王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗

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8.言いたかったこと

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「アドルヴ殿下、今回の婚約に関して、私は色々と言いたいことがあります」
「言いたいこと?」

 玉座の間での話が終わった後、私はアドルヴ殿下と二人きりで話すことになった。
 それは私にとっても、望む所である。色々と言いたいことがあったからだ。

「まずこの婚約ですが、王族とバレリア公爵家は親族です。近しい関係にある者達が婚約するというのは、そこまで心証が良いことではないのではないでしょうか?」
「なるほど、世間からの評判を気にされている訳ですか……確かに、このように身内での結束を高める婚約は良くないと思われるかもしれません。しかし、僕は王太子です。次期国王となる僕の妻は、信頼できる者でなければなりません。その点において、あなたは適任としか言いようがない」

 私の言葉に対して、アドルヴ殿下は涼しい顔で答えを返してきた。
 彼の理論は、わからない訳ではない。王妃になる人が、王族に対して反感などを持っていたら大変だ。国が混乱することになるかもしれない。
 その点において、私は安牌だといえる。バレリア公爵家と王族は深く繋がっているため、裏切ることなどはほぼないからだ。

「わかりました。それなら王族とバレリア公爵家の婚約は、良いとしましょう。しかしながら、婚約するのが私である必要はありませんよね?」
「というと?」
「リルルナのことです。彼女が優秀であるということは、アドルヴ殿下も良くご存知でしょう? 王妃とするなら彼女の方が色々と都合が良いのではありませんか?」

 リルルナ・バレリアには、この国の有力者達も一目置いている。
 優秀な令嬢として知られている彼女の方が、王妃としては適任であるだろう。というか、侮られている私が王妃になるのは危険だ。王家が舐められることに繋がりかねない。

「バレリア公爵家は、長男であるルドールが継ぎます。男子が家を継ぐというのは、この国で定められているルールですからね。よってリルルナは嫁に行くことになる。その対象が王家であっても良いはずです。というよりも、王家以外に彼女を握らせるのは得策ではないとさえいえます」

 リルルナの影響力は大きい。社交界でも人気がある彼女の動向は、皆が注目していることだろう。
 そんな彼女を他家に渡すというのも、まずいことかもしれない。考えれば考える程、王家に嫁ぐのは彼女の方が良いと思えた。
 恐らく、長女であるという点を考慮してのことではあるのだろう。だが、今回に関してはそういった生まれの順などは無視するべきだ。もっと重要なことを、考えるべきだろう。
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