、大笑いして、二時間なんてあっという間に過ぎてしまった。クロム君は途中お昼寝もした。
馬車が止まってノックの音が聞こえたので私が返事をすると、扉を開けたリヒト様と目があった。
途端バンッと扉が再度閉められて、苦笑する。私が肩を出すといつも慌てるもんね。
今回のワンピースは膝丈だから足も出す事になって、こっちは反応が楽しみだな。
「リヒト様?」
中から扉を開けるとワナワナしたリヒト様。
クレアちゃんやレアットちゃんも同じ格好をしてる手前、軍服の上着を巻き付けれなくて焦ってるな?
二人に先に出てもらって、何も言えない状況を作ってしまおう!
「ひゅ~~~~う!ここ、天国だったかな~?」
「うおっ!か、可愛いな。貸し切って正解だったなリヒト!」
「~~~~~~~~~~~~っ」
「俺、マジ来て良かったっス。男余ってんじゃんとか思ってた自分を殴りたいっス!!」
「お嬢様方、泉の精が舞い降りた様ですね。本日は貸し切りましたので、安心してお楽しみ下さい」
リヒト様だけ何にも言ってくれない。
やっぱりダメだったかな。
「リヒト様?」
「~~~~~~~~~~~~!!」
ひょいと珍しく横抱きに抱かれて腕の中に閉じ込められる。
「全員の目を潰すか……」
あ、これやばいやつ。
「リヒト様?リヒト様の為に着たの」
「俺の…………」
「みんなとお揃いですごく嬉しい、連れてきてくれてありがとう」
「う………………」
「殿下って、つむぎちゃんの前だと急にキャラ変わりますよね?」
後ろの方でクレアちゃんがルース君に話しかけてる。
この二人は私の家出騒動の時から割と距離が近いと思う。
「それね~~~、俺らも最初洗脳されてんのかと思ったもんね~~~」
「妃殿下、可愛いからしょうがないと思う……」
「みんな可愛いぞ?女の子はすごいな。天女になったり天使になったり」
レアットちゃんの横にはクロードさんがいる。強い二人がエスコートしてくれてるから安心だ。
「リヒト様?おろして?せっかく連れてきてくれたから見てまわりたい」
「……………………」
「おろしてくれたら、今度二人だけの時にも着てあげるね?」
「よしわかったおろす」
(エロちょろ竜だな)
走ってみんなのところに戻ると二人が目をまんまるにして周りを見てる。
「つむぎちゃん、ひ、人がいないいぃぃ!!」
「ん?いないね、田舎って感じで楽しいよね」
「妃殿下ちがうの!ここ、いつも観光客でごった返してるの!」
おっとりのレアットちゃんまで興奮してる。
「殿下がここ一帯全部貸し切ったからね~~、コテージだけだと思った~?」
ルース君がのんびり言う。
「しゅごい、こんなのはじめてぇ!」
「お店はちゃんとやってる……!私達の為だけに……?」
私は初めてきたから分からないけれど、クレアちゃんとレアットちゃんは何度か来たことがあるようで普段との違いに驚愕してる。
大小様々な泉が棚田の様に連なって、高いところから低いところへサラサラと流れる水の音が心地いい。
「わぁ!ここは中にマーガレット畑!」
白いマーガレットのお花が水の中に咲いてユラユラと揺れている。水面下に花があるなんて不思議な感じ。
ふよふよとお昼寝から目覚めたクロム君が私の元に飛んできたので、まだ眠そうな軌道の定まらないクロム君を空中でキャッチするとリヒト様がひょいととって自分の肩に乗せた。今日はクロム君を甘えさせてくれるのかな。嬉しいな。
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――