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最終章 人族編
天空領お披露目会4
しおりを挟むクロードさん達のいる牧草地は三十メートルほど離れているため会話は聞こえない。
機嫌の悪そうなレアットちゃんがズンズン近づいて行って、リンネットちゃんにご挨拶をしているのが見える。
クロードさん、びっくりしすぎて体のけぞりまくってる。
アルトバイスとリンネットちゃんはすぐに打ち解けた様でスリスリしまくっていてラブラブだ。そんなに好きだったのならもっとアピールしなさいよ!わかりにくい!レスターがいなかったらスルーしてたよ!!!
「はぁ!?」とか「なんっ!?」とかクロードさんの出す大きな声だけがこちらに届く。
苦笑しながらユトミアさんがこちらに帰って来た。
「私は夫がいるのですが…………誤解させてしまった様で……申し訳ない……」
「ふふ、いいきっかけになったはずです、謝らないで下さい」
————「かがんで下さい!!!」
怒りのレアットちゃんが大声で怒鳴る声がする。
身長差、すごいもんね。
慌てふためいているクロードさんがよく分からないながらもしゃがんでレアットちゃんの顔を覗き込むと、レアットちゃんからクロードさんに勢いよくキスをした。
おおっと……!レアットちゃんの独特ワールドすごいな。
驚きすぎて尻餅をついたクロードさんに尚もキスを贈りまくるレアットちゃん。やるなぁ。
「リンネットちゃんはアルトバイスの恋人になったのです。許して頂けますか」
「それは……本当でございますか?私の天馬がセリュタ伯爵の天馬と?」
ユトミアさんは困惑している。
「懐妊もありうるかもしれません。私の離れでしばらく面倒を見たいのですが…………それは難しいでしょうか…………離れ離れは、可哀想で……」
「それは………………!!!でしたら私を留学者として雇って頂けませんでしょうか!!??できれば夫も一緒に!!セリュタ伯爵の元、自らを磨くチャンスを下さいませんか!!!!」
あ、圧がすごい、クロードさんへの憧れがすごい……
「いいぞ。夫婦でクロードの部下につけてやる」
リヒト様が何でもない様に答える。
「リヒト様!ありがとう!!!」
「おっまえ!その代わり俺がいなきゃクロードの恋人になりたかったなんて二度と言うなよ!!」
レアットちゃんを焚き付けただけなのに。
————「妃殿下」
ミリーナさんが私の前に膝をついて跪き頭を下げている。
「ミリーナさん?」
「愚息には勿体無い程のご縁、感謝申し上げます。セリュタの血はもう滅びるものと思っておりました。それでもいいと、あの子の性格を思い唇を噛んでおりました。セリュタ伯爵家、末代までの忠誠を妃殿下に」
ミリーナさん、泣いてる。
クロードさんのせいだよ!!!
「つむぎ、許すと言え」
「許します。ミリーナさん、もう顔を上げて下さい!」
「妃殿下、我が家は伯爵家。ルース殿のリオット侯爵家と合わせてあなた様の大きな後ろ盾となる事を誓いましょう。何なりとお申し付け下さいませ」
ルース君が向かいでヒラヒラと手を振ってる。
「では、リオット侯爵家セリュタ伯爵家は、今後レイリン公爵となるクロム君の後ろ盾になって頂けますか?レスターは王族ですから沢山の部下がつくでしょう。クロム君に何か困ったことがあった時は助けてあげてください。私の願いはそれだけです」
————「承知した。必ずクロム坊をりっぱな公爵に育てると約束する。我がセリュタ家が何者からも守ってみせる」
クロードさんとレアットちゃんが手を繋いで帰って来ていた。クロードさん、顔中に口紅ついてる…………
————「まぁ、それはいわれなくてもね~~~弟の面倒は見るよ~~~リオット侯爵家も承知~~」
————「シュトルツェ伯爵家も後ろ盾になりましょう。私は次男ですが、力の及ぶ限り」
ユアンさんも!?すごいなクロム君、人気者。
「こいつら三人は俺が王になるべくして集められた家門だぞ。兄上が元気になられた今となっては意味なかったが。そんだけの家門が後ろ盾につくなんて、紬はクロムを王にするつもりかよ」
「クロム君は王様なんてやりたくないと思うなぁ。あの子は多分、レスターと、下に生まれる子たちを守れるポジションを望むんじゃないかなぁ。まぁ、先のことは分からないけど」
◇◆◇
「はぁ~~~やっと邪魔者がいない。俺の番、俺の独り占め」
「邪魔者って…………」
レンガのお家で二人きり。あ、卵ちゃん達は居るけど。
「早く抱きたい。もう抱きたい」
「デリカシーない!!!!!せっかくこんなに素敵な所にいるのに!!!」
夫婦のベットでベッドボードに背を預け、後ろから抱き込んでくれている。
「あ!あのね、話しておく事があって…………」
「抱いた後でいい?」
「駄目。ちゃんと聞いて」
ガサゴソと動き出した手を叩いて止めようとするけど全然止まらない。無視して話すしかないか…………。
「あのね、私の繁栄の加護、レスターに遺伝してるみたい」
ピタッと不埒な手が止まる。
「何、だと……?」
「駄目だった?今日アルトバイスの異変に気がついたのはレスターだよ。なんなら多分私より力が強いかも?私は気づけなかったから…………」
ガバッと立ち上がり、ベットの周りをうろうろしたリヒト様は手から魔法陣を出して叫ぶ。
「ユアン!すぐ帰る!お前も来い!!兄上にお会いする!!」
「行ってらっしゃ~い」
ハッときづいたリヒト様はすっごく悲壮な顔をして「待ってろ!!!絶対寝るなよ!!絶対だぞ!!」と言って慌てて着替えて出て行った。
人間が絶滅危惧種だと言われた時から何となく気が付いていた。竜人もそうなんじゃないかって。
子どもが二人産まれれば国から表彰されると聞いた。
子ども二人が産まれたところで人口は横ばいだ。
大多数が一人もしくは産まれないとしたら、転がる様に数は少なくなっていたはず。
寿命が長い分、人間よりはマシというだけで。
リヒト様は私に何も言わないでいてくれたんだと思う。人間と竜人を天秤にかける様な事を私にさせたくなかったのだ。偽物の離れから帰った後も、私に大きな重責を負わせたくないから言わなかっただけで、竜人も絶滅の危機に瀕している。
レスターが王になれば加護の力は私より多くの竜人に広がるだろう。
あの子は竜人族の光になる。
今日は色々あってつかれたけれど、すごく幸せ。
リヒト様がいて、私に幸せをくれる。
私が幸せで、子供達が幸せで、それを見ていてくれる。
それだけなのに、竜人族が繁栄していく。
私の力じゃない。これはリヒト様の力。
優しくて、包み込んでくれて、子供達を愛してくれる。
その結果なだけ。
トラウマだって、きっとどんどん良くなる。
ウトウトと微睡む様な眠りがやってくる。
幸せの場所で、幸せの眠りがやってくる。
————「寝てる!?嘘だろ!!俺可哀想!!」
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