無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗

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10.それぞれの意見

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「……本日付けでここに配属されることになりました。ラナトゥーリ・ウェルリグルです。よろしくお願いします」

 私がゆっくりと頭を下げると、周囲から拍手が聞こえてきた。
 予定通り、私は魔法の研究をすることになった。魔術師団は様々な分野の魔法を研究しており、それらはそれぞれの分野によってグループが分かれている。
 私が配属されたのは、戦闘に関する魔法を研究しているグループだ。反射魔法はやはりその分野の魔法として扱われるらしい。

「ラナトゥーリ嬢の噂は、皆さんよく聞いていることでしょう。彼女は非常に優秀な魔術師です。学生時代に既に一定の成果を出していることからそれは明白です」
「反射魔法、でしたよね?」
「そんな魔法が開発できるのでしょうか?」

 ここの責任者であるセリードさんの説明に、周囲の人達は口々に話し始めた。
 私がしていた研究は、ここで注目されているらしい。議論が段々と白熱していっているし、それは間違いなさそうだ。
 ただなんというか、周囲の人達の意見が明るくないのが少し心配である。反射魔法なんてできる訳がないと思われているのだろうか。

「まあ、皆さんもちろん色々と考えはあるのでしょうが、この反射魔法の開発は我らが魔術師団団長であるフラウバッセンさんからの直接の命令です。それを果たすのが我々の仕事ですからね」
「団長は騎士団に肩入れしているから、そんな命令を出したのではありませんか?」
「こらこら、そういうことはあまり言うべきことではありませんよ」

 どうやら意見が明るくないのは、反射魔法がどちらかというと騎士団が必要としている魔法だからであるようだ。
 団長同士にそういう風潮はないが、やはり団員にはまだ対立構造のようなものが残っているのかもしれない。周囲の人達の様子から、それが読み取れた。
 学生時代は、そんなことはまったく気にしていなかったが、この魔法の研究は魔術師としてはそれ程いいものではないのかもしれない。もしかしてだからこそ、研究されていなかったのだろうか。

「それに反射魔法というものは、何も騎士団のための魔法という訳ではありません。我々魔術師も魔法を反射できればとても便利でしょう?」
「しかし我々には魔法を防ぐ術なんていくらでもあるではありませんか?」
「魔法を防ぐのと反射するのでは大きく違います。自分の魔力を消費せずに相手を攻撃できる。それが実現できれば、素晴らしいことではありませんか」
「それは、そうかもしれませんが……」

 それによく考えてみれば、新人が研究していた魔法を研究させられるというのは、先輩方にとってはあまりいいものではないのかもしれない。
 なんというか、段々と怖くなってきた。私は本当にここに馴染めるのだろうか。少々不安である。

「まあ、いいじゃないですか、ドナウさん。もう騎士団の対立とか時代じゃありませんよ」
「ナルルグ、それはお前が一昨年入ったばかりだから……」
「いやだから、それが古いんですよ。お互いの団長が仲良くやっているのに俺達が波風立てても仕方ないとは思いませんか? これから入って来る新人にとっては意味がわからないことですし」
「む……」

 そんな場の空気は、ナルルグさんと呼ばれた人によって一変した。
 よく見てみると、先程から否定的な意見を出していたのは年配の方ばかりである。若い人からは、それ程そういう意見は出ていない。
 それはつまり、フラウバッセンさんが団長になる前から魔術師団にいたかどうかの違いなのだろう。対立が激しかった頃からいる人達は、きっと騎士団に対する反発が大きいということなのだろう。

「まあ、ナルルグ君の言う通りですよ。本来であれば、騎士団と魔術師団は協力し合うべき組織なのですからね」

 最後にセリードさんがそう言って、その場は丸く収まった。
 もしかしたらフラウバッセンさんは、騎士団と魔術師団の協力体制を作りたいから今回の魔法を研究するように命令したのではないか。私はそんなことを思うのだった。
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