222 / 329
オヤの街のハーフリングとオーク
222.聴覚スキルの性能
しおりを挟む
「なっ、なっ、何言い出すんすかっ。姐さんにそんなこと思っちゃねーっすよ」
「スキルを使う必要もなかったな」
『何言うかと思ったら、今さらそんな事聞くの?そんなの分かりきってるでしょ。そんなの皆知ってるわよ。気付いていないのは、あなたとチェンだけじゃないの?』
「えっ、そうなのか?」
周りを見渡すと、ブロッサもソースイも黙って頷く。あまり感情の出さない2人だけど、少し呆れた表情を見せる。
「いったい、どーなってんすか?何が起こって、俺はどうなるんすっか?」
「ちょっと、新しいスキル実験台になってもらっただけだから気にしないでくれ。それにもう、終わったから好きにして大丈夫だぞ」
そして、チェンは呆気に取られて呆然としている。いきなり色々な事が起きすぎて、完全に処理能力を超えてしまっている。
『吸収したのは、聴覚スキルなのね。さしずめ、心の声が聞こえるってところかしら』
「そうみたいだな。聴覚スキルならクオンの負担を減らしてやれるもと思ったけど、心の声なら役に立ちそうにないな。封印したい面倒臭いスキルが増えたな」
『そうね、問題はその聴覚スキルはどこまで分かるの?今までのスキルなら、どれもがチート級の凄い性能ばかりでしょ』
『まだ、微妙な感じで何となくでしかないな。好意があるとか悪意があるって事は分かる。でも思考が読み取れる訳じゃない。スキルが上がれば、もっも聞き取れるのかもしれないけどな』
そこでチェンの表情がハッとなり、そして気付く。
「えっ、旦那!どういう事っすか?さっきは俺の考えてた事をズバズバと言ってたじゃないっすか!」
「そんなの、カマかけたに決まってるだろ。心の声が聞こえたのは、ムーアに話しかけられた時だけ。でも、それはハッキリと聞こえたぞ!」
少し怯んだが、それでもチェンは俺にだけは勝とうと必死に食い下がってくる。
「それ本当に、俺の声っすか?ブロッサさんの声じゃないんすか?また、カマかけるのは通用しないっすよ?」
「それって、ムーアに対して好意がないって言いたいのか?」
「そっ、それは、そんなじゃ···。ただ沢山いれば、そんだけの感情があるじゃねーですか。聞き間違えの可能性だってあってもおかしくねーすっよ」
「往生際の悪い奴だな。俺と精霊は深い契約関係にあるんだぞ。話さなくても、念じれば頭の中に声は届く。その声に聞き間違えなんて起こらないんだよ!」
『あらチェン、残念ね。そこまで否定するなんて、私への想いはその程度なのね?』
「姐さん、違いやすぜっ。そんなんじゃ、ありやせん。あっしは、姐さんに一生付いていきやすっ!」
ソースイとハンソとは逆転した主従関係が、今誕生したのだと思う。何を提供するわけでもなく、精霊にただ使われるだけの関係になるのかもしれないが、こんな関係性もあって良いのかもしれない。チェンの表情も、聞こえてくる感情にも、そう思わせるだけの説得力がある。
「ヴオオオォォォォーーーッ、ヴオオオォォォォーーーッ」
青いオークが消滅した事で、再び叫び始める赤いオーク。咆哮のように聞こえていた声も、今はハッキリと何を言っているかが分かる。
“殺してやる、殺してやる”と繰り返し叫んでいる。ウィプス達に全身をサンダーストームで焼かれても、ホーソンやチェン達に足止めされても、俺の方だけを見つめて最短距離で近付こうとしている。
「殺してやるって言ってる割には、少し変なんだよな?」
『何が変なの?キングを倒されたんだから、当たり前の反応でしょ』
「でもな、言葉や表情の割には聞こえてくる感情はあまり怒りを感じないんだ。言葉や表情と、感情のバランスが釣り合っていない」
『私にはオークの感情が聞こえないから、何とも言えないわね』
「そうだな、怒りの感情というよりイライラして不機嫌な感じに近いかな。これならチェンの、片想いの方がよっぽど強く感じるな」
『チェン、こっちに来て♪』
「姐さん、何っすか」
ムーアが、じっとチェンを見つめる。
『どう、カショウ?どっちが強く感じる?』
「圧倒的に、チェンの方が強いな。オークの感情なんて、チェンの1割にも満たないな」
『その程度なの?それなら、大したことないわね』
また、弄ばれた事にも気付いて悲しい表情を見せるが、チェンからは悲しい感情は聞こえてこない。
「スキルを使う必要もなかったな」
『何言うかと思ったら、今さらそんな事聞くの?そんなの分かりきってるでしょ。そんなの皆知ってるわよ。気付いていないのは、あなたとチェンだけじゃないの?』
「えっ、そうなのか?」
周りを見渡すと、ブロッサもソースイも黙って頷く。あまり感情の出さない2人だけど、少し呆れた表情を見せる。
