誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

文字の大きさ
20 / 28

20.簡単だったこと

しおりを挟む
 私は、アルディス様とイグニスとシスティアが泊っている宿に来ていた。
 落ち着いて話せる場所として、私の部屋は狭いため、こちらの一室を借りることにしたのだ。
 貴族三人が泊っていることからも明白だが、ここは辺りでも最も上等な宿である。故に私の部屋のように、周囲のことを気にする必要などはない。

 ちなみに一度部屋に戻って、メセリアやリエネッタさんには事情を説明している。イグニスとシスティアの来訪は二人も予期していたのか、それ程驚いてはいなかった。

「色々と聞きたいことがあるわね……でも、とりあえず無事で元気であるということが何よりだわ」
「それに関しては、色々な人が助けてくれたからかな」
「お祖父様のことを頼ったのは、正解だわ。何も知らない、誰も頼れる人がいないような所に行っていたら、どうなっていたことか……」

 システィアは、心底安心したというような顔をしていた。どうやら彼女は、相当心配してくれていたようだ。
 それは正直意外である。システィアはこういったことに関しても、いつものように毅然とした態度を貫くものだと思っていた。しかし、そういう訳ではなかったようである。
 いや、そもそもシスティアを悲しませたのは私だ。まずはそれを反省するべきだろう。

「ごめんね、システィア。色々と心配をかけてしまったみたいで……」
「いいえ、謝ってもらいたい訳ではないわ。私もミリーシャの気持ちについて、何もわかっていなかったのだもの。ごめんなさいね……」
「それこそ、謝ってもらいたいことではないかな。私が勝手に、色々と思い詰めていたというだけだし……」

 システィアには、本当に申し訳ないことをしてしまった。
 彼女やイグニスが、私が失踪して何も思わないなんて、そんなはずはないのである。それがどうして、わからなかったのだろうか。
 今となっては、それがわからない。それだけあの時の私は、混乱していたということなのだろうか。何にせよ、愚かなことをしてしまった。

「何について思い詰めていたのか……聞いても良いものかしら?」
「それは……」
「……言いたくないことならば、無理に言わなくてもいいわ。でも私は――私とイグニスは、あなたの友達で味方だから、何かあったら力になりたいの。それだけは覚えておいて」
「……うん、ありがとう」

 システィアの言葉に、私の心は軽くなっていた。
 私は本当に、こんな私にはもったいないくらい、良い友達を持ったものだ。その友達を頼るだけで、きっと良かったのだろう。それが今、やっとわかった。

「あのね……」

 だから私は、二人に相談してみることにした。
 マートン伯爵家における立ち位置に関する悩み、私はそれをゆっくりと打ち明けるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

完結 穀潰しと言われたので家を出ます

音爽(ネソウ)
恋愛
ファーレン子爵家は姉が必死で守って来た。だが父親が他界すると家から追い出された。 「お姉様は出て行って!この穀潰し!私にはわかっているのよ遺産をいいように使おうだなんて」 遺産などほとんど残っていないのにそのような事を言う。 こうして腹黒な妹は母を騙して家を乗っ取ったのだ。 その後、収入のない妹夫婦は母の財を喰い物にするばかりで……

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

処理中です...