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婚姻編
ケイラヒルの泉群2
しおりを挟む「つむぎちゃーん!こっちこっち!」
クレアちゃんに呼ばれて行くと、割と大きな泉の中にクレアちゃんとレアットちゃんが足まで浸かって遊んでいた。
「わぁ!ここは浅いね!?クローバーの花だね!」
泉は二十センチぐらいの深さしかなく、水中にクローバーが群生していて緑とお花の白がゆらゆら水に揺れている。
「そうなの!ここだけ入れる深さなんだけど、いつもは人でいっぱいでなかなか入れないし、濁っちゃって綺麗じゃないの~!」
「今日は私たちだけだから凄く綺麗。妃殿下ありがとう」
レアットちゃんがおっとり言う。
「私?私は何もしてないよ?」
「つむぎちゃんの事が大好きな殿下のおかげ~~~~~~!」
コテージにいるリヒト様達に聞こえないからと、好き勝手にお喋りして大笑いする。
私について来たクロム君は、隊服のまま水に突っ込んで遊んだので既にびしょびしょだ。
棚田の下の方に屋台の食べ物屋さんがいくつか見える。
「貸切なのに屋台もやってくれてるんだね?あれは何の食べ物?」
一番大きなオシャレな屋台を指差して聞く。
「クレープだよ~!ユアン様が、前払いしてあるから何でも好きなだけ頼んで良いっておっしゃってた~!超かっこよかった!!!!」
「うん、素敵すぎて、倒れるかと思った」
ユアンさん、人気だな。喋っただけで女子を虜にするなんて。
「クロム君、いってみる?」
「ぼく、ケキがいい」
「じゃあ、先にリヒト様のところに帰っていてね。お着替えあるから体を拭いてまっていて?あったかくしたら、ケーキにしようね?」
三人でクレープ屋さんに近づくと、エプロンをした獅子と狐獣人の男の人が、私達を迎えてくれた。
「わぁ!フルーツをはさむのと、お肉を挟むのがあるんだね?美味しそう!」
「は!はい!!!ななな何なりとお申し付け下さい!!」
ん?なんかめっちゃ緊張されてるな?
「えっとー私はバナナとイチゴを挟んだやつくださーい!はちみつで!」
クレアちゃんが元気よく頼む。
「おっ!可愛い子は可愛いもの頼むね!?お名前は何て言うの~?」
あれ?クレアちゃんには普通だ。
「わたし、バターとはちみつだけのが良い」
レアットちゃんも注文する。
「おうよ!通だね?ちっさくて可愛いのに、眼鏡取ったら美人系でしょ~!分かっちゃうよ!!俺らバイト終わるのもうすぐなんだ~いっしょにあそぼうよ?」
あれれ?レアットちゃんにも緊張どころか馴れ馴れしい?
「あの、私はイチゴだけのを下さい」
「っははははい!!!只今!!!」
??私なんかしたかな??
私の注文を最優先で作って震える手で渡して来たので、よくわからないまま後ろに下がって待つことにした。
「二人ともほんと可愛いねぇ!」
「お兄さん達はチャラそうですね」
「うん、遊んでそう」
「チャラくてかっこいいのって良いっしょ??どうかな俺ら!!」
————「どうもねぇよ、チャラくて強いのがいいんじゃねーか。黙って作れ」
ダンッッっと音がして間に降り立ったルース君はまた口調がかわってる。刀を抜きはしなかったけど、長い刀の鞘ごと店員さんの首に押し付けて脅してる。軍人さんが一般人を脅していいのか。
あ、二人の横にクロードさんも降り立った。圧がすごい。店員さん、二歩後ろにさがったな。
————「つむぎ、それ美味い?」
いつの間にかリヒト様も私の真後ろに立っていて、肩越しに私のクレープを一口かじる。
「紬のつくったやつのが美味い」
「そお?これもこれでシンプルで美味しいよ?私、なんかしちゃったかもしれなくて。クロム君の所に早く帰ろう」
「別にお前はなんもしてねぇよ」
「何か失礼な事しちゃったかもなの」
どこかのクレーマーと勘違いされたかな?
それともクレープ屋さんの偉い人に似てたとか。
「指輪と、お前についた俺の匂いにビビってただけだよ」
!!!???
「私にリヒト様の匂いがついてるの!?」
「紬ちゃん知らなかったの?そりゃ~もうベッタリついてるよ?指輪の魔力も魔王かな?って感じだよ?」
クレアちゃんの言葉にレアットちゃんもうんうんと頷いている。
「え!?はずした方がいい???」
慌てて指輪を外そうとすると、リヒト様に急に担がれてそのまま飛び立たれたので舌を噛みそうになった。
「キャア!わっっ、怖い!!リヒト様、落ちる!!」
「落とすかよ。舐めた事ぬかしやがって」
クレープをもってゆっくりこちらに歩いてくるクレアちゃんとレアットちゃんが手を振ってるけど、振り返す余裕がない!
コテージの庭のソファーに降ろされて、リヒト様をポカポカ殴って抗議する。
「イチゴほとんど落ちちゃったじゃん!あれ、怖いんだから!!!」
「知るか!次はずそうとしたら、もっと高いとこ飛ぶからな!!」
「~~~~~~~~~~~~!!!」
「おじょう、落ちても、ぼく、たすける」
「!!!クロム君、大好き!!!」
「ぼくも、おじょ、だいしき」
クロム君を抱きしめて、濡れた軍服を着替えさせる。運動量の多いクロム君に着物は向かないので、甚平をたくさん縫ってみた。
何を着せても可愛いけれど、今日の紺色の甚平はクロム君の灰色の髪とマッチしてて、拝みたくなるレベルで可愛い。
「これ、プレゼント?ぼく?」
「そう、クロム君はこっちの方がいいかなって。どう?動きやすい?」
その場でクルンとバク宙(!)したクロム君がにっこり笑ったので気に入ったみたい。
夜なべしたかいがある!
「沢山作ったから、いっぱい汚していいからね?大きくなったらまた作り直してあげる」
甚平の裾をギュッと握ったクロム君がトコトコとリヒト様の所に行って、胸元にモモンガみたいにくっついた。どうかしたのかな?リヒト様もびっくりしてる。
「あるじ、おじょ、ないたら、ぼく、おこる」
「!?!?お、おぅ、泣かすかよ」
「ごめんなさい、して」
「!?!!!!」
「ふふ、あはははは!」
頭をガリガリかいたリヒト様が、私を抱き寄せて優しいキスをくれる。
満足したらしいクロム君が私の膝の上に戻って来たので、お食事エプロンをしてマフィンを出してあげると両手で持って食べ始めた。
「ふふふ、私の小さな騎士様は頼もしいね」
ふわふわな頭のてっぺんにキスをして、ミルクみたいな匂いを吸い込んだ。
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