「いったい、どーなってんすか?何が起こって、俺はどうなるんすっか?」
「ちょっと、新しいスキル実験台になってもらっただけだから気にしないでくれ。それにもう、終わったから好きにして大丈夫だぞ」
そして、チェンは呆気に取られて呆然としている。いきなり色々な事が起きすぎて、完全に処理能力を超えてしまっている。
『吸収したのは、聴覚スキルなのね。さしずめ、心の声が聞こえるってところかしら』
「そうみたいだな。聴覚スキルならクオンの負担を減らしてやれるもと思ったけど、心の声なら役に立ちそうにないな。封印したい面倒臭いスキルが増えたな」
『そうね、問題はその聴覚スキルはどこまで分かるの?今までのスキルなら、どれもがチート級の凄い性能ばかりでしょ』
『まだ、微妙な感じで何となくでしかないな。好意があるとか悪意があるって事は分かる。でも思考が読み取れる訳じゃない。スキルが上がれば、もっも聞き取れるのかもしれないけどな』
そこでチェンの表情がハッとなり、そして気付く。
「えっ、旦那!どういう事っすか?さっきは俺の考えてた事をズバズバと言ってたじゃないっすか!」
「そんなの、カマかけたに決まってるだろ。心の声が聞こえたのは、ムーアに話しかけられた時だけ。でも、それはハッキリと聞こえたぞ!」
少し怯んだが、それでもチェンは俺にだけは勝とうと必死に食い下がってくる。
「それ本当に、俺の声っすか?ブロッサさんの声じゃないんすか?また、カマかけるのは通用しないっすよ?」
「それって、ムーアに対して好意がないって言いたいのか?」
「そっ、それは、そんなじゃ···。ただ沢山いれば、そんだけの感情があるじゃねーですか。聞き間違えの可能性だってあってもおかしくねーすっよ」
「往生際の悪い奴だな。俺と精霊は深い契約関係にあるんだぞ。話さなくても、念じれば頭の中に声は届く。その声に聞き間違えなんて起こらないんだよ!」
『あらチェン、残念ね。そこまで否定するなんて、私への想いはその程度なのね?』
「姐さん、違いやすぜっ。そんなんじゃ、ありやせん。あっしは、姐さんに一生付いていきやすっ!」
ソースイとハンソとは逆転した主従関係が、今誕生したのだと思う。何を提供するわけでもなく、精霊にただ使われるだけの関係になるのかもしれないが、こんな関係性もあって良いのかもしれない。チェンの表情も、聞こえてくる感情にも、そう思わせるだけの説得力がある。
「ヴオオオォォォォーーーッ、ヴオオオォォォォーーーッ」
青いオークが消滅した事で、再び叫び始める赤いオーク。咆哮のように聞こえていた声も、今はハッキリと何を言っているかが分かる。
“殺してやる、殺してやる”と繰り返し叫んでいる。ウィプス達に全身をサンダーストームで焼かれても、ホーソンやチェン達に足止めされても、俺の方だけを見つめて最短距離で近付こうとしている。
「殺してやるって言ってる割には、少し変なんだよな?」
『何が変なの?キングを倒されたんだから、当たり前の反応でしょ』
「でもな、言葉や表情の割には聞こえてくる感情はあまり怒りを感じないんだ。言葉や表情と、感情のバランスが釣り合っていない」
『私にはオークの感情が聞こえないから、何とも言えないわね』
「そうだな、怒りの感情というよりイライラして不機嫌な感じに近いかな。これならチェンの、片想いの方がよっぽど強く感じるな」
『チェン、こっちに来て♪』
「姐さん、何っすか」
ムーアが、じっとチェンを見つめる。
『どう、カショウ?どっちが強く感じる?』
「圧倒的に、チェンの方が強いな。オークの感情なんて、チェンの1割にも満たないな」
『その程度なの?それなら、大したことないわね』
また、弄ばれた事にも気付いて悲しい表情を見せるが、チェンからは悲しい感情は聞こえてこない。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
現代ダンジョン奮闘記
だっち
ファンタジー
15年前に突如としてダンジョンが登場した現代の地球。
誰が何のために。
未だに解明されていないが、モンスターが落とす魔石はすべてのエネルギー源を代替できる物質だった。
しかも、ダンジョンでは痛みがあるが死なない。
金も稼げる危険な遊び場。それが一般市民が持っているダンジョンの認識だ。
そんな世界でバイトの代わりに何となくダンジョンに潜る一人の少年。
探索者人口4億人と言われているこの時代で、何を成していくのか。
少年の物語が始まる。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる