【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

天空領お披露目会3

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「セリュタ伯爵、自分は槍使いなのです。本日はお会い出来るのを楽しみにしておりました。一度手合わせ願えれば嬉しいのですが……」

 ユトミアさんが頬を染めて話す。
セリュタ伯爵って誰だ?

「クロードの事だよ。あいつは父親がもう亡くなったからな、爵位を継いでる。領地は代理の者に任せている」

 リヒト様が耳元で説明してくれる。へぇ。

「承知した。ここでは危ないのであちらへ」
クロードさんが開けた牧草地を目線で示す。

「獲物を新調しようと考えているのですが、アドバイスを頂きたく……」

 クロードさんが優しく笑って、では行きましょうかと腰を上げた。

 私がキョトンとしているとまたリヒト様が説明をしてくれる。

「クロードは槍使いの中では神扱いなんだよ。あいつ以上の槍使いはいない」

 へぇ~~~。

 ちょうどユトミアさんの天馬リンネットちゃんも帰ってきて、二人が天馬と共に歩く姿を見つめる。
体の大きなクロードさんに負けないユトミアさんは並んでいてバランスがいい。

 牧草地についても何やら楽しそうに武器を触ったりしていて全然手合わせをする様子はなく、かなり盛り上がっているみたい。色々な縁があるなぁと思ってぼんやり見ていると、私達の近くまでアルトバイスが戻ってきていた。
湖畔でのんびり水を飲んでる。

 レスターはああいっていたけれど、おかしな所はない様に思う。

 それよりも————隣にいるレアットちゃんの方が様子がおかしい。
クロードさん達の方を向いて唇を噛んでる。
ああ、やっぱりねと思いレアットちゃんと話す。

「レアットちゃん?クロードさんは優しくて、誠実だけど…………優しすぎて、誠実すぎるんだよ。自分の事より相手の女の子がどう思うかばっかり考えて、行動には移してくれないよ?怒っておいで?」

「…………………………」

 レアットちゃんは動かない。唇を噛んだまま。

「あんな優しくて誠実な人、もうぜったい現れないよ?リヒト様がいなかったら、私が恋人になりたかったって言ったでしょう?」

ガタガタっと後ろで何かが崩れる音がする。リヒト様、動揺したな。

「…………………………」

「おしゃれ、する?こういう時のために、取っておいているのでしょう?」

 コクンと頷いたレアットちゃんを確認してミリーナさんを呼ぶ。

「レアット様、わたくしが御髪をおさわりしても?」

「ミリーナ様に、して頂く、わけには……!」
 
 レアットちゃんが狼狽して、私に助けを求める視線を送る。
ミリーナさんは伯爵家、レアットちゃんは子爵家だから、遠慮があるのかも。しかも当のご本人のお母様だし。ミリーナさんが苦笑して話す。

「まぁまぁ、わたくしはクロードの母である前に妃殿下の侍女なのですよ?気遣いはいりません。どうぞこちらへ」

 レアットちゃんをソファーに座らせ、おさげ髪を丁寧に解いていく。ミリーナさんに任せておけば大丈夫。

「ミリーナさん、私の着物も宝飾品も何でも使ってください」

 私のセリフにリツさんがレンガのお家へすっ飛んで行った。リツさんに分かるのかな。ああ見えてシゴデキだから大丈夫だね。

 お母さんが、大きなカバンから自分の化粧品を山の様に出していく。
ミリーナさんは髪をとかしながらしっかり目線で化粧品の確認をしてる。大人女性二人の阿吽の呼吸。

 ミリーナさんがレアットちゃんの髪を優しくブラシですいている間にゼエゼエ言ったリツさんが木箱と衣桁を抱えて戻ってきた。

 私の打掛を出して衣桁にかけ、レアットちゃんをみんなの視線から遮る衝立をすぐに作る。
うんやっぱりリツさんシゴデキ。

 一応アルトバイスの様子を見ていると、ごく稀にクロードさん達の方へ視線を送る。言われないと分からない程度。本当に一瞬。レスター、よく分かったなあ。

「レアット様、お綺麗でございますよ」

 シゴデキミリーナさんによって長い水色の髪を天女風にゆわれたレアットちゃんは本当に綺麗。
所々に銀の小さな花飾りをあしらわれていて本物の天女みたい。

「レアット、眼鏡、あずかる?お化粧もしてもらったんでしょう?」クレアちゃんが優しく言う。

「ん、お願い。行ってくる。ミリーナ様、ありがとうございます」

「最後にこれを。妃殿下のお気持ちですから余す事なくおつかいくださいまし」

 鮮やかなブルーの打掛を上からかけて、細い帯を腰に巻き付けて何箇所かでリボン結びが作られていく。
あの着方、私も今度やってもらおう。可愛い。

「レアットちゃん、アルトバイスも連れて行ってくれる?」

「アル君?」
レアットちゃん、アルトバイスのことアル君って言うんだ……。

「ふふ、そう。アルトバイス、おいで」

 私の言葉に反応してアルトバイスがかけてくる。

「アルトバイス、あなたもご主人様とおんなじなのね?優しい子。でも…………男でしょ!!頑張りなさい!!!!!」

 みんなビックリしてるな。ユアンさんにまた詰められるかも。

 アルトバイスもびっくりした目で私を見た後、決心した様に自分からレアットちゃんのところまで回り込んで行った。

「レアットちゃん、リンネットちゃんにご挨拶してからクロードさんを怒ったらいいよ。いくら鈍感でも、分かるでしょ」

「うん。妃殿下、分かった。ボコボコにしてくる」

 眼鏡を外してクレアちゃんに渡したレアットちゃんは、すっごく美人のおしゃれさんになったのに喧嘩に行く様にドスドスと歩き出す。アルトバイスを連れて。
因みに眼鏡、伊達眼鏡だった。

 疲れたのでリヒト様の膝の上にどかっと座るとぎゅうと抱きしめて下さった。

「アルトバイスの伴侶だったか…………」
リヒト様が唖然とした視線を前に投げたまま言う。

「そうみたい、アルトバイスは大丈夫。それよりもクロードさんだよ!」










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