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オヤの街のハーフリングとオーク
206.ラーキの秘密
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ラーキが森と草原を隔てている。ラーキの根は深く、多少の衝撃でもビクともせず、少し捲れ上がった根には茎と同様に棘が見られる。
これでは、何でも喰い尽くすオークであっても簡単に喰らう事は出来ない。そして、ホビット族は地下通路を迷路のように張り巡らせて、オークだけでなく草原に近付く者を監視している。
「空を飛べない限りは、ラーキを越える事は出来そうにないな」
『私達は、どうするの?空は飛べるわよ♪』
「ハーフリング族の気配も消えたし、オークの姿も見えないなら、さっさと渡るとするか」
俺の言葉でシナジーがラーキの花畑に霧を立ち込めさせる。近くには気配は感じなくても飛んでいる姿は遠くからでも分かるし、やはり隠せるものは隠したい。
霧の中にいるがシナジーの視覚を通して、ラーキの花畑の終わりが見えてくる。花が咲き誇っているのはラーキだけで、そこを越えると緑の草原に変わり、草丈も膝下までとラーキよりも低くなる。
「コアも出てきてイイぞ!」
「はい、ご主人様」
声と同時に、ネコ耳の少女が現れる。やはり、エルフ特有の尖った耳は見えない。そして、何故かのメイド服に変わっている。
「コア、その服はどうしたんだ?」
「あの服のままでは素性がバレてしまう可能性があるので、影の中で作ってみました。お嫌いですか?」
「いやな、その格好だと主従関係に見えると思ってな。変な誤解を与えてしまうとイロイロと面倒臭いだろ」
「ですが、カショウ様はご主人様ですので。それとも似合ってませんか?」
コアの瞳に涙がウルウルと滲む。咄嗟にチェンを見ると、慌てて顔を背ける。
「大丈夫だ、似合ってるよ。だけど、名前呼びでもイイんだぞ」
「似合ってますか♪それなら良かったです。それに、ここには誰もいませんので、“ご主人様”とお呼びしても問題ありません!」
横目でチェンを見ると、肩が震えている。これ以上は、この話題を引っ張ってはいけないと感じて本題を切り出す。
「コア、ラーキにはエルフ族が関係しているんじゃないか?」
「どうして、分かったのですか?」
泣きそうだった顔から破顔したと思えば、驚いた顔になる。族長という立場から解放されたせいなのか、コロコロと表情を変え計算や駆け引きは感じさせない。
「これっていう理由はないんだけど、クオカの街から迷いの森を抜けるときは、最短で南に向かったからかな。東からの侵入者は警戒しているけど、南への警戒は緩いような気がした。そんな感じかな」
「そんなつもりはないのですが、それでも少しは影響しているのかもしれませんね。ラーキは、エルフ族が召喚した精霊です」
「えっ、この花畑全体が精霊で、エルフ族が召喚したっていうのは、どういう事だなんだ?」
「はい、そういう言い伝えがあります。先々代の時代なので、詳しくは分かりません。爺なら知っていると思いますが、それでも遥か昔の話でお伽噺のようなものです」
召喚魔法にも種類がある。一般的なのは、魔力を提供する対価として精霊の力を借りる。魔力が尽きれば召喚も終わりの、最も分かりやすい関係になる。
しかし、エルフ族が行ったのは生命力を対価とした召喚になる。保有魔力が多いエルフであっても、無限に魔力が続くわけではない。しかし、エルフの寿命は長く何千年と生きる。だから、先々代の族長を含め何人かのエルフが魔力ではなく生命力を提供する変わりに、ラーキの精霊をこの草原に召喚した。
もちろん魔力を提供すれば、対価は魔法やスキルとなる。それが生命力を提供したのであれば、召喚された精霊は生命力が尽きるまで生身の体を得ることになる。
そして、生命を持つことになれば環境が大きく左右する。悪い環境下であれば寿命は短くなり、良い環境であれば長くなる。
「ラーキの世話しているのが、ハーフリング族なのか?」
「はい、そういう事になります。エルフ族はオークを防ぐ壁を手に入れ、ハーフリング族は身を護る盾を手に入れた。そういう言い伝えとなっています」
「自分達の命を削って召喚した精霊を、ハーフリング族に任せたんだ。エルフ族がラーキの世話をしても良かったんじゃないのか?」
「それは、オークがエルフ族を目の敵にするからです。他の者を襲う時とは違う、明らかな凶暴性を見せます。だから、オークの目には触れないようにホビット族を世話人として契約したのです」
「こんな所に来てしまったけれど、コアは大丈夫なのか?」
これでは、何でも喰い尽くすオークであっても簡単に喰らう事は出来ない。そして、ホビット族は地下通路を迷路のように張り巡らせて、オークだけでなく草原に近付く者を監視している。
「空を飛べない限りは、ラーキを越える事は出来そうにないな」
『私達は、どうするの?空は飛べるわよ♪』
「ハーフリング族の気配も消えたし、オークの姿も見えないなら、さっさと渡るとするか」
俺の言葉でシナジーがラーキの花畑に霧を立ち込めさせる。近くには気配は感じなくても飛んでいる姿は遠くからでも分かるし、やはり隠せるものは隠したい。
霧の中にいるがシナジーの視覚を通して、ラーキの花畑の終わりが見えてくる。花が咲き誇っているのはラーキだけで、そこを越えると緑の草原に変わり、草丈も膝下までとラーキよりも低くなる。
「コアも出てきてイイぞ!」
「はい、ご主人様」
声と同時に、ネコ耳の少女が現れる。やはり、エルフ特有の尖った耳は見えない。そして、何故かのメイド服に変わっている。
「コア、その服はどうしたんだ?」
「あの服のままでは素性がバレてしまう可能性があるので、影の中で作ってみました。お嫌いですか?」
「いやな、その格好だと主従関係に見えると思ってな。変な誤解を与えてしまうとイロイロと面倒臭いだろ」
「ですが、カショウ様はご主人様ですので。それとも似合ってませんか?」
コアの瞳に涙がウルウルと滲む。咄嗟にチェンを見ると、慌てて顔を背ける。
「大丈夫だ、似合ってるよ。だけど、名前呼びでもイイんだぞ」
「似合ってますか♪それなら良かったです。それに、ここには誰もいませんので、“ご主人様”とお呼びしても問題ありません!」
横目でチェンを見ると、肩が震えている。これ以上は、この話題を引っ張ってはいけないと感じて本題を切り出す。
「コア、ラーキにはエルフ族が関係しているんじゃないか?」
「どうして、分かったのですか?」
泣きそうだった顔から破顔したと思えば、驚いた顔になる。族長という立場から解放されたせいなのか、コロコロと表情を変え計算や駆け引きは感じさせない。
「これっていう理由はないんだけど、クオカの街から迷いの森を抜けるときは、最短で南に向かったからかな。東からの侵入者は警戒しているけど、南への警戒は緩いような気がした。そんな感じかな」
「そんなつもりはないのですが、それでも少しは影響しているのかもしれませんね。ラーキは、エルフ族が召喚した精霊です」
「えっ、この花畑全体が精霊で、エルフ族が召喚したっていうのは、どういう事だなんだ?」
「はい、そういう言い伝えがあります。先々代の時代なので、詳しくは分かりません。爺なら知っていると思いますが、それでも遥か昔の話でお伽噺のようなものです」
召喚魔法にも種類がある。一般的なのは、魔力を提供する対価として精霊の力を借りる。魔力が尽きれば召喚も終わりの、最も分かりやすい関係になる。
しかし、エルフ族が行ったのは生命力を対価とした召喚になる。保有魔力が多いエルフであっても、無限に魔力が続くわけではない。しかし、エルフの寿命は長く何千年と生きる。だから、先々代の族長を含め何人かのエルフが魔力ではなく生命力を提供する変わりに、ラーキの精霊をこの草原に召喚した。
もちろん魔力を提供すれば、対価は魔法やスキルとなる。それが生命力を提供したのであれば、召喚された精霊は生命力が尽きるまで生身の体を得ることになる。
そして、生命を持つことになれば環境が大きく左右する。悪い環境下であれば寿命は短くなり、良い環境であれば長くなる。
「ラーキの世話しているのが、ハーフリング族なのか?」
「はい、そういう事になります。エルフ族はオークを防ぐ壁を手に入れ、ハーフリング族は身を護る盾を手に入れた。そういう言い伝えとなっています」
「自分達の命を削って召喚した精霊を、ハーフリング族に任せたんだ。エルフ族がラーキの世話をしても良かったんじゃないのか?」
「それは、オークがエルフ族を目の敵にするからです。他の者を襲う時とは違う、明らかな凶暴性を見せます。だから、オークの目には触れないようにホビット族を世話人として契約したのです」
「こんな所に来てしまったけれど、コアは大丈夫なのか?」
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