【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

第二陣

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「あ~~~こん中にもいねぇよ、親父」

 陛下のお見合い作戦第二弾のお姫様達が到着したパーティー会場で、リヒト様の肩に乗ったレスターが言う。今回は他国のお姫様だけではなく、エルダゾルク辺境の貴族の娘も招いている。数うちゃ当たる作戦。

 少しずつ、私も他国の人が集まるパーティーに参加するようにしている。今回はリヒト様やレスターがエスコートする様な国のお姫様はいないみたいだけれど、私がいた方が牽制にもなるそうだ。リハビリに、ちょうどいい。

「ダメか…………兄上と紬との縁は俺よりは薄いんだろうな!?」

「んな事しってどーすんだよ!親父がしっかり母上を大切にしてりゃあいいだろうが!!!」

 レスター、口悪いな…………。
不良予備軍の恋のキューピッド。

 当のご本人である陛下は王座でクルミを膝に抱いてデレデレしてる……絶対うまくいかないって気がして来た…………。

「相性もわかるけど、好意もわかる。あの姫達はほぼ親父の側室ねらいだな」

「クソが!!!兄上がヘタレなばかりに!」

「ふーーーーーん」

 私のセリフにギクッとしたリヒト様がギギギと音がしそうな素振りで首をこちらに向ける。

「はぁ、親父、兄上の家は管理人を付けてあるからな。いつでも行ける」

「え!そうなの!?すごい二人とも!あのお家、可愛くて気に入ってたんだよね!」

「主…………がんばれ……」

 クロム君が可哀想な物を見る目でリヒト様を見る。

「母上、僕も行ってみたい。絵本ある?」
クロム君の首に巻きついた竜体の秋が言う。
秋は着替えが面倒らしく、竜体でいる事が多い。竜体の方はしゃべりずらいと聞いていたけれど、秋は淡々と話すせいか、そんな事もないらしい。

「秋は卵だったもんねぇ。絵本沢山持っていこう!」

「父上、母上とクルミはお任せください」
淡々と秋が言う。眠そうに。
秋はいつも気だるげ、生まれたばかりなのに……。

 秋の魔力もとても高く、クロム君とレスター、秋がいれば、他国の軍隊や騎士団を簡単に潰すぐらいには強い。

「最悪だ!!!お前らはジジイ共の所へ行け!クソガキ共が!」

「殿下、仕事してください」
絶対零度のテンションでユアンさんが言う。

「い、行きたくねぇ……紬、一緒に来い!」

「はーい」
ま、しょうがないか。

 リヒト様にエスコートされてご挨拶に向かおうと歩き出すと、レスターが腕の中に来た。あれ?珍しい。クロム君と秋は先生達の所に行ったのに。

 見渡すとお姫様達はいろんな種族がいる。
熊、ワニ、らへんはなんとなくわかる。狐の尻尾や犬の耳で判別がつく獣人もいるけれど、なんの獣人かさっぱり分からない人達が大半だ。耳の形と尻尾だけじゃあよく分からない。

「王弟殿下と正妃様にご挨拶申し上げます」

 皆頭を下げて綺麗なカーテシーを披露する。
豪奢なドレスと宝飾品がホールのシャンデリアの光を受けてキラキラと輝いている。

「礼はいい、皆陛下との時間を楽しんでもらえれば嬉しい」

 お仕事モードのリヒト様が答えると、十人程の令嬢が顔を上げてウットリとリヒト様を見る。

 陛下もイケオジなのになぁ。
なんでいつもリヒト様に人気が集中しちゃうんだろ。

「母上、喉がかわきませんか?あちらに飲み物があります故、参りましょう。あとは親父とユアンに任せれば大丈夫です!」  

「あ、うん……」

 リヒト様はちゃんとお仕事モードになっていて怖いくらいなのでもう大丈夫かな。

 レスターと桃のジュースを飲んで壁の花になる。
ここから見ても、リヒト様人気はすごい。

「ねぇレスター。陛下だってかっこいいのに、なんでモテないんだろ」

「伯父上はずっとご病気でしたからね。弱い個体と認識されています。魔力量は割とありますがヘタレですので戦いの場にも来ない。魔力はあってもそれを使う度量がないとバレています。隣に親父がいれば、獣人は皆親父に目が行くのが当然です。強いですから」

「へぇ。強さってそんなに大切?」

 レスターは一瞬考え込んでから続ける。

「魔力量で大体ですが強さがわかりますし……貴族は力を求めますから……。伯父上は来年のトーナメントに出ればいいのです。強さをちゃんと示せば」

「それは…………むりそうだねぇ……」

 陛下はポンコツだからなぁ。

「それより母上、一人だけ親父に頭を下げたままの一番後ろのご令嬢。あれ、ユアンの相手です」

「へ!!?!」

 とんでもない発言に素っ頓狂な声が出てしまった!!!

「クロード!ルース!母上の護衛を任せる!」

 私がびっくりしている間にレスターは私を二人に任せて図書室へと飛んでいった。

「つむつむ~~~鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してるよ~~~」  

「紬ちゃん、大丈夫だ。今回の姫達に力の強い国の姫はいない。リヒトに簡単には近づけない」

 レスターに命令されてやってきた2人が私の顔を見て勘違いのコメントをする。

「あ、ええと、うん……」

 もう少しよく見たくて、リヒト様の所に戻り挨拶の輪に入る。後ろからクロードさんとルース君も付いてくる。

 リヒト様はめっちゃ怖い冷たい顔でご令嬢の相手をしているし、こっちはもう放っておいて、煌びやかな集団に目を向ける。

 一番後ろで一人だけリヒト様の方を見ずに目を伏せたご令嬢。バーンとした迫力のある美人が多い中、一人だけはかなく、楚々とした雰囲気がある。薄い銀色の髪、涼やかな紫の目。表情も硬く、貴族然としている。

「あの、あちらにお庭があるのです。少し、お話し致しませんか?」

 私が近づいて例のご令嬢に話しかけると、周りのおしゃべりがピタッと止んだ。

 貴族達が皆こちらに注目しているのがわかる。

「王弟妃殿下に……ご挨拶、申し上げます。ヤクトア辺境伯が長女、ヤノと申します。勿体無いお誘い、喜んでお受け致します……」

 は、儚い……押したら飛んでいってしまいそう……!
天女風の着物を着て、カーテシーではなく膝を折って跪いた。辺境伯と言っていたのでこの国のご令嬢なのだろう。

 振り返るとリヒト様とユアンさんがびっくり顔でこちらを見ている。
あ、うん、ユアンさんかぁ。
よくわかったなぁレスター。彼女、ユアンさんと既に知り合いじゃないかなぁ。

「さぁ、まいりましょう?」

「はい」







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