無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗

文字の大きさ
1 / 30

1.無事にエンディングを迎えられて

しおりを挟む
 魔法学園の卒業式が粛々と終わり、堅苦しい式典から一転、卒業生達は卒業パーティーの会場で賑わっている。
 そんな中、私はただ一人黙々と食事をしているだけだ。その理由は単純で、話す相手がいないからである。

「アルメリア、踊ろう」
「はい、エクティス様……」

 私の目に入ってきたのは、卒業生の中でも一際目立つ二人組だった。
 きっと誰が見ても、あの二人は特別であるとわかるはずだ。周囲にいる多くの者達と、あの二人は少々毛色が違う。
 その理由を知っているのは、きっと私だけだろう。私は、この世界の人々から知らないあることを知っているのだ。

「改めて考えても、不思議なものね……」

 この世界は、ある乙女ゲームの世界である。ここで暮らしている者達は確かに生きている人間ではあるのだが、それでも私が知っているゲームの登場人物達とそっくりなのだ。
 それを私が初めて理解したのは、五歳くらいの時だっただろうか。ある時突然私は思い出したのだ。前世の記憶を。

「ラナトゥーリ・ウェルリグル侯爵令嬢……まさか、私が悪役令嬢になるなんて」

 不慮の事故で亡くなった私は、乙女ゲームの世界に転生した。私は、そのように解釈している。
 違う世界とはいえ、二度目の人生を送ることができるというのは嬉しいことだといえるだろう。ただ、私には少しだけ懸念があった。私はどう考えても、乙女ゲームにおいて悪役だった人物に転生していたからだ。

「ラナトゥーリ……エクティスに好意を寄せており、アルメリアの邪魔をする令嬢。あらゆるルートでその悪行を暴かれて裁かれる正に悪役としかいえない女性。そんな人に転生するなんて、私は運がいいのか悪いのか……」

 ラナトゥーリ・ウェルリグルは、ゲームにおいて悲惨な末路を迎える。それは自業自得ではあるのだが、私にはとても気掛かりだった。
 初めの頃は別に悪行を重ねなければ問題はないとも思っていた。ただ、それでは甘かったのだ。いつ頃からか、私はそれを理解した。
 この世界には、因果のようなものが渦巻いている。色々な流れが、私をバッドエンドに向かわせようとしていたのだ。

「なんとも不思議なことではあるけれど……私が何かすると決まって不幸が起きた。ゲームで語られていたラナトゥーリの幼少期のエピソードが起こってしまった」

 私が善意で行った行為は、周りに回ってゲームのエピソードに繋がった。それによって、私は理解することになった。私の人生が、一筋縄ではいかないということを。
 だから、私は今までずっと心掛けてきた。なるべく大人しく生きていくことを。
 人とあまり関わらず特異なことはしない。善意も悪意も持たずに静かに暮らす。それを心掛けて、私は生きてきたのだ。

「まあ、その結果としてこうして無事に卒業できるのだから、よかったとしか言いようがないわね……」

 結果的に、私はゲームのエンディングの先まで無事に辿り着くことができた。
 本来であれば、この時点でラナトゥーリは断罪されている。それがなかったということは、私は助かったということなのだろう。
 それ自体は、とても喜ばしいことだと思っている。ただ、何故だろうか。私の心には、ぽっかりと穴が開いているのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。 学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。 「好都合だわ。これでお役御免だわ」 ――…はずもなかった。          婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。 大切なのは兄と伯爵家だった。 何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

処理中です...