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12.第二王子の来訪
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「……失礼します」
「……え?」
私の反射魔法の実践により、研究チームの魔術師達は各々考えに耽っていた。誰かが命令した訳でもなく、自然にそうなっていたのだ。
そんな私達は、実験場にやって来た人物に驚くことになった。そこに現れたのは、第二王子で騎士団長のウェルド様だったのだ。
「……ウェルド殿下、どうしてこちらに?」
口火を切ったのはドナウさんだった。彼はとても穏やかにウェルド様に呼びかけた。
ただその口調には、どこか敵意のようなものがある気がする。やはり、騎士団長に対しては複雑な思いがあるということなのだろう。相手が第二王子であるため、それをなんとか抑えているのかもしれない。
「フラウバッセン殿から今回の魔法の研究についてお聞きしたからです」
「団長は、あなたになんと?」
「騎士団も利用することができる対魔法用の魔法を開発していると聞きました。相手の魔法を反射する魔法という認識で間違ってはいませんか?」
「ええ、その通りです」
ウェルド様は、ドナウさんの態度を特に気にしてはいなかった。かつて修練場にてフラウバッセンさんと話していた時と同じような謙虚な態度で、彼と接している。
「研究が我々にも関係している以上、挨拶をしておくべきだと思いました。これから、騎士団と協力して研究することもあるでしょう?」
「それは、そうかもしれません……しかしながら、何故わざわざ騎士団長であるあなたがわざわざこちらに?」
「いけませんか?」
「いえ、しかし一研究に騎士団のトップが現れるというのは、中々ないことだと思いましてね……」
ドナウさんの質問は、私も知りたいことだった。
騎士団の団長が、わざわざ見に来る。そこには何かしらの意図が隠れているような気がしてしまう。
なんというか、少し雲行きが怪しくなってきた。そういう感覚は久し振りだ。最近は安心しきっていたが、もしかしてまた私の運命力が働いているのだろうか。バッドエンドを回避したというのに。
「深い意味はありません。ただ、今回の研究に携わっている人物の中で、気になっている人がいたというだけのことです」
「気になっている人?」
そこでウェルド様の視線が、こちらに向いた。
やはり本当に、何かしらの運命力が働いているかもしれない。私が何かすると、身の周りで不穏なことが起きる。それは何度か経験してきたことだ。
バッドエンドを回避したから大丈夫だと思っていたが、そもそも私はこの現象のことを完全に理解している訳ではない。もう少し気を付けて行動するべきだったのだろうか。
「彼女は、弟と義妹の友人です。その縁もあって、少し様子を見に来ようと思ったに過ぎません」
ウェルド様は、とても穏やかにそのようなことを言ってきた。
その言葉に、私の肩の荷は下りる。どうやら、これは不穏ではなさそうだ。
彼は本当に、言葉通りの意図でここに来たということなのだろう。その表情からそれは察せられる。これなら安心できそうだ。
「ああ、ラナトゥーリ嬢はエクティス殿下と同期でしたか」
「ええ、弟から色々と逸話は聞いています。非常に優秀な魔術師だと」
「……それはその通りです。彼女が魔術師団に入ったことは、この国にとって非常に有益なことでしょうな」
「そうですか。それなら何よりです」
ドナウさんの言葉に、ウェルド様は笑みを浮かべていた。
そこまで私のことを評価してもらえていることは、非常に嬉しい。なんというか、頑張ろうと思える。その期待を裏切ってはいけないというプレッシャーもあるが。
「騎士団の団員が必要なら、遠慮せずに言ってください。我々もできる限り協力する所存です」
「それはありがたい話ですな」
「さて、それでは私はそろそろ行かせてもらいます。皆さん、どうか頑張ってください」
それだけ言って、ウェルド様は踵を返した。騎士団長である彼は忙しいのだろう。振り返ることもなく、この場から去っていく。
次の瞬間、周囲の雰囲気は一変した。やはり第二王子であり騎士団長でもある彼の来訪は、かなり大きなことだったようだ。
「……え?」
私の反射魔法の実践により、研究チームの魔術師達は各々考えに耽っていた。誰かが命令した訳でもなく、自然にそうなっていたのだ。
そんな私達は、実験場にやって来た人物に驚くことになった。そこに現れたのは、第二王子で騎士団長のウェルド様だったのだ。
「……ウェルド殿下、どうしてこちらに?」
口火を切ったのはドナウさんだった。彼はとても穏やかにウェルド様に呼びかけた。
ただその口調には、どこか敵意のようなものがある気がする。やはり、騎士団長に対しては複雑な思いがあるということなのだろう。相手が第二王子であるため、それをなんとか抑えているのかもしれない。
「フラウバッセン殿から今回の魔法の研究についてお聞きしたからです」
「団長は、あなたになんと?」
「騎士団も利用することができる対魔法用の魔法を開発していると聞きました。相手の魔法を反射する魔法という認識で間違ってはいませんか?」
「ええ、その通りです」
ウェルド様は、ドナウさんの態度を特に気にしてはいなかった。かつて修練場にてフラウバッセンさんと話していた時と同じような謙虚な態度で、彼と接している。
「研究が我々にも関係している以上、挨拶をしておくべきだと思いました。これから、騎士団と協力して研究することもあるでしょう?」
「それは、そうかもしれません……しかしながら、何故わざわざ騎士団長であるあなたがわざわざこちらに?」
「いけませんか?」
「いえ、しかし一研究に騎士団のトップが現れるというのは、中々ないことだと思いましてね……」
ドナウさんの質問は、私も知りたいことだった。
騎士団の団長が、わざわざ見に来る。そこには何かしらの意図が隠れているような気がしてしまう。
なんというか、少し雲行きが怪しくなってきた。そういう感覚は久し振りだ。最近は安心しきっていたが、もしかしてまた私の運命力が働いているのだろうか。バッドエンドを回避したというのに。
「深い意味はありません。ただ、今回の研究に携わっている人物の中で、気になっている人がいたというだけのことです」
「気になっている人?」
そこでウェルド様の視線が、こちらに向いた。
やはり本当に、何かしらの運命力が働いているかもしれない。私が何かすると、身の周りで不穏なことが起きる。それは何度か経験してきたことだ。
バッドエンドを回避したから大丈夫だと思っていたが、そもそも私はこの現象のことを完全に理解している訳ではない。もう少し気を付けて行動するべきだったのだろうか。
「彼女は、弟と義妹の友人です。その縁もあって、少し様子を見に来ようと思ったに過ぎません」
ウェルド様は、とても穏やかにそのようなことを言ってきた。
その言葉に、私の肩の荷は下りる。どうやら、これは不穏ではなさそうだ。
彼は本当に、言葉通りの意図でここに来たということなのだろう。その表情からそれは察せられる。これなら安心できそうだ。
「ああ、ラナトゥーリ嬢はエクティス殿下と同期でしたか」
「ええ、弟から色々と逸話は聞いています。非常に優秀な魔術師だと」
「……それはその通りです。彼女が魔術師団に入ったことは、この国にとって非常に有益なことでしょうな」
「そうですか。それなら何よりです」
ドナウさんの言葉に、ウェルド様は笑みを浮かべていた。
そこまで私のことを評価してもらえていることは、非常に嬉しい。なんというか、頑張ろうと思える。その期待を裏切ってはいけないというプレッシャーもあるが。
「騎士団の団員が必要なら、遠慮せずに言ってください。我々もできる限り協力する所存です」
「それはありがたい話ですな」
「さて、それでは私はそろそろ行かせてもらいます。皆さん、どうか頑張ってください」
それだけ言って、ウェルド様は踵を返した。騎士団長である彼は忙しいのだろう。振り返ることもなく、この場から去っていく。
次の瞬間、周囲の雰囲気は一変した。やはり第二王子であり騎士団長でもある彼の来訪は、かなり大きなことだったようだ。
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