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13.魔法の欠点
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「……さて、気を取り直して反射魔法について考えるとしようか」
ウェルド様が去ったことによってできた気の抜けたような雰囲気は、ナルルグさんの一言によってかき消された。
私達は、魔術師団として魔法の研究や開発を行っている。だから気を抜いている暇なんてないのだ。しっかりと業務を行わなければならない。
「ラナトゥーリ嬢、まずあなたが把握している反射魔法の欠点を教えていただけますか?」
「あ、はい。わかりました」
ナルルグさんに呼びかけられて、私は一度深呼吸した。長く話すので、落ち着く必要があると思ったのだ。
周囲の視線は私に集中している。少し緊張するが大丈夫だ。そうやって話すのは、学校でもやって来たことなのだから。
「先程の展開型の反射魔法は、魔法に対する弾力を持った魔力の膜を作り出して、それで魔法を受け止めて跳ね返すというのが、一連のプロセスです」
「魔力の性質が肝ということですかな?」
「ええ、その通りです。これがその魔力の膜なんですけど……」
「……触れてみても?」
「ええ、どうぞ」
ドナウさんは、私が作り出した魔力の膜に恐る恐るといった感じで触れた。
その感触を確かめて、彼は考えるような顔をする。
「なるほど、大体性質はわかりました。見事な魔法ですな……」
「お褒め頂きありがとうございます。ただそもそもこれは私が目指した魔法ではありませんし、この魔法にも色々な欠点があるんです」
「実際に触れてみて、少しわかりました。この展開型反射魔法で跳ね返せる魔法には限りがあるのでしょうな?」
「ええ、その通りです」
ドナウさんは、私が作り出した魔法の欠点をすぐに指摘してきた。
触れただけでそれがわかるなんて流石である。やはり、魔術師団の団員は優れた魔術師ということだろうか。
「この魔力の膜は、込める魔力によって強度が変わります。それによって反射できる魔法の強さも変わります。しかし魔法が強力だと膜で受け止める時点で、膜ごと相手の魔法を受けることになりかねないんです」
「手の平で展開する都合、そうなってしまいますか……」
「ええ、それに反射できる範囲も問題ですね。手の平の範囲しか跳ね返せませんから、広範囲の魔法には効果的でありません」
「なるほど……」
私が欠点を述べると、周囲の魔術師達はとても静かになっていた。恐らく、各々がこの反射魔法の改善案を考えているのだろう。
「それから、私が目指している付与型の反射魔法にこれをそのまま利用するのは難しいと思います。受け止めた時点で膜ごと魔法を受けることになりかねないという問題点が、非常に重くのしかかってきますから」
「……しかし、原理としては応用できますよね?」
私の言葉に応えてくれたのは、ナルルグさんだった。
彼の指摘に、私はゆっくりと頷く。それは私も考えていたことだ。ただそれは難しいことでもある。
「ナルルグさんの言う通り、展開型の反射魔法をもっと上手く調整できれば付与型も完成する可能性はあると思います」
「それなら、まずはその路線から考えるべきでしょうね……」
「ただそのためにはこの展開型を物体に付与できるようにならなければなりません。今の所は、手の平で発生させることしかできませんから」
「なるほど、それならチームを二つに分けましょう。反射魔法の精度を上げるチームと物体への付与を実現させるチームなどでいいでしょうか?」
「そうですね……それでいいと思います」
ナルルグさんのチームを二つに分けるという案は、非常にいい案だと思った。
かつては一人で研究していたからか、その案は私には思いつかなかった。チームで取り組むということを、私はもっと意識するべきなのかもしれない。
「さて、それならまずはラナトゥーリ嬢から展開型反射魔法を習う所から始めるとしましょうか。ラナトゥーリ嬢、お願いします」
「あ、はい。わかりました」
ナルルグさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私は、チームの魔術師団員に展開型反射魔法を教えるのだった。
ウェルド様が去ったことによってできた気の抜けたような雰囲気は、ナルルグさんの一言によってかき消された。
私達は、魔術師団として魔法の研究や開発を行っている。だから気を抜いている暇なんてないのだ。しっかりと業務を行わなければならない。
「ラナトゥーリ嬢、まずあなたが把握している反射魔法の欠点を教えていただけますか?」
「あ、はい。わかりました」
ナルルグさんに呼びかけられて、私は一度深呼吸した。長く話すので、落ち着く必要があると思ったのだ。
周囲の視線は私に集中している。少し緊張するが大丈夫だ。そうやって話すのは、学校でもやって来たことなのだから。
「先程の展開型の反射魔法は、魔法に対する弾力を持った魔力の膜を作り出して、それで魔法を受け止めて跳ね返すというのが、一連のプロセスです」
「魔力の性質が肝ということですかな?」
「ええ、その通りです。これがその魔力の膜なんですけど……」
「……触れてみても?」
「ええ、どうぞ」
ドナウさんは、私が作り出した魔力の膜に恐る恐るといった感じで触れた。
その感触を確かめて、彼は考えるような顔をする。
「なるほど、大体性質はわかりました。見事な魔法ですな……」
「お褒め頂きありがとうございます。ただそもそもこれは私が目指した魔法ではありませんし、この魔法にも色々な欠点があるんです」
「実際に触れてみて、少しわかりました。この展開型反射魔法で跳ね返せる魔法には限りがあるのでしょうな?」
「ええ、その通りです」
ドナウさんは、私が作り出した魔法の欠点をすぐに指摘してきた。
触れただけでそれがわかるなんて流石である。やはり、魔術師団の団員は優れた魔術師ということだろうか。
「この魔力の膜は、込める魔力によって強度が変わります。それによって反射できる魔法の強さも変わります。しかし魔法が強力だと膜で受け止める時点で、膜ごと相手の魔法を受けることになりかねないんです」
「手の平で展開する都合、そうなってしまいますか……」
「ええ、それに反射できる範囲も問題ですね。手の平の範囲しか跳ね返せませんから、広範囲の魔法には効果的でありません」
「なるほど……」
私が欠点を述べると、周囲の魔術師達はとても静かになっていた。恐らく、各々がこの反射魔法の改善案を考えているのだろう。
「それから、私が目指している付与型の反射魔法にこれをそのまま利用するのは難しいと思います。受け止めた時点で膜ごと魔法を受けることになりかねないという問題点が、非常に重くのしかかってきますから」
「……しかし、原理としては応用できますよね?」
私の言葉に応えてくれたのは、ナルルグさんだった。
彼の指摘に、私はゆっくりと頷く。それは私も考えていたことだ。ただそれは難しいことでもある。
「ナルルグさんの言う通り、展開型の反射魔法をもっと上手く調整できれば付与型も完成する可能性はあると思います」
「それなら、まずはその路線から考えるべきでしょうね……」
「ただそのためにはこの展開型を物体に付与できるようにならなければなりません。今の所は、手の平で発生させることしかできませんから」
「なるほど、それならチームを二つに分けましょう。反射魔法の精度を上げるチームと物体への付与を実現させるチームなどでいいでしょうか?」
「そうですね……それでいいと思います」
ナルルグさんのチームを二つに分けるという案は、非常にいい案だと思った。
かつては一人で研究していたからか、その案は私には思いつかなかった。チームで取り組むということを、私はもっと意識するべきなのかもしれない。
「さて、それならまずはラナトゥーリ嬢から展開型反射魔法を習う所から始めるとしましょうか。ラナトゥーリ嬢、お願いします」
「あ、はい。わかりました」
ナルルグさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私は、チームの魔術師団員に展開型反射魔法を教えるのだった。
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