【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり

文字の大きさ
40 / 65
第三章 愛した人

しおりを挟む
「新人の新條拓海と申します。まだ未熟ですが、精一杯頑張ります。どうか、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」

勤務初日、朝のミーティングで拓海は緊張しながら挨拶をした。
拍手の音とあたたかい言葉をかけられ、拓海はホッとした表情を浮かべた。
個人経営だからか、従業員もそう多くはない。
院長の深見聡、院長の奥さんで副院長の深見梓、看護師の三人だった。
院長は外科、副院長は内科・小児科を担当しており、南は外科を担当しているので、拓海は副院長の元で補佐をしつつ、内科を担当することになった。
拓海は事前に南から全員のバース性を教えてもらっていた。これは院長が職員個人と相談してから南が拓海にだけバース性を教えた。
院長と南はαで、ほか職員は全員βであることが分かった。
拓海の緊張がすぐに解けたのも、β性が多かったのもある。学生の頃は就職することに必死で大型病院しか考えていなかったが、この仕事先に就けてよかったと心から感じた。

拓海は午前中副院長の後ろに付き、お昼は休診で院長が毎日人数分頼む和牛弁当を食べ、午後は看護師と器具や機械を準備、片付けなどを行った。
南も初日の拓海に気を使うように誰もいないタイミングを見計らって声を掛けていた。

病院が閉まると拓海は看護師さんから飴やクッキーなどを貰った。
「初日お疲れ様!」
「これ良かったらもらってね~」
「作業丁寧で早くて助かったわ!」
看護師さんは子供のお迎えあるからお先に~と言って帰っていった。
貰ったお菓子を見つめてつい、拓海は笑みがこぼれた。

すると、後ろから急に背中を軽く触れられた。
振り向くとそこには小柄で眼鏡をかけた副院長がいた。
「新條さん、初日から頑張ってくれて頼もしいわ」
と微笑みながら言った。
「副院長、あの、自分何か問題な点はありませんか?」
「問題ないよ、よく働いてくれてる」
「よ、良かったです」
「ふふ、あ、一応就業時刻まで後三十分あるけど、休憩室で休んでていいよ」
「いえ! あのお手伝い出来る事、ありませんか?」
「んー、そうだな。新規のカルテは、もうみんながやってくれてるし、雑用も当番制だから特にないか」
そう言って色々考えて貰うことに、拓海は申し訳なく思った。
「やっぱりないね! あ、新しいインスタントコーヒーを買ったんだった! 新條さん甘いコーヒー飲める?」
急にコーヒーの話題になり、拓海は頭が追いつかず「はい?」と言ってしまい、あわてて「いえ、飲めます!」と答えた。
「良かった。じゃあ一緒に休憩しよっか!」
副院長と休憩室で新しく買ったらしいインスタントコーヒーコーヒーを飲み、常備してある籠に入ったお菓子を食べながら休憩していると、少ししてから院長と南も休憩室に入ってきた。
就業時間まで、拓海は三人のこれまでの仕事の話を聞いて過ごした。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

やっぱり、すき。

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
ぼくとゆうちゃんは幼馴染みで、小さいときから両思いだった。そんなゆうちゃんは、やっぱりαだった。βのぼくがそばいいていい相手じゃない。だからぼくは逃げることにしたんだ――ゆうちゃんの未来のために、これ以上ぼく自身が傷つかないために。

神楽

立樹
BL
谷川彰也は、大学でも美形で人の注目を集めている近松神楽にモーニングコールをしている。 ただ、モーニングコールをするだけの仲だった。ある日、コールをしていることがバレてしまった。 彰也も近松に言っていない秘密があって……。

処理中です...