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最終章 人族編
天空領お披露目会2
しおりを挟む「テト、嬉しそうだったね」
「テルガードが余計にお前になつくなぁ。最近は過保護にもなってきた気がする……」
「主人に似てきただけじゃない?」
「ガキ共が俺らの馬を全部乗りこなすのも考えものだな…………は!?お前家出し放題かよ!!」
気づいたか……。
「家出する様な事、しなきゃいいだけじゃない?」
リヒト様、ワナワナしてる。全部正論で返しただけなのに。
ミリーナさんが淹れてくれたお茶を、子供達を視界の端で捉えながらゆっくり飲む。
さわさわと流れる風が湖面を揺らし心地いい。
「お前だってあの真面目坊主と話しすぎなんだよ!」
真面目坊主って誰だよ。ルーファス王子?
「王弟妃がご挨拶もできなかったら困るのは誰でしょうか?」
「おっ前いつからそんな強くなりやがった!」
「リヒト様、今日は子供達、お母さんと石のお城に泊まるって」
「!?」
「レンガのお家は卵ちゃん達と、私達だけだよ?」
「!?!?」
「一緒に温泉、入ろうか」
「!!!!!!」
「この前の酒泉郷からお酒も取り寄せてあるよ?気に入っていたでしょう?」
エルダゾルクまでパイプを引こうとしてたもんね。ユアンさんに却下されていたけど。
「!!!!!!!!!!」
つーっと鼻血を出したリヒト様がガバッと口元を手で押さえて上を向いた。
なんで鼻血?
「ルース!!!!!吉報だ!!!リルベスの酒があるぞ!あとで取りに来い!!!」
ルース君まで鼻血を出してサムズアップしてる。
隣でルーファス王子がギョッとしてるのがわかる。
なんなのか。そんなに美味しいの?
今日はみんなお泊まりだ。石のお城のホテルは広いから何人でも泊まれる。
人は雇っていないので王宮から沢山使用人を連れてきているらしい。
リツさんが色々と手配してくれた。
「「 ははうえー! 」」
子竜がもつれ合いながら私の元に飛んでくる。
「二人ともびしょびしょだねぇ」
お揃いの黒のポロシャツにカーキの半ズボンが……新品の下ろしたてが……
「母上!ツキ達と山の奥に探検に行ってもいいですか!?」興奮したレスターが嬉しそうに飛び込んでくる。
「甚平にお着替えしたらね?風邪ひいちゃうよ。シーラフも連れて行くならルーファス様にちゃんと言うんだよ?お行儀よくお願いできたら行ってもいいよ」
二人をまとめてタオルで拭いてやりながらいうと、キャアキャアと中で暴れる。
よほど今日が楽しいらしい。
すぐにミリーナさんが甚平を出して(シゴデキ)二人に渡してくれる。
風邪をひかない様にわしゃわしゃと頭を拭いてやっていると横から呆れた様な声がかかった。
「竜人は風邪なんてひかねぇよ。俺もひいたことねぇし。竜人で風邪をひいたことあるやつなんて兄上ぐらいだろ」
二人ともじいっとリヒト様をジト目で見る。
「うおっ!何だよ!本当の事だろうが!」
「そうだったの?でも何となく気になっちゃうなぁ」
「良いのです!母上に拭いてもらうのが気持ちがいいのです!」
「ははうえ、タオル、きもちいい」
「クソガキ共!!」
ミリーナさんが苦笑しながら二人を手伝っていく。
ミリーナさんも子供達も分かってて私の好きにさせてくれていたのか…………
「母上~~!」
珍しくレスターが私の腕の中にきて首に手を回して来た。急に甘えたくなったのかな?出かける前に不安にでもなったかな。
レスターを抱いて立ち上がり皆から少し離れるとようやく首に回した手を解いた。
「アルトバイスの様子を見ていて下さい。何か少しおかしいので」
「アルトバイス?」
湖畔の奥の牧草地にいるアルトバイスはいつも通りまったりゆっくり草を食べている様に見える。
「変な感じは、しないけど……」
「杞憂ならよろしいのです。気にかけて頂ければ」
「ん、分かったよ。楽しんでおいで?」
子竜を放すと、矢のようにクロム君のそばに飛んでいく。
二人が手を繋いでルーファス王子の所へいくのをハラハラしながら見守る。リヒト様譲りのぞんざいな口調が出ない事を祈る!!
「王子殿下!シーラフと探検に行っても良いでしょうか!必ずシーラフを守ると誓います故!」
おぉなかなかやるじゃないの!ちょっぴり感動しちゃう!
「嬉しいお誘いありがとうございます。私もご一緒してもよろしいでしょうか、シーラフが殿下方と仲良くしているのを見てみたいのです。お邪魔は致しません。私は殿下達の様に飛べませんが、脚は早いですし跳躍もできます故」
「一緒に遊んでくれるのか!?」
あ、素が出ちゃった…………。クロム君までキラキラした目をしてルーファス王子を見てる。
「はは、では行きましょうか」
ルーファス王子が立ち上がった途端、身体が虹色に変わりグニャっととろけた様になる。次の瞬間には大きな体躯の黒豹がそこにいた。黒いビロードの様な毛並みが美しい。
「背中に乗ってもいいですよ」
ルーファス王子の声。二人のテンションがMAXになってもつれ合いながらルーファス王子の背中に乗る。
「では、御前、失礼します。陽が落ちる前にはお二人を必ずお戻し致しましょう」
私とリヒト様に黒豹の姿のまま頭を下げたルーファス王子はツキ達を連れて山の中に颯爽と消えて行った。
「「「 かあっこいい~~~~~~!! 」」」
私とクレアちゃんとレアットちゃんの声が重なる。
「「「 はぁ!? 」」」
リヒト様とルース君とクロードさんが同時に声を出す。
「はぁ~~~ルーファス様、絶対モテるよねぇ!あれは反則!!」
「かぁっこいいぃぃぃ!!王子様だよ!?私顔溶けてるかも!!」クレアちゃんが悶絶してる。
「新たな推しが…………あれはやばい……他種族なのにキュンキュンがとまらない…………」レアットちゃんがぼうっとしてる。
「ルーファス様は婚約者もいらっしゃいませんし国内一の優良株、ファンクラブがございますよ。ご本人はあまり興味がないご様子ですが」
ユトミアさんが苦笑しながら教えてくれた。
「「「 はぁ~~~~~~♡♡♡ 」」」
キュンキュンのため息まで被った。
三人で手を取り合ってしまう。
「俺のがいいだろうが!俺だって王子だ!」
「くそ、爵位じゃ勝てねぇ~~~!次回のトーナメントで殺すか~~~」
「………………」
クロードさんは推し黙った。
「公式ファンクラブ情報によれば可愛い系がお好みだとか」
「お前もうあいつの前にでるな!!!」
「クレアもまずい~~~~~~」
外野がうるさいな。推しぐらいいたっていいのに!
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