嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。

木山楽斗

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3.見つからない屋敷

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 私がロナード様の元に行くことになったは、ホルルナに言われてからすぐのことだった。
 カルランド公爵家は、私を必要としていない。そのため、私は半ば追い出されることになってしまったのだ。
 そんな私には、メイドが一人ついてきた。それは、メリリナさんである。

「本当にすみませんね、メリリナさんまで追い出されてしまって」
「いえ、問題ありません。私は、お嬢様のメイドですから」

 彼女は、私のお母様が信頼していたメイドだ。
 カルランド公爵家における私の唯一の味方だった人で、いつも私を助けてくれた。
 だが、私を助けるというのはあの家では快く思われることではない。結果的に、私を追い出すのと同時に彼女も追い出されてしまったのだ。

「そもそも、私はお仕事として同行させてもらっていますからね。不満なんて、あるはずがありません」
「でも、これから行くのはどうやらあまりいい所ではないようですよ?」
「問題ありません。どのような場所であっても、お嬢様をお支え致します」

 メリリナさんは、本当に私に良くしてくれる。メイドであるため、ホルルナや両親の愚行と止めることはできないが、それでも色々な面で私を助けてくれた。
 そんな彼女がついて来てくれるのは、正直とても心強い。新しい地でも、やっていけるような気がする。

「おや……」
「あら?」

 そこで、私達は声をあげた。馬車が止まったからである。
 つまりは、目的地に着いたという訳だ。そう思って周囲を見渡した私は、疑問を覚える。
 私が目指していたのは、ロナード様が住んでいる屋敷であったはずだ。だが、この辺りにそれは見当たらない。

「着きましたよ」
「着いた……? 本当にここなんですか?」
「ええ、地図にはそう書いてあります」

 御者が戸を開けてくれたが、私達は下りる気になれなかった。
 まさか、ホルルナが適当な場所を地図に示したのだろうか。どう考えても、ここには屋敷なんて存在しない。

「えっと……この近くに屋敷があるんですかね」
「さあ、私にはわかりませんね。地図を見て来ただけですから。まあ、あそこに家がありますし、そこの人に聞いてみればいいんじゃないですか?」
「そうですね……とりあえず、そうさせてもらいます。申し訳ありませんが、少し待っていてもらえますか? もしかしたら、場所が違うかもしれませんから」
「ええ、それは構いません。ああ、よかったら私が聞いてきましょうか?」
「いえ、これからここで暮らす訳ですし、ついでに挨拶もしておきます」

 御者にそう言ってから、私は見えている家に向かった。
 小さな家であると思っていたが、近づいてみると意外と大きい。とはいえ、貴族の屋敷とは言えないが。

「……失礼します。誰かいませんか?」

 呼び鈴を鳴らしながら、私は声をあげた。
 すると、中から大きな音が聞こえてくる。これは、何かが落ちた音だろうか。

「……いやいや、お待たせしました。おっと、あなたは?」
「あ、えっと……私は、フェルリナ・カルランドと申します。この度、ロナード殿下の元に嫁ぐことになりまして」
「ああ、あなたがフェルリナ嬢ですか」
「え?」
「え?」

 私は、目の前の男性と顔を見合した。
 よく見てみると、彼の顔はどこかで見たことがある。だが、あり得ない。まさか、こんな所にそんな人がいるなんて。

「初めまして、フェルリナ嬢。私はロナード・アルキネスと申します」
「そ、そんな馬鹿な……どうして、殿下がこんな家に?」
「ははっ……まあ、驚きますか」

 私の言葉に、ロナード殿下は笑みを浮かべていた。
 開いた口が塞がらない。一体、どうして彼のような立場の人が、こんな小さな家に住んでいるのだろうか。
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