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オヤの街のハーフリングとオーク
265.岩オニの咆哮
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ハンソが、岩オニの頭に目掛けてハンドアックスを振り下ろす。いつものハンソとは違い、指示がなくとも自然とくり出した攻撃には全くの躊躇いがなく、完全に岩オニの頭り割にいっている。
急激なハンソの進化と鋭い攻撃に、岩オニは驚きながらも反応してみせる。後ろに引くのではなく、前に出て屈むようにしてハンドアックスを避ける。
ガキンッ
しかしハンドアックスを完全には躱しきれず、左の角が半ばで折れてしまう。折れた角は一度高く舞い上がると、岩オニに見せつけるかのようにゆっくりと落下して行く。
「ヴォオオオオーーーーッ」
初めて見せる岩オニの咆哮。ハンソに力負けしただけでなく、オニ族の象徴ともいうべき角を折られた事で、遂に奥底に秘められていた感情が溢れだしたのかもしれない。
「小癪な小僧が!」
微かに岩オニの感情の声が聞こえる。体中の血管が浮かび上がり腕や脚が倍以上に膨らむと、ハンソに抑えられていた金棒を強引に振り抜く。ソースイの魔力も限界に近かったのかもしれないが、金棒に振り飛ばされたハンソは一切の抵抗も出来ないまま、一直線に俺へと向かって飛ばされる。
ストーンキャノンやストーンバレットを吸収し進化したハンソの体を、何故かルーク達のレーザービームが迎え撃つ。岩オニの攻撃に利用されてしまったが、同じ俺の召喚精霊で仲間のハンソである。
しかし進化したハンソに対抗して、ルーク達も力を示そうとしているのかもしれない。レーザービームを受けたハンソの体は高温で真っ赤に染まり、徐々に体の大きさが小さくなる。しかし勢い自体を止めることは出来ていない。
「エトーーーッ」
ぶつかる寸前で召喚解除されたハンソの姿は消えてしまうが、最後にいつのもハンソの声が聞こえたような気がする。しかし、ハンソが消えてもハンドアックスだけは残されたままでこちらへと向かって飛んでくる。
ガンッ
それをミュラーの盾が受け止めてくれるが、ハンドアックスは盾に食い込み亀裂をつくっている。恐らく、マジックシールドでは砕かれて受け止めれることは出来なかっただろう。
『これが岩オニの感情の声ね。まだ小さな声だけど、確かに怒ってるわ』
今まで感情のなかった岩オニから、ムーアも感情の声を感じとる。
『今のは間違いなく、あなたに向けられた怒りね』
「恨むなら、俺じゃなくてソースイとハンソだろ!」
『あなたがストーンキャノンなんか使うからでしょ。それがなかったら、角は折られなかったんだから』
しかし、怒りの感情を露にして金棒を振るった岩オニは、それっきりで動きを止めてしまう。溢れだした感情に、体が戸惑っているのかもしれない。
「ヴォオオオオオオオオーーーーッ」
再び岩オニの咆哮が轟く。先の咆哮と比べると、比べ物にならないくらい大きくて長い。そして岩オニの怒りの声も大きくなるが、聞こえてくる感情の声は鬼の形相とは釣り合わないくらいの弱い声でしかない。
『あなたへの怒りよりも、思うように動かない体にイライラしてるわね』
「体は魔石に支配されているのかもしれないな。イッショ、岩オニの怒りを増幅出来るか?」
「カショウ、俺様に不可能があると思っているのか?」
「そうだな、頼りにしているよ。オリジナルの魔法吸収だって取り込む可能性があるんだし、古の滅びた記憶はまだある。イッショがそう言ってくれるなら助かるな!」
「うむ、何の話だったかな?“怒り”の精霊に、“怒り”を扱うことで不可能なぞあるはずがない。何せ俺様は、“怒り”の精霊だからな」
やはり俺には俺なりのやり方があって、コアのようにイッショを褒めて能力を引き出すことは難しいかもしれない。
そして無駄な事は一切話さないイッショが岩オニの怒りを増幅し始めると、岩オニの体はわなわなと震え出し、金棒をまともに持つことさえ出来ずに落としてしまう。
金棒を拾おうとする右手に対して、それを止めようとする左手。岩オニの中で魔石から人格を取り戻そうとする鬩ぎ合いが繰り広げられる。ただ、どちらの手が岩オニ自身なのかは分からない。
「返せ!」
