みにくい凶王は帝王の鳥籠【ハレム】で溺愛される

志麻友紀

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【6】お前を奪った男を忘れるな※

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「つたない白い小さな手で、懸命に私を鍛えてくれるお前の姿も見ていたいがな。私もそろそろ限界なので、こうした方が早い」
「なにを……あ……」

 ぐいと腰をひかれて、アジーズのたくましい楔と、自分の一度放出してうなだれたままの雄芯がかさね合わされる。信じられないことに数度擦り上げられただけで、ラドゥのそれはまた健気に頭をもたげてきた。
 実はアジーズの大蛇のようなそれを見て触れたとき、なぜかあのわからない感覚がじわりと尾てい骨から湧き上がってきていたのだ。それを暴かれて、ラドゥは放出と同時に一度冷めていた熱が、また頬に昇るのを感じた。

「あ……よせっ!」

 目の前の男の厚い胸板をぽかりと叩く。彼のまとっていたカフタンの前はいつのまにかはだけて、褐色のたくましい胸にくっきりと腹筋のおうとつがうきでた腹が見える。アジーズが邪魔だとばかりに、自分の頭に巻き付いていたターバンをほどき、寝台の外へと放り投げる。波打つ豊かな銀髪が、褐色の広い肩と、ほどよく鍛えられて美しく筋肉が隆起した、腕を飾る。

「止めろと言われてもな。お前の腰も動いているぞ」
「それはあんたが動くから……あっ! あっ!」

 向かい合わせ膝に載せられた形で、アジーズに突き上げられれば、太くて長くて赤黒い彼の男根で己の薄い色をした雄芯が擦られている。同時に己の身体も揺れて、さらに刺激が増して声をあげてしまう。
 アジーズの言葉どおり、無意識にラドゥも腰をつたなくうごめかしていることも知らずに。
 「ひゃっ!」と声をあげたのは、尻の狭間に冷たくとろりとしたものがたらされたからだ。ふわりと立ち上る茉莉花まつりかの香りから、それが香油だとわかる。アジーズが香炉が置かれた寝台、横の小卓に玻璃はりの小瓶を置くのが見えた。
 そしてアジーズの両手がラドゥの小さな尻をつかんで割り開くようにし、油をたらされた最奥の蕾をぬるぬると往復するのに、ラドゥは紫の大きな瞳をさらにこぼれそうなほどに見開く。

「よ、よくも、そんなところを指でいじる…ことが……んあっ!」

 指がぬるりと一本浅く入りこんでくる。そこを慣らすようにゆるゆると行き来するのに、異物感しかないが、しかし、同時に前をアジーズの男根で擦られれば、口から止められない嬌声がこぼれる。

「男女の交わりを知らぬか?」
「俺をそれほど無知と思うな!」

 これも戦場で兵士達の下世話な話を聞くともなしに聞けばわかるというものだ。

「それと俺の尻をいじるのとなんの……関係が……っ!」

 そう訊ねると、今度はアジーズの紺碧の瞳が、軽く見開かれる番であった。

「お前もしばらくはこの庭に“人質”としていたと聞いている。“献上”された小姓達と貴人の男達の関係を知らぬではなかろう?」
「女のようななよなよした見目の少年を、よい大人の男が愛でる不毛な関係か……?」

 後宮の女子はすべてスルタンの持ち物だ。それに手をつけることは叛逆罪を問われる。が、属国や属州から人質としてやってきた公子達や、献上された奴隷少年は別だ。見目麗しい彼らは、宮廷の男達の欲望の対象であった。
 もちろんラドゥはその対象外だ。彼を初めて見たとき、ハレムの長である宦官長は「使えない」と舌打ちした。
 ラドゥはその関係を不毛なものだと思っていた。男女のように繋がることが出来ないなら、ただ少年の外見ばかりの美しさを愛でて、どうするのだろうと? 

