266 / 329
オヤの街のハーフリングとオーク
266.オニか魔物か
しおりを挟む
岩オニの右手と左手が争う不思議な攻防が繰り広げられるが、右手が左手を振り払うと手刀で左腕に埋め込まれた魔石を叩く。
パキッ
魔石にヒビが入ると、左手は力なく垂れ下がってっしまう。
岩オニの前腕に埋め込まれた魔石は、目のような形で3cm程しか表に出ておらず、腕の中に隠された大きさまでは分からない。しかしそれだけでも中位の魔物クラス以上の魔石の大きさがあり、簡単に破壊するとことは難しい。それを手刀で狙いピンポイントで魔石だけを破壊してしまうのは、岩オニが力だけではなく技量を備えていることを教えてくれる。
「それでも力だけで砕けるなら、上位種の魔石ではなそうだな」
『そうね。ポジティブに考えたらそうなるかしら』
そして邪魔する左手を排除すると、再び金棒に手を伸ばそうとするが、脚や体が言うことを聞かない。手を伸ばすが、体は屈まず足も曲がってはくれない。
今度は右手がガクガクと震え出し、それが全身に伝わるように広がる。
『怒りだけでなく、幾つもの恐怖の感情の声が混ざっているわね』
「岩オニと怒りと、体に埋め込まれた幾つもの魔石の恐怖だろうな」
「ヴォオオオオオオオオーーーーッ」
三度、岩オニが咆哮する。それは、怒りの咆哮でなく己を鼓舞する為の咆哮。そして右手の渾身の一撃が額の魔石を直撃する。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ
1発だけでなく2発3発と繰り返し魔石を殴り付ける鈍い音が響き渡る。額も拳も血に染まるが、それはどちらから流れている血なのかは分からない。
その奇行が繰り返される度に魔石の支配から解放されるかのように岩オニの怒りの感情は強くなる。
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ
しかし魔石の支配から解放されても、自身の体にダメージを与えてしまっている。感情は強くなっても、次第に殴り付ける拳の力は弱くなり、そして右手の動きが止まる。
「終わったのか?」
これだけの攻撃を受ければ魔石は無事で済まないと思うが、額は潰れた肉と血にまみれ原形を留めておらず、魔石がどうなっているかは分からない。
再び岩オニの感情の声が小さくなり、怒りの感情が小さくなる。
『いや、まだ終わっていないわね。声が小さくなるだけで、岩オニの感情は変わっていないわ』
岩オニの額の魔石が怪しく輝く。血にまみれている事で、さらに不気味な恐ろしさを醸し出す。
「あれだけの衝撃でも魔石は無事なのか···」
左腕の魔石を破壊した手刀とは比べ物にならないくらいの衝撃を受けても、額の魔石が破壊出来ていない。それは魔石が上位の魔物である可能性が高く、力だけでは破壊することは難しい。せめて魔力を帯びた金棒であれば可能だったかもしれない。
遂に右腕が力なく、ダラリと下に落ちる。そして、岩オニが自身を取り戻す唯一の機会が失われてしまう。
「魔石をコワ···ハヤ···ク···ロ」
最後に聞こえた、岩オニの消えるような言葉。そして残された時間は少ない。再び岩オニの意識が消えてしまえば、また狂暴な殺戮兵器が復活してしまう。
『願いを叶えてあげるの?』
「今魔石を壊せば、岩オニの体は元に戻ると思うか?」
『残念だけど、それは難しいと思うわ』
それだけでなく魔物化し操られた事であっても、岩オニがやってきた事は理解しているのだろう。そして、済んでしまったことは元には戻せない。
「元に戻れたとして、生きたいと願っているのだろうか?」
『残念だけど、それは無いと思うわ』
そして、タカオの廃鉱でのオルキャンの姿がフラッシュバックする。オルキャンは完全に魔物と化した為に、魔石を砕かれれば存在した一切の痕跡を残さずに消滅してしまった。今ならまだ、全てではないが岩オニの存在や痕跡は残す事が出来る。
「ソースイは、どう思うんだ?」
「元の体に戻る事はないでしょう。限りなく可能性が低い話を論じても、実りは少ないかと思います」
「分かったよ。岩オニを倒す理由は、残された物を有効に使う。それで良いんだな?」
俺の言葉に、ソースイは黙って頷く。それは父親である岩オニを殺すことを肯定し、それを出来るのは俺しかいない。
まだダメージを負って動けない岩オニの額にマジックソードを突き立てるが、一瞬だけ躊躇いが生まれる。ほぼ魔物化しているが、完全に魔物となったわけではない。
「小僧、早くしろ。坊主が見ているだろ」
最後の力を振り絞った岩オニにの声に動かされ、俺のマジックソードは額の魔石を砕く。
パキッ
魔石にヒビが入ると、左手は力なく垂れ下がってっしまう。
岩オニの前腕に埋め込まれた魔石は、目のような形で3cm程しか表に出ておらず、腕の中に隠された大きさまでは分からない。しかしそれだけでも中位の魔物クラス以上の魔石の大きさがあり、簡単に破壊するとことは難しい。それを手刀で狙いピンポイントで魔石だけを破壊してしまうのは、岩オニが力だけではなく技量を備えていることを教えてくれる。
「それでも力だけで砕けるなら、上位種の魔石ではなそうだな」
『そうね。ポジティブに考えたらそうなるかしら』
そして邪魔する左手を排除すると、再び金棒に手を伸ばそうとするが、脚や体が言うことを聞かない。手を伸ばすが、体は屈まず足も曲がってはくれない。
今度は右手がガクガクと震え出し、それが全身に伝わるように広がる。
『怒りだけでなく、幾つもの恐怖の感情の声が混ざっているわね』
「岩オニと怒りと、体に埋め込まれた幾つもの魔石の恐怖だろうな」
「ヴォオオオオオオオオーーーーッ」
三度、岩オニが咆哮する。それは、怒りの咆哮でなく己を鼓舞する為の咆哮。そして右手の渾身の一撃が額の魔石を直撃する。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ
1発だけでなく2発3発と繰り返し魔石を殴り付ける鈍い音が響き渡る。額も拳も血に染まるが、それはどちらから流れている血なのかは分からない。
その奇行が繰り返される度に魔石の支配から解放されるかのように岩オニの怒りの感情は強くなる。
ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ
しかし魔石の支配から解放されても、自身の体にダメージを与えてしまっている。感情は強くなっても、次第に殴り付ける拳の力は弱くなり、そして右手の動きが止まる。
「終わったのか?」
これだけの攻撃を受ければ魔石は無事で済まないと思うが、額は潰れた肉と血にまみれ原形を留めておらず、魔石がどうなっているかは分からない。
再び岩オニの感情の声が小さくなり、怒りの感情が小さくなる。
『いや、まだ終わっていないわね。声が小さくなるだけで、岩オニの感情は変わっていないわ』
岩オニの額の魔石が怪しく輝く。血にまみれている事で、さらに不気味な恐ろしさを醸し出す。
「あれだけの衝撃でも魔石は無事なのか···」
左腕の魔石を破壊した手刀とは比べ物にならないくらいの衝撃を受けても、額の魔石が破壊出来ていない。それは魔石が上位の魔物である可能性が高く、力だけでは破壊することは難しい。せめて魔力を帯びた金棒であれば可能だったかもしれない。
遂に右腕が力なく、ダラリと下に落ちる。そして、岩オニが自身を取り戻す唯一の機会が失われてしまう。
「魔石をコワ···ハヤ···ク···ロ」
最後に聞こえた、岩オニの消えるような言葉。そして残された時間は少ない。再び岩オニの意識が消えてしまえば、また狂暴な殺戮兵器が復活してしまう。
『願いを叶えてあげるの?』
「今魔石を壊せば、岩オニの体は元に戻ると思うか?」
『残念だけど、それは難しいと思うわ』
それだけでなく魔物化し操られた事であっても、岩オニがやってきた事は理解しているのだろう。そして、済んでしまったことは元には戻せない。
「元に戻れたとして、生きたいと願っているのだろうか?」
『残念だけど、それは無いと思うわ』
そして、タカオの廃鉱でのオルキャンの姿がフラッシュバックする。オルキャンは完全に魔物と化した為に、魔石を砕かれれば存在した一切の痕跡を残さずに消滅してしまった。今ならまだ、全てではないが岩オニの存在や痕跡は残す事が出来る。
「ソースイは、どう思うんだ?」
「元の体に戻る事はないでしょう。限りなく可能性が低い話を論じても、実りは少ないかと思います」
「分かったよ。岩オニを倒す理由は、残された物を有効に使う。それで良いんだな?」
俺の言葉に、ソースイは黙って頷く。それは父親である岩オニを殺すことを肯定し、それを出来るのは俺しかいない。
まだダメージを負って動けない岩オニの額にマジックソードを突き立てるが、一瞬だけ躊躇いが生まれる。ほぼ魔物化しているが、完全に魔物となったわけではない。
「小僧、早くしろ。坊主が見ているだろ」
最後の力を振り絞った岩オニにの声に動かされ、俺のマジックソードは額の魔石を砕く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~
スィグトーネ
ファンタジー
年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。
それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。
そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。
異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。
彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。
どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。
※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。
※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる