旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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28.もう一つの家

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 バルハルド様は、以前はラプリードで暮らしていたようだ。
 その彼の家は、今でもまだ残っているらしい。レスティア商会の本拠点に赴く際は、そちらを利用しているそうだ。
 その家に、私とエルガドは招かれた。宿を取っても良かったそうだが、私ができればこちらの家に泊まりたいと言ったため、そうなったのだ。

「長く利用していないみたいですけれど、とても綺麗ですね……」
「その辺りは、人を雇って掃除してもらっているからな」
「まあ、当然といえば当然ですね。ほったらかしにしている訳はないのですから」

 ラプリードの家は、とても綺麗だった。
 管理した人も、つい最近来たばかりなのではないだろうか。そう思えるくらいに、家の中は掃除が行き届いている。

「さてと、それでは早速始めるとしようか」
「え、えっと……」

 そんな家の厨房に、現在私達は集まっていた。
 これからバルハルド様が、料理をするらしいからだ。
 ここに来るまでの道中で、彼は食材を買っていた。それで何かを作ると聞いた時は、私もエルガドもひどく驚いたものだ。

「バルハルド様は、料理が得意なのですか?」
「得意という程ではない。人並みにできるというだけだ」
「それでも、すごいと思ってしまいます」
「平民であるなら、普通のことだ。料理人や家政婦など雇える訳もないし、いつも外食という訳にもいかないからな」
「そういうものですか……」

 貴族である私は、基本的に料理をする必要はない。
 一応嗜みとして習ったこともあるのだが、それが身に着いているかは微妙な所だ。正直、ほとんど覚えていない。
 エルガドも、料理に関しては疎いようだ。お母様が生きていた頃は作ってもらっており、軟禁生活でも食事は運んでもらっていたらしい。

「さて、エルガド、今回はお前に知恵を授けるために、俺が作るという方法を選んだ。お前にも手伝ってもらうぞ?」
「はい、もちろんです」
「それから、リメリア嬢も手伝うということでいいのか?」
「あ、はい。この機会に学んでおきたいと思っています」
「なるほど、まあそれ程難しいことはない。二人とも肩の力は抜いておけ」

 私とエルガドは、バルハルド様の言葉に顔を見合わせることになった。
 正直な所、不安でいっぱいだ。本当に私達は、無事に料理を終えることができるのだろうか。

「本当に大丈夫でしょうか……」
「リメリア嬢は、料理をなんだと思っているんだ」
「一歩間違えたら、大惨事になると聞いたことがありますが……」
「エルガド、そのようなことは断じてない。少なくとも、今日用意した食材は安全だ」

 不安な私達に対して、バルハルド様は呆れたような笑みを浮かべていた。
 そんな感じで、私達は料理を学び始めるのだった。
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