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第三章 愛した人
四
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薄暗いオレンジ色のランプの明かり弱々しくスマホに反射する。自分が送ったメッセージだけが日付を挟んでいる。まるで、二つのメッセージをついさっき送ったかのように、並んでいるが、その間に挟まれた日付を見ると、本当にひと月も返信が無かった現実を見る。
「あんた、卒業試験で忙しくなるって言ってたのに、なんでお店来てんのよ」
「んー、息抜き?」
「はあ、国家試験も二月にあるんでしょう? こんなところで息抜きしてる暇あるの?」
「大丈夫、南先輩のおかげで就職先があるんだ。絶対に失敗はしないよ」
「…‥‥そう」
出来ないの方が正しいな。本当は家に帰って勉強するつもりだったのに、秀也の事ばかり考えてしまう。それなら、誰かに相談したいと思った。誰でもいいわけではない。卒業試験が終わるまで休みをもらってるが、ママに話しを聞いてもらいたいと、気づいたらここに来ていた。
「ねえママ、俺ってしゅ……恋人に冷たいのかな?」
「あんたの性格上じゃあセフレって勘違いされても仕方ないわね。だって、愛情表現がヘタクソそうだわ」
ママにはお見通しってか。開店前のママが化粧を直しながら、拓海の言いたい事を聞く前に、先に答える。
「……でも、時間が空いている時はいつも一緒にいたし、」
「あんた、それ本気? 恋人に愛想尽かされたくないなら偏愛になりなさい」
「偏愛?」
秀也は完璧なαすぎた。もし、あいつの恥ずかしがってる顔とか、単純な子供の様な行動とかを知らなったら、芸術品のようだとしか思わなかっただろうな。
……あいつの俺を見つめる時の目も鋭くて、涼しい目元で熱っぽい視線で見られると昼間なのに、たまに欲情してしまう。う、最近会ってないから、溜まってるな。
カウンターの椅子に座りがら頭を抱える。ママは煙草に火をつける。
「愛情表現は少しぐらい偏った方が特別に感じるわ。あ! でも、暴力と強要は駄目よ」
前までのあいつなら俺に強要されても喜んで受け入れそうだな。暴力は……無理無理。
「痛いのはみんな嫌だよ」
「……そうよ、あんたの心もイタイイタイなの?」
ママは自分で言いながら、ツボに入ったらしく、拓海の背中を叩きながら笑っていた。
はあ、疲れた。バーから帰る拓海は、秀也の事を考えながら結局、仕事をしてしまい、より疲れてしまった。いつもなら電車で帰るところだが、なぜか今日はママからタクシー代を貰い、路地裏を通ってタクシー乗り場まで来た。路地裏から出てすぐ、拓海は目を見開いた。
「秀也? と、誰だ?」
視覚で得た情報をそのまま声にしていた。
遠めでも彼の姿に目を惹きつけられるのは、整った容姿をしていたから、いや本当は、彼のことを四六時中考えるほど会いたくて焦がれていた姿だったからに違いない。
そんな彼の横に居たには、派手な女性だった。女性らしい身体を強調している服装、揺れるウェーブが波打つ長い黒髪。俺なんかより、秀也の横にいても引けを取らないほど美しい女性だ。拓海は少ししか目に入らなかったはずだが、女性の事をよく観察していた。そして、完璧な彼らの姿を見て追い打ちをかけるように自分が秀也の恋人を名乗っていい人間なのか酷く動揺した。
二人が乗り込んだタクシーは発進した。脳に二人の姿が焼き付いている。見失わないように目を離さなかった彼が乗ったタクシーは、大通りに出ると他のタクシーと見分けがつかなくなった。
なんで? 俺の連絡を無視していたのは新しい恋人が出来たからか?
拓海は力なく手を鞄から離した。
「あんた、卒業試験で忙しくなるって言ってたのに、なんでお店来てんのよ」
「んー、息抜き?」
「はあ、国家試験も二月にあるんでしょう? こんなところで息抜きしてる暇あるの?」
「大丈夫、南先輩のおかげで就職先があるんだ。絶対に失敗はしないよ」
「…‥‥そう」
出来ないの方が正しいな。本当は家に帰って勉強するつもりだったのに、秀也の事ばかり考えてしまう。それなら、誰かに相談したいと思った。誰でもいいわけではない。卒業試験が終わるまで休みをもらってるが、ママに話しを聞いてもらいたいと、気づいたらここに来ていた。
「ねえママ、俺ってしゅ……恋人に冷たいのかな?」
「あんたの性格上じゃあセフレって勘違いされても仕方ないわね。だって、愛情表現がヘタクソそうだわ」
ママにはお見通しってか。開店前のママが化粧を直しながら、拓海の言いたい事を聞く前に、先に答える。
「……でも、時間が空いている時はいつも一緒にいたし、」
「あんた、それ本気? 恋人に愛想尽かされたくないなら偏愛になりなさい」
「偏愛?」
秀也は完璧なαすぎた。もし、あいつの恥ずかしがってる顔とか、単純な子供の様な行動とかを知らなったら、芸術品のようだとしか思わなかっただろうな。
……あいつの俺を見つめる時の目も鋭くて、涼しい目元で熱っぽい視線で見られると昼間なのに、たまに欲情してしまう。う、最近会ってないから、溜まってるな。
カウンターの椅子に座りがら頭を抱える。ママは煙草に火をつける。
「愛情表現は少しぐらい偏った方が特別に感じるわ。あ! でも、暴力と強要は駄目よ」
前までのあいつなら俺に強要されても喜んで受け入れそうだな。暴力は……無理無理。
「痛いのはみんな嫌だよ」
「……そうよ、あんたの心もイタイイタイなの?」
ママは自分で言いながら、ツボに入ったらしく、拓海の背中を叩きながら笑っていた。
はあ、疲れた。バーから帰る拓海は、秀也の事を考えながら結局、仕事をしてしまい、より疲れてしまった。いつもなら電車で帰るところだが、なぜか今日はママからタクシー代を貰い、路地裏を通ってタクシー乗り場まで来た。路地裏から出てすぐ、拓海は目を見開いた。
「秀也? と、誰だ?」
視覚で得た情報をそのまま声にしていた。
遠めでも彼の姿に目を惹きつけられるのは、整った容姿をしていたから、いや本当は、彼のことを四六時中考えるほど会いたくて焦がれていた姿だったからに違いない。
そんな彼の横に居たには、派手な女性だった。女性らしい身体を強調している服装、揺れるウェーブが波打つ長い黒髪。俺なんかより、秀也の横にいても引けを取らないほど美しい女性だ。拓海は少ししか目に入らなかったはずだが、女性の事をよく観察していた。そして、完璧な彼らの姿を見て追い打ちをかけるように自分が秀也の恋人を名乗っていい人間なのか酷く動揺した。
二人が乗り込んだタクシーは発進した。脳に二人の姿が焼き付いている。見失わないように目を離さなかった彼が乗ったタクシーは、大通りに出ると他のタクシーと見分けがつかなくなった。
なんで? 俺の連絡を無視していたのは新しい恋人が出来たからか?
拓海は力なく手を鞄から離した。
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