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26.ともに笑い合えば
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「……私は色々と、履き違えていたようですね」
「ミリーシャ……」
「それがよくわかりました。随分と遠回りになってしまいましたが……」
私はゆっくりと、ため息をつく。自身の愚かさというものを、実感していたのだ。
勘違いして家出して、私は家族に迷惑をかけてしまった。それについては、反省するべきだろう。
「あなたが悪い訳ではありません」
「ティシア様……」
私が少し気落ちしていると、ティシア様が言葉を発した。
その言葉も私に向いている視線も、とても力強い。それに私は、少し驚いてしまう。ティシア様からそのように強い感情を向けられるのも、これが初めてだったからだ。
「全ては私の責任です。私はあなたに対して、何もすることができませんでした」
「ティシア、そのようなことは……」
「いいえ、後妻である私が責任を果たせていなかったのです。私がミリーシャと分かり合っていれば、今回のようなことは起こらなかったはずです」
ティシア様の言葉からは、今まで理解できなかった彼女の感情が読み取れた。
きっとティシア様も、悩んでいたのだろう。私とどう接していくべきか。
彼女は私のことを疎んでいた訳ではない。それは私が穿った見方をしていただけだ。
いやそれ所か、私こそがティシア様を疎んでいたのかもしれない。彼女と出会った頃の私の中には、まだ母のことが色濃く残っていた。だからティシア様を、認められなかったのかもしれない。
「ティシア様、申し訳ありませんでした。私は、あなたから逃げてきました」
「ミリーシャ? それはどういう……」
「私はティシア様に反発していました。あなたを母親だとは、思えなかったのです」
「……当然のことです。私は力不足でした」
ティシア様は、メセリアとよく似ている。いや、逆の方が正しいだろうか。
ともあれ彼女は、責任感が強い人なのだ。私のことも、きっと背負おうとしたのだろう。
ただそれは、無理な話だ。私には母がいる。ティシア様には、その代わりは務まらない。それは彼女が力不足だからではなく、誰であっても誰かの代わりになんてならないのだ。
私は、もしかしたらティシア様も、形というものにこだわり過ぎていたのかもしれない。母と娘、その表面上の関係性ばかりに目を向けていた。それがきっと失敗だったのだ。
「ティシア様、あなたは力不足などではありません……そもそも私達は、もっと簡単な方法に気付いていなかっただけなのです。きっと私達は、ともに笑い合うだけで良かったのです」
「ともに、笑い合う……?」
「そうするだけで、色々なことがどうでも良くなるものなのです。私はそれをメセリアに教えてもらいました。話をしましょう。今日のような厳かなものではなくて、一緒に紅茶を飲んで、お互いの好きなことを話して……それでいいんです」
「……」
私の言葉に、ティシア様は目を丸めていた。
まだ彼女には、わからないのかもしれない。だけどきっと、私達は分かり合える。お互いにその気持ちがあれば、きっと大丈夫だ。
その関係性は、母と娘ではないのかもしれない。だけど私達は、家族になれる。メセリアのお陰で、私はそう思えた。
「ミリーシャ……」
「それがよくわかりました。随分と遠回りになってしまいましたが……」
私はゆっくりと、ため息をつく。自身の愚かさというものを、実感していたのだ。
勘違いして家出して、私は家族に迷惑をかけてしまった。それについては、反省するべきだろう。
「あなたが悪い訳ではありません」
「ティシア様……」
私が少し気落ちしていると、ティシア様が言葉を発した。
その言葉も私に向いている視線も、とても力強い。それに私は、少し驚いてしまう。ティシア様からそのように強い感情を向けられるのも、これが初めてだったからだ。
「全ては私の責任です。私はあなたに対して、何もすることができませんでした」
「ティシア、そのようなことは……」
「いいえ、後妻である私が責任を果たせていなかったのです。私がミリーシャと分かり合っていれば、今回のようなことは起こらなかったはずです」
ティシア様の言葉からは、今まで理解できなかった彼女の感情が読み取れた。
きっとティシア様も、悩んでいたのだろう。私とどう接していくべきか。
彼女は私のことを疎んでいた訳ではない。それは私が穿った見方をしていただけだ。
いやそれ所か、私こそがティシア様を疎んでいたのかもしれない。彼女と出会った頃の私の中には、まだ母のことが色濃く残っていた。だからティシア様を、認められなかったのかもしれない。
「ティシア様、申し訳ありませんでした。私は、あなたから逃げてきました」
「ミリーシャ? それはどういう……」
「私はティシア様に反発していました。あなたを母親だとは、思えなかったのです」
「……当然のことです。私は力不足でした」
ティシア様は、メセリアとよく似ている。いや、逆の方が正しいだろうか。
ともあれ彼女は、責任感が強い人なのだ。私のことも、きっと背負おうとしたのだろう。
ただそれは、無理な話だ。私には母がいる。ティシア様には、その代わりは務まらない。それは彼女が力不足だからではなく、誰であっても誰かの代わりになんてならないのだ。
私は、もしかしたらティシア様も、形というものにこだわり過ぎていたのかもしれない。母と娘、その表面上の関係性ばかりに目を向けていた。それがきっと失敗だったのだ。
「ティシア様、あなたは力不足などではありません……そもそも私達は、もっと簡単な方法に気付いていなかっただけなのです。きっと私達は、ともに笑い合うだけで良かったのです」
「ともに、笑い合う……?」
「そうするだけで、色々なことがどうでも良くなるものなのです。私はそれをメセリアに教えてもらいました。話をしましょう。今日のような厳かなものではなくて、一緒に紅茶を飲んで、お互いの好きなことを話して……それでいいんです」
「……」
私の言葉に、ティシア様は目を丸めていた。
まだ彼女には、わからないのかもしれない。だけどきっと、私達は分かり合える。お互いにその気持ちがあれば、きっと大丈夫だ。
その関係性は、母と娘ではないのかもしれない。だけど私達は、家族になれる。メセリアのお陰で、私はそう思えた。
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