岩オニからさらにハッキリと聞こえる感情の声。そして金棒を掴もうとしていた右手は、自身の顔を殴り付ける。それを止める為に、今度は左手が右手を掴む。
『自傷行為かしら?』
「いや、抑え込まれている原因を壊そうとしているのかもしれない」
急激なハンソの進化と鋭い攻撃に、岩オニは驚きながらも反応してみせる。後ろに引くのではなく、前に出て屈むようにしてハンドアックスを避ける。
ガキンッ
しかしハンドアックスを完全には躱しきれず、左の角が半ばで折れてしまう。折れた角は一度高く舞い上がると、岩オニに見せつけるかのようにゆっくりと落下して行く。
「ヴォオオオオーーーーッ」
初めて見せる岩オニの咆哮。ハンソに力負けしただけでなく、オニ族の象徴ともいうべき角を折られた事で、遂に奥底に秘められていた感情が溢れだしたのかもしれない。
「小癪な小僧が!」
微かに岩オニの感情の声が聞こえる。体中の血管が浮かび上がり腕や脚が倍以上に膨らむと、ハンソに抑えられていた金棒を強引に振り抜く。ソースイの魔力も限界に近かったのかもしれないが、金棒に振り飛ばされたハンソは一切の抵抗も出来ないまま、一直線に俺へと向かって飛ばされる。
ストーンキャノンやストーンバレットを吸収し進化したハンソの体を、何故かルーク達のレーザービームが迎え撃つ。岩オニの攻撃に利用されてしまったが、同じ俺の召喚精霊で仲間のハンソである。
しかし進化したハンソに対抗して、ルーク達も力を示そうとしているのかもしれない。レーザービームを受けたハンソの体は高温で真っ赤に染まり、徐々に体の大きさが小さくなる。しかし勢い自体を止めることは出来ていない。
「エトーーーッ」
ぶつかる寸前で召喚解除されたハンソの姿は消えてしまうが、最後にいつのもハンソの声が聞こえたような気がする。しかし、ハンソが消えてもハンドアックスだけは残されたままでこちらへと向かって飛んでくる。
ガンッ
それをミュラーの盾が受け止めてくれるが、ハンドアックスは盾に食い込み亀裂をつくっている。恐らく、マジックシールドでは砕かれて受け止めれることは出来なかっただろう。
『これが岩オニの感情の声ね。まだ小さな声だけど、確かに怒ってるわ』
今まで感情のなかった岩オニから、ムーアも感情の声を感じとる。
『今のは間違いなく、あなたに向けられた怒りね』
「恨むなら、俺じゃなくてソースイとハンソだろ!」
『あなたがストーンキャノンなんか使うからでしょ。それがなかったら、角は折られなかったんだから』
しかし、怒りの感情を露にして金棒を振るった岩オニは、それっきりで動きを止めてしまう。溢れだした感情に、体が戸惑っているのかもしれない。
「ヴォオオオオオオオオーーーーッ」
再び岩オニの咆哮が轟く。先の咆哮と比べると、比べ物にならないくらい大きくて長い。そして岩オニの怒りの声も大きくなるが、聞こえてくる感情の声は鬼の形相とは釣り合わないくらいの弱い声でしかない。
『あなたへの怒りよりも、思うように動かない体にイライラしてるわね』
「体は魔石に支配されているのかもしれないな。イッショ、岩オニの怒りを増幅出来るか?」
「カショウ、俺様に不可能があると思っているのか?」
「そうだな、頼りにしているよ。オリジナルの魔法吸収だって取り込む可能性があるんだし、古の滅びた記憶はまだある。イッショがそう言ってくれるなら助かるな!」
「うむ、何の話だったかな?“怒り”の精霊に、“怒り”を扱うことで不可能なぞあるはずがない。何せ俺様は、“怒り”の精霊だからな」
やはり俺には俺なりのやり方があって、コアのようにイッショを褒めて能力を引き出すことは難しいかもしれない。
そして無駄な事は一切話さないイッショが岩オニの怒りを増幅し始めると、岩オニの体はわなわなと震え出し、金棒をまともに持つことさえ出来ずに落としてしまう。
金棒を拾おうとする右手に対して、それを止めようとする左手。岩オニの中で魔石から人格を取り戻そうとする鬩ぎ合いが繰り広げられる。ただ、どちらの手が岩オニ自身なのかは分からない。
「返せ!」
岩オニからさらにハッキリと聞こえる感情の声。そして金棒を掴もうとしていた右手は、自身の顔を殴り付ける。それを止める為に、今度は左手が右手を掴む。
『自傷行為かしら?』
「いや、抑え込まれている原因を壊そうとしているのかもしれない」
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