9 / 30
9.進むべき道
しおりを挟む
ウェルド様と別れてから、フラウバッセンさんは王城の様々な場所を見せてくれた。
その中でもやはりためになったのは、これから私が働く魔術師団関係の場所である。私がここでどのように働いていくのかの参考になった。
「ラナトゥーリ嬢は、希望などありますか?」
「希望、ですか……」
一通りの案内が終わった後、フラウバッセンさんはそのように言ってきた。
ひとえに魔術師団といっても、その業務は様々である。国を守る結界の管理、魔法関連の施設の運営、魔法そのものの研究。その中で私が何をしたいかというのは、すぐに決められるようなことではなかった。
「フラウバッセンさん、いくつか質問してもいいですか?」
「ええ、もちろんです。何が聞きたいのでしょうか?」
「私個人としては、魔法の研究には興味があります。その真理を解き明かしたり、新たな魔法を開発することに憧れがあるんです」
「おや、そうなのですか」
今まで見てきた業務の中で私が最も面白そうだと思ったのは、魔法の研究であった。
魔法の性質を解き明かしたり、新たなる魔法を開発する。それは魔法を学んでいく中で、きっと誰もが覚える感情であるだろう。
「ただそういう道に進む前に、ある程度実務を経験する必要があるのではないかと思ったのです。魔法の研究といっても、魔術師団が行っているのはこの国を発展させるための魔法である訳ですし、色々と経験してからの方が何が必要なのかわかる気がして……」
「……まあ、確かにそういう面もあるかもしれませんね。ただ、ラナトゥーリ嬢の才覚であるなら特に問題はないように思いますがね」
「そうなのですか?」
私の懸念に対して、フラウバッセンさんは笑顔を浮かべていた。
そこで彼は一度立ち上がり、執務用らしき机からいくつかの書類を取り出してこちらに戻って来た。
その書類の内容に、私は驚く。それは見覚えがあり過ぎるものだったからだ。
「まあ、まだ記憶にも新しいとは思いますが、こちらはあなたの卒業論文です」
「え、ええ……」
「反射魔法及びそれを応用した反射装備の開発、これは非常に素晴らしい内容でした」
「それは……ありがとうございます」
学園在学中に、私はとある魔法の研究をしていた。
それは、魔法を跳ね返す魔法及びその魔法を特定の武具に付与する研究だ。
しかしながら、その魔法に関しては結局未完成のまま終わってしまった。正直な所その卒業論文も、それ程褒められるような内容ではないのである。
「その魔法に関しては、結局開発に失敗してしまいました」
「ええ、そのようですね。いくつかの課題も残っているように見受けられます。ただ、これをほとんど一人で開発しようとしていたという事実に、私は着目しているのです」
「そうなんですか?」
「発想力というものは、魔法の開発においてとても重要なものです。その発想力があなたには備わっていると私は思いました。ですからもしもよければ、あなたにはこの魔法の研究を続けてもらいたい」
「……え?」
フラウバッセンさんの言葉に、私は驚いていた。
話の流れから、魔法の研究を勧められることはわかっていた。しかしながら、それが学園で考えていた魔法そのものだとは思っていなかったのである。
「この魔法は、非常に有益なものになります。対魔法戦闘において、とても有利に働く魔法ですからね……」
「それは……そうだと思いますが」
「特に騎士団は、是非ともこの魔法が欲しいと思っているでしょう。対魔法の手段は重要です。もしもこの魔法の開発に成功すれば、彼らの要になるかもしれません」
フラウバッセンさんは、楽しそうに笑っていた。
よく考えてみれば、魔法学の権威と呼ばれる彼も数々の魔法を開発したことで知られている人物だ。
そのような人物がこれ程までに勧めてくれているのだから、私の進むべき道はそちらということなのだろう。元々自分でもやってみたいことであったし、ここはその勧めに乗った方がいいかもしれない。
「……わかりました。それなら、私に反射魔法の研究をさせていただけますか?」
「ええ、もちろんです」
私の言葉に、フラウバッセンさんは力強く頷いてくれた。
こうして私は、かつて学園で取り組んでいた研究と再び向き合うことになったのだった。
その中でもやはりためになったのは、これから私が働く魔術師団関係の場所である。私がここでどのように働いていくのかの参考になった。
「ラナトゥーリ嬢は、希望などありますか?」
「希望、ですか……」
一通りの案内が終わった後、フラウバッセンさんはそのように言ってきた。
ひとえに魔術師団といっても、その業務は様々である。国を守る結界の管理、魔法関連の施設の運営、魔法そのものの研究。その中で私が何をしたいかというのは、すぐに決められるようなことではなかった。
「フラウバッセンさん、いくつか質問してもいいですか?」
「ええ、もちろんです。何が聞きたいのでしょうか?」
「私個人としては、魔法の研究には興味があります。その真理を解き明かしたり、新たな魔法を開発することに憧れがあるんです」
「おや、そうなのですか」
今まで見てきた業務の中で私が最も面白そうだと思ったのは、魔法の研究であった。
魔法の性質を解き明かしたり、新たなる魔法を開発する。それは魔法を学んでいく中で、きっと誰もが覚える感情であるだろう。
「ただそういう道に進む前に、ある程度実務を経験する必要があるのではないかと思ったのです。魔法の研究といっても、魔術師団が行っているのはこの国を発展させるための魔法である訳ですし、色々と経験してからの方が何が必要なのかわかる気がして……」
「……まあ、確かにそういう面もあるかもしれませんね。ただ、ラナトゥーリ嬢の才覚であるなら特に問題はないように思いますがね」
「そうなのですか?」
私の懸念に対して、フラウバッセンさんは笑顔を浮かべていた。
そこで彼は一度立ち上がり、執務用らしき机からいくつかの書類を取り出してこちらに戻って来た。
その書類の内容に、私は驚く。それは見覚えがあり過ぎるものだったからだ。
「まあ、まだ記憶にも新しいとは思いますが、こちらはあなたの卒業論文です」
「え、ええ……」
「反射魔法及びそれを応用した反射装備の開発、これは非常に素晴らしい内容でした」
「それは……ありがとうございます」
学園在学中に、私はとある魔法の研究をしていた。
それは、魔法を跳ね返す魔法及びその魔法を特定の武具に付与する研究だ。
しかしながら、その魔法に関しては結局未完成のまま終わってしまった。正直な所その卒業論文も、それ程褒められるような内容ではないのである。
「その魔法に関しては、結局開発に失敗してしまいました」
「ええ、そのようですね。いくつかの課題も残っているように見受けられます。ただ、これをほとんど一人で開発しようとしていたという事実に、私は着目しているのです」
「そうなんですか?」
「発想力というものは、魔法の開発においてとても重要なものです。その発想力があなたには備わっていると私は思いました。ですからもしもよければ、あなたにはこの魔法の研究を続けてもらいたい」
「……え?」
フラウバッセンさんの言葉に、私は驚いていた。
話の流れから、魔法の研究を勧められることはわかっていた。しかしながら、それが学園で考えていた魔法そのものだとは思っていなかったのである。
「この魔法は、非常に有益なものになります。対魔法戦闘において、とても有利に働く魔法ですからね……」
「それは……そうだと思いますが」
「特に騎士団は、是非ともこの魔法が欲しいと思っているでしょう。対魔法の手段は重要です。もしもこの魔法の開発に成功すれば、彼らの要になるかもしれません」
フラウバッセンさんは、楽しそうに笑っていた。
よく考えてみれば、魔法学の権威と呼ばれる彼も数々の魔法を開発したことで知られている人物だ。
そのような人物がこれ程までに勧めてくれているのだから、私の進むべき道はそちらということなのだろう。元々自分でもやってみたいことであったし、ここはその勧めに乗った方がいいかもしれない。
「……わかりました。それなら、私に反射魔法の研究をさせていただけますか?」
「ええ、もちろんです」
私の言葉に、フラウバッセンさんは力強く頷いてくれた。
こうして私は、かつて学園で取り組んでいた研究と再び向き合うことになったのだった。
30
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢ジゼルはある騒動に巻き込まれとばっちりに合いそうな下級生を庇って大怪我を負ってしまう。
学園内での大事件となり、体に傷を負った事で婚約者にも捨てられ、学園にも居場所がなくなった事で悲しみに暮れる…。
「好都合だわ。これでお役御免だわ」
――…はずもなかった。
婚約者は他の女性にお熱で、死にかけた婚約者に一切の関心もなく、学園では派閥争いをしており正直どうでも良かった。
大切なのは兄と伯爵家だった。
何かも失ったジゼルだったが隣国の王太子殿下に何故か好意をもたれてしまい波紋を呼んでしまうのだった。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる