勝手に私が不幸だと決めつけて同情しないでいただけませんか?

木山楽斗

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5.声をかけられて

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 幼い頃から、私は偉大なる人達の背中を見て育ってきた。
 特にお兄様やお姉様の影響は多大だ。私の振る舞いは、二人の振る舞いを見て身に着けたものだといえるだろう。

「なるほど、エレティア嬢のお兄様とお姉様は、偉大な方だったのですね?」
「オーデン伯爵家の長男イルギス様と長女ウルティア様の噂は、聞いたことがあります。凛々しい獅子のようなイルギス様と可憐で白鳥のようなウルティア様。二人とも名高い伯爵令息と伯爵令嬢でしたわね?」
「ええ、そうなんです。二人は私の目標です」

 舞踏会で会った二人の令嬢は、私とすぐに打ち明けてくれた。
 どちらかと言えば同情的な目で見ていた二人だったからこそ、私と話すことに関して忌避感などは覚えていないようだ。
 それ所か、私がお兄様やお姉様のこともあってか、かなり盛り上がってくれている。愛する二人のことを評価してくれているのは、私にとっても嬉しいことだ。

 二人に話しかけてみて、よかったと思う。こういう風にお友達が増えることも、私にとってはとても喜ばしいことなのだ。

 ただ、意気揚々と話しかけて失敗したことも何度かあった。私のことを忌み嫌うような人も、結構多かったのである。
 しかし私は、交友関係を広げるためにも、これからも積極的に人に話しかけていくつもりだ。それは自分自身のためでもあるし、オーデン伯爵家のためでもある。

 表に出て行く以上、私は自らの見た目によって生まれる風評を振り払う責務があるといえるだろう。私の存在によって、オーデン伯爵家の評価が下がるなんてあってはならない。
 故に私は、自らの評価を高めるための行動をする。それが明るい未来に繋がると信じて。

「……おや君は」
「え?」

 二人の令嬢との会話が落ち着いた時、頃合いを見計らったかのように私に声をかけてくる人がいた。
 その人物は、男性だ。背が高く、狐を思わせるような顔をした男性は、目を細めて私のことを見ている。

「僕の認識に間違いがなければ、君はオーデン伯爵家のエレティア嬢であるだろうか?」
「え? ええ、そうですね。私は、オーデン伯爵家のエレティアです」
「なるほど……」

 男性は、私の顔の隠している部分に視線を向けてきた。
 彼が何故、私をすぐに認識できたのか。それは恐らく、顔に痣があることから認識したことなのだ。

 そのことに関して、別に私は何も思っていない。問題なのは、目を細めた男性の表情だ。
 彼の表情には、何かしらの思惑が隠れているような気がする。そういう人に対しては、警戒しておかなければならない。そう思って、私は少し気を張り詰めらせた。
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