事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗

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16.悪魔の誤算(モブ視点)

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 子爵令嬢であるフェリーナは、困惑していた。
 高い地位を持つ貴族である自分は、平民にどのようなことをしても揉み消せる。そう思っていた彼女にとって、自分が牢屋の中にいるという結果は信じられないものだったのだ。

「な、何がどうなっているのよ? どうしてこの私が、こんな扱いを……」
「……どうしてって、フェリーナ様のせいではありませんか」
「……え?」

 ともに捕まっている取り巻き三人は、フェリーナに冷たい目を向けていた。
 彼女達は、牢屋の隅へとフェリーナを追い詰めてくる。

「何が子爵家の権力ですか! そんなもの何の意味がないじゃありませんか!」
「な、何を……」
「私達が突き落としたあの女性は……公爵家の令嬢だったんですよ! あなたが崇拝する地位よりも遥かに上の地位の人間です!」
「ど、どうして……」

 フェリーナは、だんだんと自分の状況を思い出していた。
 ラナリアという田舎者のメイドを突き落とす。それが自分達が犯した罪である。
 しかしそれは、揉み消せるはずのことだった。だが、無理だったのだ。彼女の地位が、それを許さなかったのである。

「う、嘘よっ……田舎出身のメイドって言っていたじゃない!」
「知りませんよ。そんなことは……でも、事実としてあるのは、私達は人生を棒に振ってしまったということです」
「あなたなんかについて行かなければよかった……本当は、あんなことしたくなかったのに!」
「全部フェリーナ様のせいですよ! あなたがあんなこと言わなかったら……」

 取り巻き達三人は、口々にフェリーナのことを罵倒してきた。
 フェリーナはそれに困惑してしまう。彼女なりに、取り巻き達のことを信じていたからだ。
 そんな彼女達にも裏切られた。その事実に、フェリーナはひどく動揺していた。彼女の心の中に、絶望と怒りが広がっていく。

「す、好き勝手言って……あなた達だって、自分の意思で私に賛同していたじゃない! 散々甘い汁を吸っておいて、今更全部私に押し付けるというの!?」
「私達は、フェリーナ様が怖かっただけです。あなたのターゲットにされたくなかった。それだけです!」
「元はと言えば、あなたの差別意識がいけないのです! 人を見下して、威張り散らして……なんと醜いことでしょうか!」

 牢屋の中で、四人は言い争っていた。
 溜まっていた不満が爆発した三人と、その身勝手な主張にイラついたフェリーナ。四人の争いは、どんどんとヒートアップしていく。
 しかし結局の所、彼女達の罪は変わらない。これから彼女達は、犯した罪を長い期間をかけて償わなければならないのだ。
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