七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。

木山楽斗

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「ラムーナ、そなたには聖女を下りてもらう」
「……え?」
「父上、それはどういうことですか?」

 レムバル様とともに玉座の間にやって来た私は、国王様から最初にそう告げられた。
 その言葉には、私もさらにはレムバル様までもが驚いている。それはつまり、彼も知らされていなかったことなのだろう。

「これは一体……」
「何故、今更決定が覆されているのだ……?」

 次に聞こえてきたのは、周囲にいる者達のそのような声だった。
 どうやら、その事実は誰にも知らされていなかったことであるらしい。聖女の選抜試験をしていた試験官も驚いているし、これは国王様の独断ということなのだろうか。

「父上、何故そのような判断を? まさかとは思いますが、父上もサリームの思い通りにしたくないなどという戯言を支持するのですか?」
「いや、そういう訳ではない。他に適任が見つかったというだけだ」
「適任?」

 国王様の言葉に、レムバル様は怪訝な顔をしていた。
 それは、当然の反応である。私の他に適任などいるはずはない。あの試験において、最も優れた魔法使いは私だ。
 いやまさか、あの会場に来ていない優れた魔法使いが見つかったとでもいうのだろうか。
 しかしそのような魔法使いは聞いたことがない。そういった魔法使いは、大なり小なり噂になるはずなのだが。

「ラムーナさん以上に聖女に適任な人物などいないでしょう? 試験の結果は父上も知っていますよね? 彼女に匹敵する実力があったのはサリームだけです。彼女以外とは天と地程の差があったはずです」
「適任者は試験を受けてはいない」
「……それは一体誰なのです」
「ふむ、それでは入ってもらうとするか……」

 そこで国王様は、ゆっくりと手を上げた。すると玉座の間に、一人の女性が入ってくる。
 その女性には、見覚えがあった。それは当然である。なぜなら彼女は、この国の第一王女であるからだ。

「ロメリア……まさか君が聖女に?」
「ええ、そうですわ。お兄様」
「馬鹿な……」

 ロメリア様の登場に、レムバル様は一言吐き捨てた。
 その一言だけでわかる。彼女に、魔法使いとしての優れた才能がないということが。

「父上、ロメリアには聖女としての才能がありません」
「うむ、それはもちろんわかっている。しかしながら、ロメリアには国民を惹きつける魅力がある」
「魅力?」
「聖女というものは、人々の前によく立つものだ。無論、ラムーナに不足があるという訳ではない。だが、そういった事柄に関してロメリアは適任であるだろう」
「聖女に必要なのは、そのようなものではないと記憶していますが」

 レムバル様は、国王様に対して必死に反論してくれていた。
 彼は言っていた。権力によって、聖女の地位が揺れるのは嫌だと。
 だからこそ、この行いを許せないのだろう。これは明らかな横暴だ。

「もちろん、その辺りも考慮している。ラムーナには聖女補佐としてロメリアの傍についてもらい、聖女としての業務を担ってもらうのだ」
「……なんですって?」
「それなら、特に問題があるという訳ではあるまい。適材適所というやつだ」
「ラムーナの働きを、ロメリアのものとしようというのですか?」
「そうは言っていない」

 レムバル様の言葉を国王様は否定したが、彼の言う通りである。
 聖女補佐という役職で私がした働きは、全てロメリアの評価に繋がるだろう。実際の聖女である彼女が成し遂げた事柄として、世間では扱われるはずである。
 つまり私は、陰で苦労を背負うだけになるということだ。それはなんというか納得できない。

「無論、ラムーナには好待遇を約束しよう。聖女として働く以上の収入を約束する」
「それは……」

 そこで国王様は、私に視線を向けた。
 それは恐らく、私の事情を知っているからなのだろう。
 最初に王都に来る際に、私は出身だった村の人達から援助してもらっていた。私にはその人達に恩を返したいという気持ちがあるのだ。

「ラムーナさん、どうかされましたか?」

 現在、私の暮らしている村は不作に悩まされているらしい。それをどうにかするためには、お金が必要だ。聖女という役職に就くことは、そのための当てでもあったのである。
 下を見られているということは、理解できた。しかしここで首を縦に振らなければ、私の村は大変なことになってしまうかもしれない。
 聖女に落ちても王城で魔法使いとして雇ってもらえる可能性もあったが、それは恐らく絶たれたと考えるべきだろう。高収入を得るためには、ここで頷くしかない。

「……わかりました」
「ラムーナさん……」

 結局私は、国王様の理不尽な頼みを受け入れた。
 こうして私は、聖女の補佐として働くことになったのである。
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