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最終章 人族編
双子の誕生
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「親父!!始まった!!」
レスターが手のひらに魔法陣を出して話す。
わたしが産んだ小さな双子の卵に、中からヒビが入っている。
レスター出産時の失敗を踏まえて、産後私が落ち着いてから誕生の儀をするとリヒト様が慣習を無理やり変えたので、以前のようにクロム君がビリビリする何かを打つ事は無い。
慌てて縁側に飛び込んできたリヒト様と、息子二人が揺籠を覗き込む。
男三人が小さな揺籠にかじりついていて何だか可笑しい。
片方の卵は中から人間の小さな手が出て殻を割るけれど、そこで止まってしまい動かない。
手伝うのは御法度のようで、全員が見守っている。
「男三人に見られすぎて恥ずかしいんじゃない?」
「母上!チラリと見えた髪が金色でした!金竜です!!」
「陛下も金竜だし、そっちに似たのかもね?陛下ににてるかもね?性格とか」
三人が絶望した顔で私を見る。
何なのか。
「強いかな~!早く戦いたい!兄上にはまだ勝てないし、勝てるやつ欲しい!」
レスターは妹に何を求めているのか。
「でて、おいで」
クロム君が優しい。可愛い。
クロム君の優しい声を聞いたからかまた殻が割れ始め、金髪の人型赤ちゃんが現れた。小さな小さな金色の羽がちょこんと背中に出る。
「つむぎそっくり!!!!!」
「「 ははうえ、縮んだ!!! 」」
私の子なんだから私に似て当然なのに。
レスターがリヒト様に似すぎてるだけで。
恐る恐る腕に抱いたリヒト様が愛おしそうに赤ちゃんを見る。
「やばい、死ぬほど可愛い。番そっくり。俺の子……やばい」
リヒト様語彙がしんでるな。
パリパリともう一つの卵にもヒビが入る。またそこで止まったなと思ったら中から小さな爆発が起こり、殻が見事に全て吹き飛んだ。一瞬で三人が私の周りに三重の結界を出す。
——黒竜。小さな小さな黒い竜。
「おぉ~魔力、まぁまぁじゃん!」
————「ご誕生おめでとうございます。ルルリエ、参りました」
ルルリエさんが赤ちゃんの腕から採血をしている間にリヒト様が手をかざして空中に二枚の契約書類を出した。
「やはりな。もう名が贈られている。王家の報告書類じゃなくとも名は分かるのか」
エルダゾルク神との契約書類の一枚目、リヒト様の署名の下に————クルミ• リア• エルダゾルク とある。
「クルミちゃんかぁ、可愛い名前」
リアというのが竜国王家の血を継ぐ者という意味らしい。
「弟君の方は?」
リヒト様が書類を私に手渡し見せてくれてる。
秋・リア・エルダゾルク
「あれ?漢字だ。シュウくんだって」
「シュウと読むのか、異世界の文字か」
それぞれからとった血液を銀の器に出して、二人の親指に押し当てて拇印を押すリヒト様をぼんやり眺める。
私が嫌がらないように、すごく考えてくれたんだと思う。
そのまますぐに赤ちゃんを私に渡してくれる。
小さな赤ちゃんは本当に可愛くて、腕の中で目をまんまるにして私を見ている。
ふわふわした金髪の女の子と、真っ黒の黒竜。
二人ともリヒト様と同じ、紺色の瞳。金の瞳孔がキラキラしていてとても可愛い。
「クルミ魔力、よっわ~~~~!!!」
レスターが叫ぶ。
「そうなの?」
「まぁ妹姫が戦う必要はないし関係ねぇよ。お前らは紬とクルミを守る為に午後は俺と鍛錬な」
「うげぇ……」
「主、勝てない……」
「俺もテルガードに乗るからツキとケイに乗ってもいいぞ」
二人の顔が途端にワクワクしたものに変わる。
今の話のどこにワクワク要素があったのか。
リヒト様が私にくれる、穏やかな家族の時間。
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