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1.呪われた子
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「あなたなんか、産むんじゃなかった」
お母様からそんなことを言われて、私はゆっくりと涙を流した。
実の母親から、私はその存在を疎まれている。それはきっと、私が呪われているからなのだろう。
私の肉体に刻まれた忌々しいこの痣は、その呪いの象徴だ。
不幸を呼ぶとされているその刻印を持つ私は、家族の誰かも愛情を受けたことがない。
「その痣のせいで、私はあの人から見捨てられた……あなたのせいで、私は不幸になったのよ」
呪詛の言葉をかけられても、私にできるのは震えることだけだった。
とにかく、お母様が怖かった。彼女のその憎悪を一心に受け止めるのは苦しい。この場から逃げ出したい。その気持ちが、どんどん強くなっていく。
だけど、私は逃げられない。
気持ちとは裏腹に、私の足は動いてくれないのだ。
「忌々しい呪われた子……あなたなんか、私の子供ではない」
お母様は、私の体を抑え込んだ。
そして、そのまま私は強引にうつぶせにさせられる。
片手で両手首を掴まれて、膝によって足も動かない。
身動きを封じられた私の服を、お母様は手に持つナイフで切り裂いてく。
「この痣……呪われた痣、これさえなければ」
お母様は、私の背中にナイフを当てた。
この背中にある呪いの象徴に、そのナイフを突き刺そうとしているのだろう。
それを理解して、私は動けなくなった。
下手に動けば、鋭利な刃によってこの体が傷つけられると思ったからだ。
ただ、同時にわかっていた。このまま動かなくても、結果は変わらないと。
私はゆっくりと目を瞑った。いずれ来るはずの痛みに耐えるために、歯を食いしばる。
「あ、ああ……」
次の瞬間、私の耳に金属が床に落ちる音が響いてきた。
同時に聞こえてきたのは、お母様の苦しむ声だ。
「うごっ……ごふっ……」
ゆっくりと後ろを向いた私の目に入ってきたのは、お母様が黒い腕に首を絞められているという光景だった。
その腕が、どこから現れたものかはすぐにわかった。自分の背中から、それが出ていると気づいたからだ。
何が起こっているのか理解が追いつかない。
だが、このままではお母様の命がないことだけは理解できる。
私は、必死に体を動かした。
その腕から、お母様を振りほどくためだ。
それが功を奏して、黒い腕はお母様を離した。そのまま、腕は姿を消す。
不思議な光景だったが、今はお母様のことが気になった。
私は、ゆっくりと彼女に近づいてく。
「私に近づかないで! この化け物!」
そんな私に浴びせられたのは、平手打ちだった。
近づいた私をお母様は、ぶったのだ。それによって、私の体はふらついた。
そのまま、近くにあったソファの角に、私は頭をぶつけてしまう。
「何なのよ、あなた……化け物、化け物だわ!」
恐怖の表情を向けて去って行くお母様を見ながら、私は不思議な感覚を覚えていた。
私は、思い出したのである。自分が何者だったのかということを。
お母様からそんなことを言われて、私はゆっくりと涙を流した。
実の母親から、私はその存在を疎まれている。それはきっと、私が呪われているからなのだろう。
私の肉体に刻まれた忌々しいこの痣は、その呪いの象徴だ。
不幸を呼ぶとされているその刻印を持つ私は、家族の誰かも愛情を受けたことがない。
「その痣のせいで、私はあの人から見捨てられた……あなたのせいで、私は不幸になったのよ」
呪詛の言葉をかけられても、私にできるのは震えることだけだった。
とにかく、お母様が怖かった。彼女のその憎悪を一心に受け止めるのは苦しい。この場から逃げ出したい。その気持ちが、どんどん強くなっていく。
だけど、私は逃げられない。
気持ちとは裏腹に、私の足は動いてくれないのだ。
「忌々しい呪われた子……あなたなんか、私の子供ではない」
お母様は、私の体を抑え込んだ。
そして、そのまま私は強引にうつぶせにさせられる。
片手で両手首を掴まれて、膝によって足も動かない。
身動きを封じられた私の服を、お母様は手に持つナイフで切り裂いてく。
「この痣……呪われた痣、これさえなければ」
お母様は、私の背中にナイフを当てた。
この背中にある呪いの象徴に、そのナイフを突き刺そうとしているのだろう。
それを理解して、私は動けなくなった。
下手に動けば、鋭利な刃によってこの体が傷つけられると思ったからだ。
ただ、同時にわかっていた。このまま動かなくても、結果は変わらないと。
私はゆっくりと目を瞑った。いずれ来るはずの痛みに耐えるために、歯を食いしばる。
「あ、ああ……」
次の瞬間、私の耳に金属が床に落ちる音が響いてきた。
同時に聞こえてきたのは、お母様の苦しむ声だ。
「うごっ……ごふっ……」
ゆっくりと後ろを向いた私の目に入ってきたのは、お母様が黒い腕に首を絞められているという光景だった。
その腕が、どこから現れたものかはすぐにわかった。自分の背中から、それが出ていると気づいたからだ。
何が起こっているのか理解が追いつかない。
だが、このままではお母様の命がないことだけは理解できる。
私は、必死に体を動かした。
その腕から、お母様を振りほどくためだ。
それが功を奏して、黒い腕はお母様を離した。そのまま、腕は姿を消す。
不思議な光景だったが、今はお母様のことが気になった。
私は、ゆっくりと彼女に近づいてく。
「私に近づかないで! この化け物!」
そんな私に浴びせられたのは、平手打ちだった。
近づいた私をお母様は、ぶったのだ。それによって、私の体はふらついた。
そのまま、近くにあったソファの角に、私は頭をぶつけてしまう。
「何なのよ、あなた……化け物、化け物だわ!」
恐怖の表情を向けて去って行くお母様を見ながら、私は不思議な感覚を覚えていた。
私は、思い出したのである。自分が何者だったのかということを。
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