【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念

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第三章 愛した人

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 就職の事を秀也に伝えたくて、連絡をせずに大学に朝から向かったが、校門の前も、どこにも秀也の姿は見当たらなかった。講義が入っているのだろう。
 学部棟に行けば、いつも通り奇異な目にさらされる。しかし、あと数か月しか在籍しないのだと考えると、心が軽くなり、他人の目を気にすることがなくなった。
 
 そろそろ講義が終わる頃だろう。連絡を入れておけば、今日中に会えるだろう。
 拓海はそう考え、秀也に【大学にいるのか?】とメッセージを送った。
 
「見てないのか?」
 拓海は返信があるまで図書室で時間を潰していた。昼前になっても一向に反応がない。
 いつもなら、すぐに反応が返ってくるのに。

 毎日連絡を取り合い、大学でも会っていたのが幻だったかのように、秀也と話す事はおろか、会う機会さえ、避けられているように顔を見る事はなかった。
 
***
 秀也に南との事を伝えられずに一ヶ月が経った。口頭じゃなくても伝える方法はあった。だが、拓海は相談でもなく、すでに確定した事を、後から秀也に伝える形になってしまったので、直接話したかった。
 
 これまで数分も待たされたこともなかったのに、一ヶ月も連絡がなく顔を合わせないなんて流石におかしい。

 そう感じた拓海は講義が終わると、前にメッセージで送られてきた秀也の時間割を確認すると、彼が参加している講義室に向かった。次の講義時間までお昼の休憩時間があるため、講義室には少しの生徒しか残っていなかった。そこにも秀也の姿は無かった。
 講義室にいないという事は、学食に移動したのかもしれない。とりあえず、先にメッセージだけでも送っておくか。

【今学食にいる。返信くれ】
 秀也はその日、午後も講義があるはずなのに、学食にもいなかった。
 学外で食事を行うには、大学近くには何もなさすぎるので身寄り駅まで行かなくてはならない。時間もかかるため、多くの生徒は学食で食事を済ませる。秀也も例外ではなかった。いつも、自分とお昼休憩する時も学食を利用していた。
 
 なんだよ、課題とかで忙しいなら、俺に聞けばいいのに……。それに、一言連絡くれてもいいだろ。俺たちって恋人じゃないのか? 
 もしかして、俺ってセフレ? そんなはず……ないよな。
 
 その日も、秀也から返信はなかった。

 
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