勝手に私が不幸だと決めつけて同情しないでいただけませんか?

木山楽斗

文字の大きさ
7 / 19

7.ベランダの先客

しおりを挟む
 ルベルス様と一緒に踊り終わった私は、ゆっくりとため息をついていた。
 結局彼とは何曲か躍ることになったが、なんというかすごく疲れてしまった。
 もちろん、踊りによる疲れはある。だが、疲れた一番の理由はそれではない。

「ルベルス様のあの目……」

 踊っている間も少し会話を交わしたが、ルベルス様はその間ずっと私の痣の部分を見ていた。
 その視線には、侮蔑などといった負の感情が明らかに込められていた。彼は私に対して、決していい感情などは持っていなかったのである。

 そんな彼が、一体どうして私を誘ったのか。
 それも中々に気になっている点だ。その意図がわからないというのは、どうにも怖い。

「……あまり考えても、仕方ないのかもしれないけれど」

 ルベルス様が何を考えていたのか、それを考える必要があるのかどうかは微妙な所だ。
 結局、踊って別れただけである訳だし、そこまで気にする必要はないのかもしれない。

 ただ、すぐに気持ちが切り替えられる程に私は落ち着けていなかった。
 とりあえず私は、ベランダに出てみることにした。外の空気でも吸えば、多少は落ち着けると思ったのだ。

「あっ……」

 ベランダに出て行った私は、そこに先客を見つけた。
 もう夜であるため辺りは少し暗いが、そこにいるのは恐らく男性であるだろう。その男性は、柵に手をかけて外の方を見つめている。

 一人でいることから、大方彼も私と同じ理由でここにいるのだろうか。
 そんな彼に話しかけるかどうかは微妙な所だ。一人でいたいという可能性もあるし、流石に躊躇ってしまう。

「おや……」

 私が躊躇っていると、男性がこちらを向いた。
 その男性の顔を見て、私は少し驚く。彼の顔が、とても整っていたからだ。

 男性に対してこういう言い方をするべきかどうかはわからないが、男性はとても美人である。
 かっこいいという感じではなく、思わず見惚れてしまうくらいに綺麗だ。

「……どうかされましたか? なんだか、ぼうっとしているみたいですけれど」
「ああいえ、なんでもありません。えっと、あなたも休憩ですか?」
「ええ、そうですよ。ということは、あなたも同じ理由ですか」
「はい、少し疲れてしまって」
「気持ちはよくわかります。やはりそういう時は、風に当たりたいですよね……」

 綺麗な男性は、私に対して笑顔を見せてくれた。
 彼からは、特に敵意のようなものは感じられない。私の見た目に対して、特に偏見は持っていないようだ。いや、暗いため見辛いだけかもしれないのだが。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした

珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。 それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。 そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

幼なじみは、私に何を求めているのでしょう?自己中な彼女の頑張りどころが全くわかりませんが、私は強くなれているようです

珠宮さくら
恋愛
厄介なんて言葉で片付けられない幼なじみが、侯爵令嬢のヴィディヤ・カムダールにはいた。 その人物に散々なまでに振り回されて、他の者たちに頼られていたことで、すっかり疲弊していたが頼りになる従兄が助けてくれてりしていた。 だが、自己中すぎる幼なじみは、誰もが知っている彼女の母親すらとっくに越えていたようだ。 それだけでなく、ヴィディヤの周りには幼なじみによって、そこまでではないと思われてしまいがちな人たちがいたようで……。

私の感情が行方不明になったのは、母を亡くした悲しみと別け隔てない婚約者の優しさからだと思っていましたが、ある人の殺意が強かったようです

珠宮さくら
恋愛
ヴィルジ国に生まれたアデライードは、行き交う街の人たちの笑顔を見て元気になるような王女だったが、そんな彼女が笑わなくなったのは、大切な人を亡くしてからだった。 そんな彼女と婚約したのは、この国で将来を有望視されている子息で誰にでも優しくて別け隔てのない人だったのだが、彼の想い人は別にいたのをアデライードは知っていた。 でも、どうにも何もする気が起きずにいた。その原因が、他にちゃんとあったこアデライードが知るまでが大変だった。

厄介者扱いされ隣国に人質に出されたけど、冷血王子に溺愛された

今川幸乃
恋愛
オールディス王国の王女ヘレンは幼いころから家族に疎まれて育った。 オールディス王国が隣国スタンレット王国に戦争で敗北すると、国王や王妃ら家族はこれ幸いとばかりにヘレンを隣国の人質に送ることに決める。 しかも隣国の王子マイルズは”冷血王子”と呼ばれ、数々の恐ろしい噂が流れる人物であった。 恐怖と不安にさいなまれながら隣国に赴いたヘレンだが、 「ようやく君を手に入れることが出来たよ、ヘレン」 「え?」 マイルズの反応はヘレンの予想とは全く違うものであった。

病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです

柚木ゆず
ファンタジー
 優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。  ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。  ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。

妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑
恋愛
家族から才能がないと思われ、蔑まれていた姉が辺境で溺愛されたりするお話です。 2/21完結

没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。

木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。 不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。 当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。 多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。 しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。 その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。 私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。 それは、先祖が密かに残していた遺産である。 驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。 そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。 それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。 彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。 しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。 「今更、掌を返しても遅い」 それが、私の素直な気持ちだった。 ※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)

処理中です...