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第四話:玉と竿(上)
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トイプードルの双子ライジャとデズルはいつにもましてご機嫌。
ルンルンと何かを誰かに話したい様子である。
双子はみんなのアイドル。ルンルンと邪気の一切ない顔でご機嫌に歩く双子を見てみんなにっこり。イラつく者、一名……。
今日はアナグマのジェイミーがいない。スカンクのエフィが双子に話しかけた。
「あら。二人とも何かいいことあった?」
「あ、エフィしゃん。おとうしゃんがね、おかあしゃんに言ってたのきいたんだ」
双子の言うお母さんはこの家のママだ。お父さんはママの旦那と呼ばれるホモサピエンス。何故かこの家にいる小汚い中年男だ。
ママはその中年男と喧嘩した翌日、アサイチ、起きがけにうがいした水を水筒のお茶に混ぜて弁当といっしょに渡す。みんなそんなママが大好きだ。
「きのう、二人で聞いたんだー」
双子は交互にしゃべり返事をする。
「何を聞いたの?」
「あのね、双子のトイプードルに合わせて、双子のダルメシアン飼おうって」「トイプードルはオスだから、おんなにょこがいいなって」
「まあ、それは素敵ね」
「そうなんだー、仲良くなれたらいいでしゅ」「四人でお外行って、アイス食べるでしゅ」
淡い想像をして二匹はうっとり、エフィもほっこり。その背後に甘ったるい空気の破壊者がは痰を吐き捨てて仁王立ちしていた。
「素敵ぃー、春よねぇー」
エフィは苦虫を噛み潰した顔で後ろを向いた。ねばっこくて重量感のあるバススポンジのペンギンは日干しにあきて、ろくに乾燥せぬままリビングに取り込まれていた。
「あんたたち、おめでとぉー」
「ありがとー」
どのタイミングでいつものように、ゲゲゲゲ、と暴言を吐いて嘲笑おうか考えていることは明らかだった。
「さっき、一緒にアイスたべるとかいってたけど、もしかしてアンタら、その双子をお嫁さんにしたいんじゃないのぉ」
「え……」
双子はわかりやすく、もじもじと恥ずかしそうにしだした。
「いえいえ。そんなのまだ早いでしゅ」「まだあってないでしゅ。いい子たちかどうか、まだわかんないでしゅ」
「そうよねー。相性も大事よねえ。けど、二人とも肝心のことわすれてないかしらぁ」
「ちょっと、やめなさいよあんた」
エフィは強めに釘を刺しながら、双子とペンギンちゃんの間に割って入った。
ニュ、と反応しながらペンギンちゃんは荒げ始めた語気を少し和らげた。
「大事なはなしよぉ。将来的にあんたたちの結婚に関わる大事な、大事なはなしよぉ」
ねっとりした話し方はそのままだった。双子はペンギンちゃんの話に前のめりになってしまった。
「そ、それはどういったことでしゅか?」「僕たち、ぜひ知りたいのでしゅ」
「分かったわ。言ってあげる」
双子は固唾を飲んだ。
「あんたたち宦官じゃない」
この話を聞いていた全員の頭に大きなはてなマークがついた。
「カンガン?」
双子は顔を見合わせながら聞きなれない単語に不思議がった。ペンギンちゃんは息巻いた。
「いいわ。説明しましょう! あんたたち……。陰茎と睾丸がないじゃないのよぉ! 宦官よー! 〇ンポのないイカレ野郎じゃないのよぉ」
エフィは目の前の自分と同じ性別雌の馬鹿さ加減に頭を抱えた。最終手段は頭を叩いてもやめさせることだ。ペンギンちゃんにエフィは近づいたが察知されたようで、振り向きざま頭突きを、不意打ちを食らう形でかまされた。
頭を押さえて苦しむエフィを介抱しながらも他のオットマンの面々はあまりの外道っぷりに容易に近づけなくなった。
一方、ゲゲゲゲ、と嘲笑されながら双子は自分たちの股間を触りながら呆然としていた。
ほんとだ……。僕たち生えてないでしゅ。 僕たちの〇ンポどこ行ったでしゅ」
「ゲゲゲ、寝ているときにアンタらのタグは見せてもらったわよ。ズバリあんたらはメイドインチャイナ!
上海あたりの刑務所で受刑者の社会奉仕活動の時間に生産されて、その時にむしり取られたのよぉ!
あんたたちの玉と竿は今頃中国大陸に転がってるわよ!!」
ライジャは口を開けて呆然自失となった。
「宦官だと……、結婚できないのでしゅか?」
「〇ンポのないイカレ野郎が結婚できるわけないじゃない! アンタたちは一生お互いのケツの穴を舐め合って死んでいくのよ!」
デズルも口を開けて呆然自失となった。
***
しばらくしてジェイミーが帰宅した。
「ペンギンちゃんは、全く……」
「容赦なく頭突きしてきたのよ。信じられない!」
エフィは額に大きな湿布を貼っていた。数時間たち、ジェイミーが帰ってきた後も痛みで涙目のままだ。
「僕ら宦官らしいでしゅ」「〇ンポのないイカレ野郎らしいでしゅ」
「あんな奴の言うこと本気にしなくていいわよ!」
これにはジェイミーも大いに頷いた。
「うん。宦官ってのは人のことじゃなくて、職業だよ」
否定する点が少々ずれている。
「そうなんでしゅか?」
「ペンギンちゃんが間違って覚えてるだけ。昔の中国で皇帝に仕える人は、あらかじめ陰嚢と睾丸を取り除くんだよ。それに〇んぽあるなしともかく、普通に結婚してたみたいだよ」
「人間は恐ろしいでしゅ……」
「けど、ライ……。ぼく考えたでしゅ」
「なにデズ?」
「僕ら無職いやでしゅ。甲斐性つけないと結婚できないでしゅ」
「そっかー! デズはえらいなー。 なら、僕ら宦官でいいでしゅ」
「ジェイミーしゃん、皇帝を紹介してほしいでしゅ。僕ら働くでしゅ」
「ジェイミー。この子たちどうすればいいかしら……」
「うーん。いろいろ言いたいけど、まずは宦官について勉強しなきゃね」
この言葉に双子は喜び、エフィは不安そうな顔になった。
「試しにこれを読んでみるといいよ」
ジェイミーは二人に古いハードカバーの本を渡した。
題名は『項羽と劉邦』。上巻だ。
作者は『司馬遼太郎』。
何も知らない二匹は、これを読んだら僕らも宦官だ、と遠吠えをしながら燃えるようにやる気を出した
***
数日後……。
エフィはしばらく姿が見えない双子を探しあてた。二匹はママの旦那の出しっぱなしの布団の上にいて、目深にかぶったタオルケットの中でプルプル震えていた。
「二人とも、どうしたの? 大丈夫……」
双子は涙を流して、カンガン、チョウコウと小さくつぶやていた。
「宦官こわいでしゅ……」「趙高は悪魔でしゅ……」
傍らにはジェイミーが貸した本が途中でしおりをはさんだまま置かれていた。
エフィは深々とため息をついて一つ決断した。向かうはママのところだ。
……、……。
翌日のことである……。
オットマンの上では皆が芸術祭の準備に明け暮れていた。各々が彫刻や絵画を作り、公開をした後、皆でその後は壊したり火をつけたりするのである。バンド演奏の場合はギターを壊す。非常に生産的である。
「エゴンくん順調だね。明日には完成かな」
ジェイミーは自分の絵画を描きながらアルビノゴリラのエゴンに声をかけた。眼鏡を直しながら、エゴンは照れて、うす、とだけ言った。
ふと、遠くから、わんわんわんわん、小さくご機嫌な声が聞こえてきた。ライジャとデズルが久しぶりにオットマンに戻った、と思い振り向いた。
ジェイミー他、双子を久しぶりに見た面々は眼を真ん丸にした。
双子はパンツをはいていた。白のブリーフである。そしてパンパンに前が張っていた。
パンツの中のモノが余りに大きいため、双子は四つん這い歩きができず、二足歩行で、るんるんと歩いていた。
花畑が行く先、行く先にできそうなほがらかさである。パンツとパンツの中身さえなければ……。
「あ、ジェイミーしゃん」「あ、エゴンしゃん。おひさしぶりでしゅ」
「こ、こんにちは……」
双子はお互いの顔をみたり、オットマンの面々をチラチラ見たり落ち着かない。そんな双子を前にして皆はお互いの眼を合わせながら固まっていた。
「えーと……。雰囲気変わったね」
「え、分かるでしゅか」「そうでしゅ。僕ら変わったでしゅ」
「あ! なになに! あんたら、それ、〇んぽじゃない! 〇んぽじゃないのよ!!」
ソファーに勝手に上がりテレビを見ていたペンギンちゃんがスライディングしながら双子の前にやってきた。
「そうでしゅ。ぼくらこれで一人前の男でしゅ」「おかあしゃんにつけてもらったんだー」
ペンギンちゃん以外は口をあんぐり開けたまま、壊れた機械のように首を静かに上下させていた。
そして元凶はというと、無邪気に、ゲゲゲゲと笑ってさらにつっかかった。
「おもしろーい! デカ〇んじゃないのよぉ! ちょっと触らせなさいよ」
「てれるでしゅ、だけどいいでしゅ」
ライジャの方が自信満々に自分のもっこり膨らんだ股間を突き出した。ライジャとデズル二人を見比べると二人とも太さは同じくらい。しかしライジャの方が四割ほど長い。
「なに……。なにこれ。風船とかじゃないわ。質量がある!」
ぺしぺし叩きながらペンギンちゃんは驚愕する。ただ、ライジャのマラは時々、ギュ、ギュ、と鳴き声みたいな音を出した。
疑問に思ったペンギンちゃんがさらに強くたたこうとすると、ライジャのマラが突然動きペンギンちゃんの腹に刺さった。
並大抵のボディーブローより重い。ペンギンちゃんの後ずさりをしながら、やるじゃない、とほくそ笑んだ。何なんだろう一体……。
「僕のも見てよー」
今度はデズルが得意気に自分のマラをペンギンちゃんの前に出した。
今度はペンギンちゃん恐る恐る。ツン、ツン、と自慢のくちばしでブリーフの上からつついた。そしてまたもや驚愕する。
固いのだ……。まるでダイヤモンド。
ペンギンちゃんが動揺していると、デズルは腰を大きく下げてペンギンちゃんに向けて一突き!
ゲー、と叫びながらペンギンちゃんは大きく吹っ飛ばされ、目をまわして倒れた。当然、股はおっぴろげている。
どんなもんだい、と双子は普段ペンギンちゃんがするように大いばりにふんぞり返った。
周りからは、おおー、と関心の声と共に拍手があがった。
終始黙ってみていたジェイミーの隣にエフィが来た。
「ねえ。あの二人一体……」ジェイミーはエフィに聞いた。
「私がママに頼んだのよ」
「え……」
話は昨日の晩に遡る……。
エフィからことの顛末について聞くや否や、ママは怯える二人を一生懸命なだめ、即席でパンツと股間のものを準備して一晩でドッキングを済ませたらしい。
ジェイミーにとっては信じられない神業。ただ……。
「あれは、ちょっと、思ってたのとちがうな」
「何言ってるの。あんたが変な本読ませなきゃこんなことにはならなかったわよ」
「すみません。少しは彼らに冷静になってほしいと思い……。反省します……」
ジェイミーはエフィに深々と頭を下げた。
「ジェイミーしゃん」
双子はジェイミーの前に希望に満ち溢れた顔できた。
「男になった僕らは芸術祭には出られないでしゅ」「出稼ぎして結婚資金を稼いでくるでしゅ」
またしてもジェイミーとエフィは、え、と口をそろえて言い、固まった。
「出稼ぎってどこに……?」
「ここでしゅ。プテステージというところでしゅ」
双子は借りてきたお父さんのスマホを出して、画面を見せた。新作AVの紹介画面だ。メーカー、プテステージとある。
「ここが新人俳優を募集してるでしゅ」
「女の人を喜ばせてお金がもらえるでしゅ」
……、……。
無言の間を作ったことをジェイミーとエフィは後悔した。双子は二足歩行のまま異様な速さで遠吠えをあげながら走り去っていった。
(続く…)
ルンルンと何かを誰かに話したい様子である。
双子はみんなのアイドル。ルンルンと邪気の一切ない顔でご機嫌に歩く双子を見てみんなにっこり。イラつく者、一名……。
今日はアナグマのジェイミーがいない。スカンクのエフィが双子に話しかけた。
「あら。二人とも何かいいことあった?」
「あ、エフィしゃん。おとうしゃんがね、おかあしゃんに言ってたのきいたんだ」
双子の言うお母さんはこの家のママだ。お父さんはママの旦那と呼ばれるホモサピエンス。何故かこの家にいる小汚い中年男だ。
ママはその中年男と喧嘩した翌日、アサイチ、起きがけにうがいした水を水筒のお茶に混ぜて弁当といっしょに渡す。みんなそんなママが大好きだ。
「きのう、二人で聞いたんだー」
双子は交互にしゃべり返事をする。
「何を聞いたの?」
「あのね、双子のトイプードルに合わせて、双子のダルメシアン飼おうって」「トイプードルはオスだから、おんなにょこがいいなって」
「まあ、それは素敵ね」
「そうなんだー、仲良くなれたらいいでしゅ」「四人でお外行って、アイス食べるでしゅ」
淡い想像をして二匹はうっとり、エフィもほっこり。その背後に甘ったるい空気の破壊者がは痰を吐き捨てて仁王立ちしていた。
「素敵ぃー、春よねぇー」
エフィは苦虫を噛み潰した顔で後ろを向いた。ねばっこくて重量感のあるバススポンジのペンギンは日干しにあきて、ろくに乾燥せぬままリビングに取り込まれていた。
「あんたたち、おめでとぉー」
「ありがとー」
どのタイミングでいつものように、ゲゲゲゲ、と暴言を吐いて嘲笑おうか考えていることは明らかだった。
「さっき、一緒にアイスたべるとかいってたけど、もしかしてアンタら、その双子をお嫁さんにしたいんじゃないのぉ」
「え……」
双子はわかりやすく、もじもじと恥ずかしそうにしだした。
「いえいえ。そんなのまだ早いでしゅ」「まだあってないでしゅ。いい子たちかどうか、まだわかんないでしゅ」
「そうよねー。相性も大事よねえ。けど、二人とも肝心のことわすれてないかしらぁ」
「ちょっと、やめなさいよあんた」
エフィは強めに釘を刺しながら、双子とペンギンちゃんの間に割って入った。
ニュ、と反応しながらペンギンちゃんは荒げ始めた語気を少し和らげた。
「大事なはなしよぉ。将来的にあんたたちの結婚に関わる大事な、大事なはなしよぉ」
ねっとりした話し方はそのままだった。双子はペンギンちゃんの話に前のめりになってしまった。
「そ、それはどういったことでしゅか?」「僕たち、ぜひ知りたいのでしゅ」
「分かったわ。言ってあげる」
双子は固唾を飲んだ。
「あんたたち宦官じゃない」
この話を聞いていた全員の頭に大きなはてなマークがついた。
「カンガン?」
双子は顔を見合わせながら聞きなれない単語に不思議がった。ペンギンちゃんは息巻いた。
「いいわ。説明しましょう! あんたたち……。陰茎と睾丸がないじゃないのよぉ! 宦官よー! 〇ンポのないイカレ野郎じゃないのよぉ」
エフィは目の前の自分と同じ性別雌の馬鹿さ加減に頭を抱えた。最終手段は頭を叩いてもやめさせることだ。ペンギンちゃんにエフィは近づいたが察知されたようで、振り向きざま頭突きを、不意打ちを食らう形でかまされた。
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一方、ゲゲゲゲ、と嘲笑されながら双子は自分たちの股間を触りながら呆然としていた。
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あんたたちの玉と竿は今頃中国大陸に転がってるわよ!!」
ライジャは口を開けて呆然自失となった。
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「〇ンポのないイカレ野郎が結婚できるわけないじゃない! アンタたちは一生お互いのケツの穴を舐め合って死んでいくのよ!」
デズルも口を開けて呆然自失となった。
***
しばらくしてジェイミーが帰宅した。
「ペンギンちゃんは、全く……」
「容赦なく頭突きしてきたのよ。信じられない!」
エフィは額に大きな湿布を貼っていた。数時間たち、ジェイミーが帰ってきた後も痛みで涙目のままだ。
「僕ら宦官らしいでしゅ」「〇ンポのないイカレ野郎らしいでしゅ」
「あんな奴の言うこと本気にしなくていいわよ!」
これにはジェイミーも大いに頷いた。
「うん。宦官ってのは人のことじゃなくて、職業だよ」
否定する点が少々ずれている。
「そうなんでしゅか?」
「ペンギンちゃんが間違って覚えてるだけ。昔の中国で皇帝に仕える人は、あらかじめ陰嚢と睾丸を取り除くんだよ。それに〇んぽあるなしともかく、普通に結婚してたみたいだよ」
「人間は恐ろしいでしゅ……」
「けど、ライ……。ぼく考えたでしゅ」
「なにデズ?」
「僕ら無職いやでしゅ。甲斐性つけないと結婚できないでしゅ」
「そっかー! デズはえらいなー。 なら、僕ら宦官でいいでしゅ」
「ジェイミーしゃん、皇帝を紹介してほしいでしゅ。僕ら働くでしゅ」
「ジェイミー。この子たちどうすればいいかしら……」
「うーん。いろいろ言いたいけど、まずは宦官について勉強しなきゃね」
この言葉に双子は喜び、エフィは不安そうな顔になった。
「試しにこれを読んでみるといいよ」
ジェイミーは二人に古いハードカバーの本を渡した。
題名は『項羽と劉邦』。上巻だ。
作者は『司馬遼太郎』。
何も知らない二匹は、これを読んだら僕らも宦官だ、と遠吠えをしながら燃えるようにやる気を出した
***
数日後……。
エフィはしばらく姿が見えない双子を探しあてた。二匹はママの旦那の出しっぱなしの布団の上にいて、目深にかぶったタオルケットの中でプルプル震えていた。
「二人とも、どうしたの? 大丈夫……」
双子は涙を流して、カンガン、チョウコウと小さくつぶやていた。
「宦官こわいでしゅ……」「趙高は悪魔でしゅ……」
傍らにはジェイミーが貸した本が途中でしおりをはさんだまま置かれていた。
エフィは深々とため息をついて一つ決断した。向かうはママのところだ。
……、……。
翌日のことである……。
オットマンの上では皆が芸術祭の準備に明け暮れていた。各々が彫刻や絵画を作り、公開をした後、皆でその後は壊したり火をつけたりするのである。バンド演奏の場合はギターを壊す。非常に生産的である。
「エゴンくん順調だね。明日には完成かな」
ジェイミーは自分の絵画を描きながらアルビノゴリラのエゴンに声をかけた。眼鏡を直しながら、エゴンは照れて、うす、とだけ言った。
ふと、遠くから、わんわんわんわん、小さくご機嫌な声が聞こえてきた。ライジャとデズルが久しぶりにオットマンに戻った、と思い振り向いた。
ジェイミー他、双子を久しぶりに見た面々は眼を真ん丸にした。
双子はパンツをはいていた。白のブリーフである。そしてパンパンに前が張っていた。
パンツの中のモノが余りに大きいため、双子は四つん這い歩きができず、二足歩行で、るんるんと歩いていた。
花畑が行く先、行く先にできそうなほがらかさである。パンツとパンツの中身さえなければ……。
「あ、ジェイミーしゃん」「あ、エゴンしゃん。おひさしぶりでしゅ」
「こ、こんにちは……」
双子はお互いの顔をみたり、オットマンの面々をチラチラ見たり落ち着かない。そんな双子を前にして皆はお互いの眼を合わせながら固まっていた。
「えーと……。雰囲気変わったね」
「え、分かるでしゅか」「そうでしゅ。僕ら変わったでしゅ」
「あ! なになに! あんたら、それ、〇んぽじゃない! 〇んぽじゃないのよ!!」
ソファーに勝手に上がりテレビを見ていたペンギンちゃんがスライディングしながら双子の前にやってきた。
「そうでしゅ。ぼくらこれで一人前の男でしゅ」「おかあしゃんにつけてもらったんだー」
ペンギンちゃん以外は口をあんぐり開けたまま、壊れた機械のように首を静かに上下させていた。
そして元凶はというと、無邪気に、ゲゲゲゲと笑ってさらにつっかかった。
「おもしろーい! デカ〇んじゃないのよぉ! ちょっと触らせなさいよ」
「てれるでしゅ、だけどいいでしゅ」
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「なに……。なにこれ。風船とかじゃないわ。質量がある!」
ぺしぺし叩きながらペンギンちゃんは驚愕する。ただ、ライジャのマラは時々、ギュ、ギュ、と鳴き声みたいな音を出した。
疑問に思ったペンギンちゃんがさらに強くたたこうとすると、ライジャのマラが突然動きペンギンちゃんの腹に刺さった。
並大抵のボディーブローより重い。ペンギンちゃんの後ずさりをしながら、やるじゃない、とほくそ笑んだ。何なんだろう一体……。
「僕のも見てよー」
今度はデズルが得意気に自分のマラをペンギンちゃんの前に出した。
今度はペンギンちゃん恐る恐る。ツン、ツン、と自慢のくちばしでブリーフの上からつついた。そしてまたもや驚愕する。
固いのだ……。まるでダイヤモンド。
ペンギンちゃんが動揺していると、デズルは腰を大きく下げてペンギンちゃんに向けて一突き!
ゲー、と叫びながらペンギンちゃんは大きく吹っ飛ばされ、目をまわして倒れた。当然、股はおっぴろげている。
どんなもんだい、と双子は普段ペンギンちゃんがするように大いばりにふんぞり返った。
周りからは、おおー、と関心の声と共に拍手があがった。
終始黙ってみていたジェイミーの隣にエフィが来た。
「ねえ。あの二人一体……」ジェイミーはエフィに聞いた。
「私がママに頼んだのよ」
「え……」
話は昨日の晩に遡る……。
エフィからことの顛末について聞くや否や、ママは怯える二人を一生懸命なだめ、即席でパンツと股間のものを準備して一晩でドッキングを済ませたらしい。
ジェイミーにとっては信じられない神業。ただ……。
「あれは、ちょっと、思ってたのとちがうな」
「何言ってるの。あんたが変な本読ませなきゃこんなことにはならなかったわよ」
「すみません。少しは彼らに冷静になってほしいと思い……。反省します……」
ジェイミーはエフィに深々と頭を下げた。
「ジェイミーしゃん」
双子はジェイミーの前に希望に満ち溢れた顔できた。
「男になった僕らは芸術祭には出られないでしゅ」「出稼ぎして結婚資金を稼いでくるでしゅ」
またしてもジェイミーとエフィは、え、と口をそろえて言い、固まった。
「出稼ぎってどこに……?」
「ここでしゅ。プテステージというところでしゅ」
双子は借りてきたお父さんのスマホを出して、画面を見せた。新作AVの紹介画面だ。メーカー、プテステージとある。
「ここが新人俳優を募集してるでしゅ」
「女の人を喜ばせてお金がもらえるでしゅ」
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無言の間を作ったことをジェイミーとエフィは後悔した。双子は二足歩行のまま異様な速さで遠吠えをあげながら走り去っていった。
(続く…)
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