「ここで繋がる」

 アジーズのそのひと言となかで指をうごかされて、ラドゥは今度こそ本当に、驚愕に身体を一瞬固まらせた。中の指を思わずぎゅっと締めてしまい。「こら、これだとほぐせぬ。お前に痛みを与えたくない」と言われるが、混乱した頭では身体の力を抜くなんて考えられない。

「た、たしかに男では“穴”はここしかないから、そ、そうなのか?」
「“穴”とは雰囲気もなにもないが、しかし、お前がいうと可愛らしいな」
「な、なにを……ひっ! ああああっ!」

 前を突き上げ擦られて、こわばっていた身体の力が抜けたところを、蕾の中にあった指に性器の裏側の一点を圧されて、身体が跳ねる。目の前がチカチカするほどの刺激になんだ? と思う。

「男にもな。ここに感じる場所があって、繋がっても楽しむことができる」
「うっ、はっ! そこ、いじる……なっ!」

 そう言っても指は止まるわけがない。二本差し入れられて、最も感じる場所を挟むように揉み込むようにされて、身も世もなくのけぞりあえぐ。
 重ねていたアジーズの男根ともいつの間にか離れて、ゆるゆるとはらを抜き差しされる指の動きにあわせて、腰をつたなくくねらせていることもラドゥは気付いていなかった。再び腹につくほどに立ち上がり、薄紅の花芯のような雄心の先が、ゆらゆらゆれるたびに涙のようなしずくがこぼれる。
 そんなラドゥの痴態をアジーズが目を細めて楽しげに眺める。「ころあいか」と指をゆっくりと抜き取られたときに、物欲しげに己の蕾がひくついたことをラドゥは知らない。

 寝台の上に再び仰向けに横たえられる。大きく開かされた足の間に、男の身体が入りこむ。アジーズがカフタンをその肩から落として脱ぎ捨てれば、波打つ銀髪に縁取られた褐色のたくましい体躯が、閨の薄明かりの中に照らし出されている。

「よく見ておくがよい」

 快楽に潤んだ菫の瞳でじっと自分にのしかかる男をみつめるラドゥの頬を、大きな手がなぞる。

「お前を征服する最初で最後の男をな」

 ぐっと突き入れられて「ああっ!」と声をあげる。太く大きくて長大なもので、割り開かれていくのに恐怖を覚えるが、不思議に苦痛は薄かった。ハッシシの煙の効果もあるし、香油で散々ならされたせいもあるだろう。
 自分の欲望を果たすだけならば、ただ貫けばいいのにずいぶん手間をかけることだ……とそんなことを考えられたのは一瞬だ。揺さぶられて内臓ごと押し上げられるような圧迫感と苦痛は、徐々に覚え立ての快感にすり替わっていく。
 それも雄芯にあたえられる刺激よりも、もっと深く濃密だ。指で教えられた箇所を太くて長大な男根の張り出したえらの先で突き上げられて、えぐられるたびに、あがるのはもう苦痛交じりのうめきではなく嬌声だ。
 揺さぶられて滅茶苦茶にされて、男の首にしがみついて、その肩に爪を立てる。

「女のように啼いて、そんなによいか?」
「……っ……違う……ひゃあっ!」

 耳を打つ男の言葉に菫の目を見開いて我に返るが、奥を突き上げられて、その否定の言葉も嬌声へと変わる。

「忘れるな、お前にこれから毎夜、屈辱を与えるのはこの私だ」
「……忘れるか……あんたを…憎む……」

 与えられる甘い快楽にあえぎ、快感の涙に潤む視界の中、男をにらみつける。
 そうだ。これは屈辱だ。それが苦痛でなくとも、身体を弄ばれ、相手の欲望のまま乱されるなど……。

「絶対……ゆるさ…な……」
「それでよい」

 揺さぶられあえぎながら、叫んだ呪詛の言葉になぜか男は満足そうに微笑みして、耳元でささやいた。

「お前が私を憎むかぎり……お前は私を……ない」

 ささやかれた言葉は、与えられる快楽に溶けていく意識では聞き取れなかった。





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